うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

マクロ経済の後押しなき人づくりは無責任

ビジネスの世界では、「ヒト・モノ・カネ・情報」を指して“四大経営資源”と呼ぶ者もいる。
そして、四要素の中で「ヒト」が先頭に位置付けられるのは、,「モノ」や「カネ」、「情報」は、ヒトが動かし、意味づけすることによって初めて資源と化すものだからと言われている。

確かに、ヒトこそが経営の頭脳や心臓部であることに異論はない。

筆者も数多くの企業経営を目の当たりにしてきたが、「モノ・カネ・情報」を上手く活用して売上に転換できる人材のいる企業の業績は不況下でも堅調だし、逆に、「モノ・カネ・情報」に依存し過ぎたり、それらを粗雑に扱ったりする企業の経営はたいがい上手く行かないものだ。

『日本の「人づくり革命」は成功するか』(6/21 BLOGOS 片山修/経済ジャーナリスト)
http://blogos.com/article/230069/
安倍晋三首相は、昨日の会見で「安倍内閣は経済最優先」と強調し、「人づくり革命」を断行すると発言しました。「アベノミクス」では、「一億総活躍社会」「地方創生」「女性活躍」などのキーワードが生まれていますが、次なるキーワードが、これですかね。(略)
「人づくり革命」とは、具体的には、幼児教育の無償化、高等教育の負担の軽減、一度社会に出た人が学校に通って技術や知識を身につける「リカレント教育」の拡充などです。
「これまでの画一的な発想にとらわれない『人づくり革命』を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく」と、安倍さんはコメントしましたよね。
日本は今後、超高齢化社会少子化人口減社会がさらに進み、低成長の時代が続くと考えられます。そのなかで、国を支えていくのは、やはり「人」です。人への投資は怠るべきではない。その意味で、安倍さんが「人づくり革命」を掲げたことは間違っていないでしょう。 (略)」

正直言って、片山氏は安倍首相を買い被り過ぎだ。
この手の評論家は、えてして政治家のリップサービスを誇大評価しがちだが、氏がベタ褒めするほど、安倍首相が“人づくり”に熱心なわけがない。

PB黒字化目標と歳出改革に縛られ財政出動ができない(&したくない)苦し紛れのシワ寄せが、「人づくり革命」云々という美辞麗句になって口をついただけのことだ。

「国を支えていくのは、やはり「人」です。人への投資は怠るべきではない。」という片山氏の言には筆者も賛成する。

国家が国民一人一人の集合体である以上、平均的な人材レベルの高さと、それを支える経済力とのバランスが高次元で調和していないと国家の発展はあり得ない。

だが、安倍首相にしろ、片山氏にしろ、人づくり革命とやらの言葉に酔っているだけで、人づくりの根源を支えるフィールドの整備をなおざりにしていないか?

世間には、公共事業を忌み嫌うあまり、防災問題でやたらとソフト対策を重視し、ハードを軽視したがる者が多いが、安倍首相の人づくり革命宣言にも同じような臭いを感じる。

防災であれ、人づくりであれ、あらゆる問題の解決方法を検討する際に、「ソフトか、ハードか」の二者択一から始める論者は、間違いなく低品質なジャンクだ。

ジャンク論者は大抵の場合、「ハコモノなんて時代遅れ。これ以上国の借金を増やしてどうする‼」とハード整備を頭ごなしに否定し、やたらとソフト対策を美化し、カネを掛けないボランティア活動や地域の助け合いみたいな“空論”を好むものだ。

そして、彼らの真意は、ソフト対策の深化というよりも、とにかくハード対策(=財政支出)に反対するためのアンチテーゼとして“ソフト賛美”を声高に叫んでいるようにしか見えない。

筆者が、安倍流の“人づくり革命”にいかがわしさを感じるのは、不況やマクロ経済環境の劣化を放置したまま、野放図な自由競争やグローバル化社会保障レベルの引下げを前提とした“厳冬下”でも生き抜く力を国民につけさせようとする意図が見え隠れしているからだ。

片山氏は先のコラムの中で、バブル崩壊以降の失われた20年の間に、人材投資への財源を失った日本企業は内向きになり、数万人規模のリストラを断行した大手電機メーカーや、合従連衡を繰り返した金融機関など、安易な人員削減や賃下げばかりで、重要な経営資源のはずの「人」への投資を怠り、それが日本企業の競争力を低下させたという趣旨の指摘をしている。

この点は、まさにそのとおりで、「人材育成や人づくり」というソフトを支えるには、「企業の財務力や収益力」というハード整備が欠かせないのだ。

マクロ経済環境が無茶苦茶な状態で、いくら人づくりを指南しても、人材育成の原資となる売上や収益が十分に上がらなければ、まともな給料も払えず、育つべき人材も育たない。

栄養不足の土壌に対応する品種の開発に多額の資金を投じるよりも、播種するフィールドの土壌を改良し十分な栄養分を与えてやれば、遥かに収量も品質も向上するのと同じことで、一国の経済政策はマクロ経済環境の改善という「ハード整備」抜きには語れない。

政府は、「革命」とか「改革」といった空虚な言葉ではぐらかさずに、先ず、問題の根源を解決する意志を持つべきだ。

「人づくり」への取り組みはぜひ進めるべきだ。
それと並行して、育成した人材が、スキルを存分に発揮でき十分な対価を得られる経済環境の構築を怠ってはならない。

ハード整備の放置は、政府の怠慢でしかないのだから。