うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

「企業数を減らせ」という暴論

『大胆提言!日本企業は今の半分に減るべきだ~アトキンソン氏「日本人は人口減を舐めてる」』(2/26 東洋経済ONLINE デービッド・アトキンソン/小西美術工藝社社長 )
http://toyokeizai.net/articles/-/209674
「皆さんもご存じのとおり、日本ではすでに人口が減り始めています。人口が減る以上、GDPを維持するためには生産性を高めるしかありません。「GDP=人口×1人あたりの生産性」だからです。
それにはさまざまな改革が求められます。今回はその1つ、日本の企業数を大胆に減らすという改革について、考えたいと思います。(略)」

アトキンソン氏は、以前にも日本の観光産業育成にはゴールデンウィークを廃止すべしという珍説をぶつなど、いつも的外れな提言をすることで知られている。

上記記事でも、彼の幼稚な勘違いがあちこちに散見されるが、そのうちいくつかをピックアップし、批判を加えておきたい。

アトキンソン氏の主張〉
①人口と経済には関係がないと、とぼけたことを言う人もいるが、現在の先進国の経済規模ランキングは完全に人口ランキングを反映している

②企業の数を削減することが非常に重要。日本企業の数は今の半分まで減るべき

③たくさんの企業で後継者が不足しているのは、日本経済にとって大変ラッキーなこと。企業の規模が小さければ小さいほど生産性が低く、小規模企業の存在が全体の生産性を引き下げている

④消費者が減っているのだから、企業数と供給量をこれに合わせて減らさないと供給過剰や過当競争となりデフレに拍車をかけるだけ

つまり、彼が言いたいのは、“日本は人口減少を宿命づけられている以上、少人数の非効率な企業体を維持することは不可能だ。非効率なゾンビ企業はさっさと潰れてしまえ”ということなのだ。

頭が悪くやる気もないニヒリストの言葉は、まことに軽薄で有害だし、主張を裏付けるデータも、まったくデタラメだ。

まず、①の“先進国の経済規模ランキングは完全に人口ランキングを反映している”との主張だが、下記URLからリンクする資料のとおり、人口規模と経済規模との間に明確な相関性はない。
例えば、人口2,400万人ほどのオーストラリアのGDPが、同4,600万人のスペインを上回っているという一事だけで彼の嘘がばれてしまう。
《参照先》https://matome.naver.jp/odai/2143170701704064101

経済規模は人口に比例するなんて言うのは、まさに“胃袋の数が経済規模を決める”という前近代的な「胃袋経済論」でしかない。

経済成長にとって重要なのは、胃袋の数だけではない。
むしろ、胃袋に収めるモノの値段の方が遥かに大きな影響を与えるというのが常識だろう。

10人の若者が350円の牛丼と160円のウーロン茶で我慢するより、たとえ8人でも、1,000円の定食と250円のビールを飲めるようになれば、遥かに高い付加価値が生まれ、人口に関係なく経済成長できる。

いまどき、経済を語るのに「量」でしか考えられないなんて、彼は小学生以下のド素人なのか?

さらに、②③のゾンビ企業退場論には呆れてモノをいう気にもならない。

「2017年版中小企業白書」によると、日本企業が抱える従業員数は4,794万人で、うち中小企業+小規模企業で3,361万人(約70%)、小規模企業だけで1,127万人(約23%)もの従業員を抱えている。

彼の暴論どおり企業数を半分に削ってしまうと、企業消滅が企業間取引に何の影響も与えないというまったく有り得ない想定の下でも、1,700万人近い失業者(働く者のおよそ35%)が寒空に放り出されることになる。

だいたい、中小企業に限らず大企業であっても、売上の多くを企業間取引(BtoBマーケット)に依存しているのが実状だから、日本企業の半数が消滅した日には、たとえそれらの多くが小規模企業であったとしても、連鎖的な減収による業績不振や売掛債権の大規模な不良化による財務パニックが発生し、バブル崩壊リーマンショックなど比べものにならぬほど深刻な恐慌を避けられないだろう。

アトキンソン氏のように、「人口減少→需要減少→消費減少」を不可逆的な宿命だと決めつけるバカ者は、④のように、減り続ける消費規模に合わせて供給力や生産機能を削減しろと頭のおかしな主張をしたがるから困る。

消費が減るからといって既存の企業をぶち壊し続けておいて、国民はいったいどこで食い扶持を稼げばよいのか?

所得を稼ぐべき職場の消失により、当然、多くの国民が路頭に迷うことになる。
彼の主張通り半分の企業を潰せば1,700万人もの労働者が職を失い、家族合わせて3,000万人近い国民が無収入状態に陥り、実体経済は大パニックを惹き起こし、消費は加速度的に縮小を続けるだろう。

そうなってしまうと、被害は生産効率の低い中小零細企業だけに止まらず、比較的生産性が高いとされる大企業も深刻なデフレ不況の波に飲み込まれ壊滅的な打撃を避けることができず、企業数は半分どころか1/3や1/4にまで減りかねない。

消費規模が減り続けるのは人口減少のせいではなく、緊縮政策と野放図な規制緩和による競合激化こそ主因と言えるから、小学生にすら笑われそうなアトキンソン流“企業削減論”などゴミ箱に捨てて、積極的な財政金融政策により家計や企業に需要力や消費力をつけてさえやれば、企業を減らす必要などないし、小規模企業の生産性や付加価値を引き上げてやることなんて容易いことだ。