うずらのブログ

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供給が需要を追いかける世界

『インフレは起こらず、デフレが継続すると考える理由 ⁉︎』(アゴラ 荘司雅彦/弁護士)

http://agora-web.jp/archives/2031986.html

「日銀が消費者物価指数2%上昇の目標を掲げてから久しい。中央銀行としてのブレない姿勢は大いに評価できるが、現実的にはデフレ脱却は困難だろう。ましてや、インフレは当面は発生しないと私は考えている。(略)」

 

上記コラムで荘司氏は、インフレが起きにくい理由として次の三点を挙げている。

①技術進歩により多くの分野で高級品がコモディティ化して安価になっていること

自由貿易促進による安価な輸入の流入量が増えていること

③参入障壁が撤廃され、高額所得を得ていた業界の収益力が低下していること

 

たしかに、消費者物価指数自体は今年2月時点で0.5%(生鮮食品及びエネルギーを除く)と低迷気味だが、国民の肌感覚とは明らかに異なる。

 

一般的な国民が物価動向を推し量るに当たって最も重視するのは、何といっても食料品の価格であり、特に昨今の野菜類を中心とした食品価格の高騰(キャベツや白菜で平年比1.5~2倍、10年前と比べて即席めん+15%、牛乳+30%、マーガリン+40%、マグロ缶詰+25%)や内容量減による実質値上げを買い物のたびに実感させられる消費者サイドとしては、デフレどころか、インフレ気味のプライスタグを見るたびに溜め息をついている。

 

荘司氏が挙げた技術進歩・自由貿易・参入障壁撤廃の三点は、価格だけでなく、企業の収益源や雇用まで破壊してしまい、結果として、H9をピークにサラリーマンの所得は20年以上も下がり続け、国民は膨大な購買力を奪われてしまった。

 

仮に日本経済が順調に成長を続けていたとしたら、技術進歩や自由貿易により個別商品やサービスの物価が下がった分だけ、浮いた購買力型の商品やサービスの消費に向かって然るべきだろう。

 

つまり、これまで200円だった商品Aの価格が180円に下がったとして、商品Aを欲していた消費者は、差額の20円分を他のサービスBの購入に振り向けられるはずだ。

 

だが、ここ20年の長期不況下で起きたのは消費者の強烈な家計防衛本能の発動であり、浮いた20円はひたすら貯め込まれ、昨年末の家計部門の預金残高は961兆円と、1995年の607兆円の1.6倍近くまで膨張している。

 

価格下落により生じた余剰購買力は、消費には向かわず貯蓄の世界に引き籠り、企業の収益力を弱体化させ、さらに労働所得の低下を加速させるという負のスパイラルを惹き起こした。

 

リフレ派の連中は、「安価な輸入品により物価が下落しても、その分だけ他の消費に廻るから何の問題もない。自由貿易バンザイ‼」とアホな主張をしていたが、所得漸増期待を奪われた消費者が選択したのは、消費ではなく貯蓄(消費の抑制)だった。

 

国民(消費者)が貯蓄より消費に関心を持てるようになるには、雇用の安定と所得増加に対する確度の高い期待が欠かせない。

 

いま手元にあるカネを使っても、すぐに次の収入が入ってくると確信できるからこそ、価格下落で生じた余剰金を、ためらいなく次の消費に充てられるのだ。

 

だが、国民だけでなく企業も総出で節約モード入りしている現況下では、カネを積極的に使う者が少なすぎる(=他者の所得の源泉を生む者がいない)ために、誰もが消費に疑心暗鬼とならざるを得ない。

 

荘司氏みたいに、技術進歩や自由貿易がインフレのアンカーになっていると傍観するだけは何も解決しない。

コラムの文中で「過剰なまでの供給に需要が全く追いついていない」と需要不足に言及しているのだから、その適切かつ具体的な解決法をきちんと明示すべきだ。

 

恐らく、彼のような根っからの緊縮&改革礼賛主義者は、供給と需要のアンバランス是正策として、財政政策による需要サイドの強化ではなく、供給サイドの破壊、つまり、徹底的なゾンビ企業潰しを主張し始めるだろう。

 

大規模な財政支出により、企業収益の下支えと給付制度の強化(家計所得の増加)にきちんと取り組めば、技術進歩がもたらす余剰購買力は問題なく次の消費に向かうし、野放図な自由貿易や参入障壁撤廃が問題なら、それを制限すればよいだけの話でしかない。

 

肝心なのは、ただ単に●%という物価水準達成を目指すのではなく、物価変動の根源にある国民所得を常に高いレベルで増加させ続けることだろう。

 

国民が財布の中身を気にせずに消費を謳歌できる望ましい経済環境や雇用環境を一日も早く実現すれば、物価目標なんていとも容易くクリアできるはずだ。

 

「潤沢な所得を手に入れた国民の過剰なまでの需要に追いつくために、供給サイドが技術革新や生産性向上に挑み続ける経済環境」こそ、目指すべき世界だと思う。