うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

金融政策支持者は、つまらぬプライドを捨てるべき

今春に総裁任期切れを迎える日銀総裁人事は、物価目標未達を七度も繰り返して大恥をかいた「未達キング」こと黒田総裁の手腕がなぜか評価され、黒田氏続投が決まった。

だが、マーケットでは、大した効果も出せず新鮮味に欠ける金融緩和政策に固執する黒田日銀の姿勢に批判的な声も多く、出口戦略(量的緩和縮小や政策金利引き上げ)を催促する意見が後を絶たない。

円高恐れず好景気で引き締めを』(2/13 週刊エコノミスト 重見吉徳:JPモルガン・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト)
https://www.weekly-economist.com/20180213bojexit/

「日銀は、世界経済が同時好景気に沸く現在のうちから、長期金利の誘導目標をゆっくりだが着実に引き上げ、同時に「これは出口に向けた一歩である」と明示することが望ましいだろう。
 重要なのは、金融市場に対して「一歩、後ろに戻ることができている」という対話をすることであり、逆に言えば「必要ならば、再び一歩前に踏み出すことができる」という政策の余地を示すことである。
 これは当然のように足元で円高圧力を生むだろう。しかし、円高とひとことで言っても、次の二つのうちの、どちらの円高が望ましいだろうか。筆者は、現時点で後者を選択しなければ、やがて前者が起きると考えている。
(1)米国が将来、景気後退に陥り、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な金融緩和で対応するが、日銀は現時点において出口を見送るために、金融緩和の余地が(将来時点で)相対的に小さくなる結果、円が買い戻される。
(2)海外景気の勢いが強く、海外の長短金利に上昇圧力が生じている現時点で、日銀も出口に立ち、円が買い戻される。(略)」

重信氏の意見は、金融政策の出口戦略を促す意見として極めて一般的で、平たく言えば

①現状の景気は非常に良好で、金利引き上げや円高に耐え得る

②いまのうちに金利を引き上げておき、将来の景気悪化に備えて緩和余地を残しておくべき
③先んじて出口戦略を取ったEUやアメリカの動きに立ち遅れるな

と言いたいわけだ。

一方、彼の主張に対する筆者の意見はこうだ。

❶企業や家計に関する様々な指標をみても、とても“好景気”とは言えない。特に、中小零細企業の利益率の低さや家計所得の伸びの鈍さを考慮すると、高レベルの借入金利やローン金利引上げには到底耐えられない。

❷たとえ金融緩和余地を残せたとしても、これまで同様、金融緩和による景気テコ入れ効果は皆無に近い。つまり、金融緩和措置の有無なんて、ほとんど無意味。

❸欧州やアメリカが出口戦略に着手できたのは、少なくとも日本とは比べものにならぬレベルの財政支出やインフラ投資により景気を刺激してきたからで、歳出拡大に関して、何の努力もしていない日本が真似すべきではない。性急な出口戦略は、重病人に筋トレを課すようなもので、症状を悪化させるだけ。

ただし、現在の行き過ぎた円安は、いたずらに輸入コストを嵩ませ、中小零細企業仕入れコストや家計の実収入を圧迫する弊害となっており、この点は是正する必要がある。

よって、量的緩和自体を縮小することはないが、誰の得にもならぬマイナス金利政策は今すぐに破棄し、現状108~110円程度の為替レートを98~100円くらいまで円高に、また、0.08%程度にまで低下している長期国債の利回りの0.5%辺りまでの上昇を許容してもよいだろう。(※本稿を記している2/6時点の数値)

重信氏のように、出口戦略を急ぎたがる輩に限って、「景気後退に備えた緩和余地を残しておくべき」と言いたがるが、そもそも、金融緩和効果に対する疑義を議論の起点にしておきながら、役に立たないはずの“緩和の余地”を残そうとする矛盾に何の疑問も感じないのだろうか?

彼らの目的は、為替や金利の乱高下を起こし、それに乗じて相場で儲けることでしかなく、金利高を誘い、国債の利払いコスト増加に警鐘を鳴らして財政危機を煽りたいだけなのだ。

筆者も、目標未達を繰り返し、醜態を晒すだけの金融政策に、ひと文句つけたくなる気持ちを解らなくはない。
だが、金融政策を蹴っ飛ばして市中金利を引き上げ、企業や家計に重い金融コスト負担を課すのが、果たして得策と言えるのか?

また、量的金融緩和を批判する者は、日銀保有国債の巨額さやゼロ金利の常態化を歪な姿だと敬遠しがちだが、ここで性急な出口戦略を断行し、金融緩和政策のハンドルを逆回転させ、無理に金利を引き上げても、実需に乏しい実体経済下では投資や消費に冷や水をぶちまけるだけに終わるだろう。

いま論ずべきは出口戦略ではなく、金融緩和政策が真価を発揮するために何をすべきかであり、真に論じるべきは、大規模かつ持続的な財政政策とのポリシーミックスによる金融緩和政策の“進化論”だろう。

政府による巨額の財政支出により、事業発注や発注単価の大幅な引き上げ、大規模な減税、医療・福祉支出、防衛・インフラ投資、研究・教育投資などを積極的に行えば、実体経済に「売上や収入として自由に使えるおカネ」が溢れ出し、それを享受する企業や家計の懐が潤い始める。

政府が、こうした状態を長期的に継続することをコミットすれば、企業や家計に長期的な増収期待や成長期待(インフレ期待)が生じ、それが投資や消費を刺激し、実需が過熱して金利上昇や円高圧力が生じるだろう。

これこそ、金融政策の真価を発揮できるフィールドであり、その時こそ、インフレ・ターゲット政策が政策の主役となり得るはずだ。

緊縮・改革論者は金融政策の足を引っ張るべきではないし、金融政策万能論者は彼らに足を掬われぬよう、今すぐ顔を洗って目を覚まし、財政政策にヘルプを求めるべきなのだ。