うずらのブログ

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問題は財布の中身のキャッシュレス化

補助金でキャッシュレス社会は実現できる?韓国にみる荒療治』(9/9 アゴラ 有地浩: 株式会社日本決済情報センター顧問)

http://agora-web.jp/archives/2034623.html

「来年度予算の概算要求が8月末に締め切られた。その概算要求の中で経産省は、キャッシュレス決済の普及に向け、中小企業での端末導入の支援などに30億円を求めたと報じられている(略)

 もし専用端末ではなくQRコード決済に使うスマホタブレットの購入代金を補助するのであれば、今ではかなり安価なスマホタブレットがあるので、お店の負担はほぼゼロになるかもしれない。しかし、仮にそうだとしても、10億円の予算で1台2万円のタブレットを全額補助したら、5万台しか手当てできない。加盟店が少ないと言われているJデビットでさえ全国に約45万店舗あるのだから、5万台では大海の一滴でしかない。

たしかに、これまで述べてきたように、日本のクレジットカード決済や電子マネー決済の普及のボトルネックの一つが高い端末代にあることは間違いないが、単に補助金を支給して安く端末をばらまくだけでは、キャッシュレス化は進展しない。(略)」

 

経済誌や場末のブロガーを含めて、クレジットカードや電子マネーの普及によるキャッシュレス化をやたらと持ち上げる論者が後を絶たない。

 

彼らが何を目的にキャッシュレス化を信奉するのか、筆者には解せない。

現金と電子決済を共存させ、低額商品は現金で、高額商品は電子決済でと使い分けすればよいだけだと思うが、“電子マネー教の信者”たちは、世の中の資金決済が120%電子化されないと納得できぬご様子だから呆れるよりほかない。

 

そもそも、政府や一部企業が電子決済やキャッシュレス化を推進する目的は、次のように整理される。

①実店舗の無人化や省力化によるコストダウン

②不透明な現金資産や現金流通の見える化による税収向上

③支払データの蓄積や分析によるマーケティング力向上

 

政府や経済界を挙げてキャッシュレス化の旗が振られ続けている割に、我が国のキャッシュレス決済比率は、下記実績のとおり、他国に比べて著しく低い。(2015年時点)

韓国 89.1%

中国 60.0%

カナダ 55.4%

イギリス 54.9%

オーストラリア 51.0%

スウェーデン 48.6%

アメリカ 45.0%

フランス 39.1%

インド 38.4%

日本 18.4%(※アメリカが50%未満なのは意外…)

 

日本より低いのはドイツ(14.9%)くらいというありさまで、キャッシュレス決済比率の内訳も、クレジットカード18.0%、電子マネー1.7%、デビットカード0.3%(※2016年の数値)といった具合で、電子マネー教徒おススメのEdynanaco、Applepayなどの利用度はお寒い限りだ。

 

ちなみに、日本は一人当たり7.7枚のカード(クレジットカード・デビットカード電子マネー)を保有しており、これは約10枚のシンガポールに次ぐ2位に位置する。

キャッシュレス化が進んでいる韓国でも5枚強、米国・中国の約4枚、ドイツ・オーストラリア・カナダの約3枚より、カード類を多く持っている。

 

にも関わらず、日本人のキャッシュレス決済利用頻度が格段に低いのは、単にキャッシュレス決済に大した利便性を感じていないだけのことだ。

 

電子マネー信者たちは、「世界基準はキャッシュレス」、「いまどき現金で財布膨らませてるの(笑)」と懸命に揶揄するが、彼らがいくらキャンキャン吠えても世の体制は揺るぎない。

 

いまや大手企業が運営する小売店や飲食店で電子マネーやクレカが使えぬ場所は皆無であるにも関わらず、日本のキャッシュレス決済が一向に進まないのは、電子マネーの野放図な乱立(楽天Edy1億480万枚、WAON6,660万枚、Suica6,371万枚、nanaco5,609万枚、PASMO3,399万枚、iD2,541万枚等々)と、「どれだけお金を使ったか把握できなくなるから」、「カード払いにすると使いすぎてしまうから」という現金派の素朴な不満を解消できぬからに過ぎない。

 

何より電子マネー信者が見落としているのは、現金派の不満や懸念の奥底にある真の問題、つまり「財布の中身のキャッシュレス化」である。

 

キャッシュレス決済を敬遠する層が一様に感じているのは、“少ない収入や貯蓄がいたずらに目減りすることに対する強い不安”であり、それは決済手段を電子化したところで何も解決できない。

 

正直言って、一般消費者にとって、支払い手段が現金だろうが、電子マネーだろうが、どうでもよいことで、最大の関心事は支払いに使える財布の中身が潤沢かどうかに尽きる。

 

収入が増え、今後も増え続けると確信できさえすれば、気前よくクレカを切れるし、残高を気にせず電子マネーを使えるのだが、肝心のおカネが無ければ、怖くてクレカなど使えない。

 

電子マネー教やキャッシュレス教の間抜けな信徒たちは、現金使用を止めれば世の中が発展するかのようなバカ論に酔っているが、世の消費者の使えるカネに限度がある以上、現金から電子マネー決済手段の置き換えが進んでも、何の意味もないことに気付くべきだ。

 

愚か者の眼は、大きな問題を見逃し、小さな問題ばかりに焦点が合うようにできている。

 

いま重要なのは、消費者の財布の中身を「キャッシュレス化」させる病原菌、つまり需要不足による長期不況を早急に退治することであり、決済手段の電子化といったチマチマした施策に拘泥することではなかろう。