うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

イノベーションを育てるにも順序がある

『ついに"マイナス成長"に落ちた日本の景気』(5/28 PRESIDENT Online 真壁昭夫/法政大学大学院教授)

http://president.jp/articles/-/25251

「5月16日、内閣府が発表した1~3月期の実質GDP国内総生産)成長率の1次速報値は、前期比年率換算ベースでマイナス0.6%だった。マイナス成長は9四半期ぶりだ。(略)

中長期的な景気安定のためには、構造改革を進め、国内経済の実力(潜在成長率)を高めることが欠かせない。(略)」

 

真壁氏は、GDPマイナス成長の要因を「天候不順」と「企業部門の設備投資減少」の二点にあると説明したうえで、

①天候不順の影響は一時的にすぎぬから景気は今後回復に向かう

②設備投資を促すイノベーションを活性化させるため、発展性がある分野にヒト・モノ・カネを再配分し、構造改革規制緩和に邁進せよ

と主張する。

 

まず指摘しておきたいのは、「天候不順」を景気停滞の言い訳にするバカは単なるジャンクでしかないということだ。

 

気象庁のデータを見ても、毎年のように日本のあちこちで天候不順が確認されてきたことをしっかり頭に入れてもらいたい。

【参照先】http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/longfcst/extreme_japan/index.html

 

真壁氏は、「天気が良いと、行楽地を訪れたり、家族で外食に出かけたりすることが増える。しかし、大雪となればそうはいかない。家で過ごすことが増える。外出が減れば、個人の消費は減る。」なんて言ってるが、個人所得の伸びが本当に堅調なら、寒波が来れば防寒用品が売れるはずだし、外出が減ってもネット消費が増えるはずだ。

 

天候くらいで消費が落ち込むのは、アベノミクス効果とやらが張子の虎で、単に個人所得が落ち込んでいるだけのことだ。

 

構造改革規制緩和選択と集中」…この辺の陳腐なキーワードは、小泉バカ政権による構造改悪以降、散々聞かされてきたが、それから現在に至るまで、我が国イノベーションは隆盛を誇るどころか停滞の一途を辿ってきた。

 

真壁氏みたいに頭の悪い構造改革主義者たちは、積極財政に基づく実体経済への資金供給の裏付けなしに、改革や規制緩和にさえ取り組めば、アニマルスピリッツや需要が刺激され、生産性も上がるかのように騙ってきたが、開業率・GDP労働生産性の何れを見ても、ほとんど向上の兆しも確認できず、彼らの主張は質の悪い妄想でしかないことが露呈している。

 

構造改革主義者お得意の“選択と集中戦略”に乗せられた企業は、大手電機業界や百貨店業界の惨状によく表れているとおり、あちこちで事業が座礁し、単なる縮小均衡と同義語に落ちぶれてしまった。

 

真壁氏は、「(国内の需要を高めるには)金融・財政政策が限界に直面する中、政府は構造改革を推進しなければならない。それは、社会の変化に応じて、規制の緩和や制度の改変などを行うことだ。(略)

構造改革は、民間企業の“アニマルスピリッツ(成長、利益などを追求する血気)”を高め、新規事業への進出などを促進するために不可欠だ。具体的には、ロボットやネットワークテクノロジーなど発展性がある分野にヒト・モノ・カネを再配分し、新しいヒット商品などの創出を目指すことが求められる。

官民が連携して構造改革を進め、社会全体でイノベーションが進めば、景況感も随分と違ってくるだろう。」と懲りもせずに構造改革主義のポンコツエンジンを吹かそうと懸命だ。

 

しかし、彼のように、イノベーションが自律的に社会全体の需要を創出させると勘違いしたままでは、失われた20年と同じ失敗の轍を踏み続けることになる。

イノベーションは、所得ピラミッドの土台を支える低中所得者層や生産性の低いゾンビ企業が闊歩する“淀んだオールドエコノミー”が生み出す需要により支えられて初めて独り立ちできるか弱い存在であることを自覚せねばならない。

 

真壁氏はイノベーションの代表例として、iPhoneNetflixAmazonなどを挙げ手放しで誉めているが、そうした機器やサービスが巨大な存在に成長し得たのは誰のおかげかと言えば、世界中にウヨウヨいるオールドエコノミーが買い支えてくれたからとしか言えない。

Appleが年商20兆円企業になり得たのも、年収200万円の非正規社員土建屋の兄ちゃんがiPhoneを買ってくれたおかげなのだ。

 

イノベーションの興隆は全要素生産性(TFP)で測るのが一般的だろうが、吉川洋立正大教授の資料によると、TFPの伸び率は、構造改革の嵐が吹き荒れた2001年以降よりも、公共投資が盛んな土建国家時代(1985~1995年辺り)の方が圧倒的に高く、イノベーションの成長に及ぼす“買い手側”の存在の大きさを改めて裏付ける結果となった。

【参照先】https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/00report/inv2017/inv2017_report01.pdf

 

真壁氏ご推薦の“ロボットやネットワークテクノロジー”にしても、それに対価を支払う需要家の懐が潤沢でなければ、ロボットは単なる倉庫警備員と化し、ネットワークテクノロジーは電子廃線と化す運命にある。

 

イノベーション至上主義者の連中は、経済を語るに当たり、もっと大人にならねばならない。

技術革新やイノベーションの存在が需要を創造するのではなく、既存のオールドエコノミーの懐具合に余裕があり、そのお眼鏡に適ったものが、たまたま対価を与えられるだけに過ぎないという厳しい現実を直視すべきだ。

 

積極的かつ長期的な財政支出により実体経済に潤沢な資金(売上や所得に直結するカネ)をバラまいておけば、イノベーションなど幾らでも生みだせる。

なにせ、日本人の創造意欲や技術革新への努力は、決して他国に引けを取らないのだから…