うずらのブログ

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カネを惜しんで医療の衰退を招くなかれ

日本の医療費は平成27年度に41兆円となり、ここ4~5年で3.7兆円も増加し、その伸び率も3.8%と加速気味だ。

特に、75歳以上の後期高齢者向けの医療費は15兆円超と4割近くを占めており、財務省厚労省辺りの緊縮教信者から悲鳴が上がっている。

国のカネをびた一文使いたくない緊縮教徒たちは、医療費削減のために、WHOが提唱する「健康寿命(心身ともに自立し、健康的に生活できる期間)」をゴリ押ししようと必死になり、「禁煙対策・メタボ検診・がん検診」といった予防医療の普及を進めている。

最近、厚労省受動喫煙防止を謳って、日本中の飲食店を禁煙エリア化しようとバカな法案をつくり自民党とひと悶着あったが、こうした拙速な動きも、財務省のような守銭奴から、医療費削減の強いプレッシャーを受けてのことだろう。

健康寿命推進による医療費削減については、みずほ総研のレポートに、
『この健康寿命が延伸されることによって個々人の生涯医療費の抑制につながり、医療費適正化に貢献できるという推計がある。「健康長寿であってもいずれは医療機関にかかることになるため、必ずしも医療費抑制につながらない」という指摘もあるが、厚生労働省の研究報告によれば、健康寿命の延びが平均寿命の延びを上回った場合、要介護2以下の人の状況如何により2011~2020年の累計で最小約2.5兆円、最大約5.3兆円の医療費・介護費が削減されると推定されている』との報告がある。(『「健康長寿社会の実現」による成長戦略』より)

だが、約10年間で最大5.3兆円の削減幅なら年間5,000億円程度でしかなく、大した効果は望めない。

厚労省の資料によると、癌や心疾患など特定死因を除去した場合の平均余命の延びは、男性で3.86年、女性で2.96年にもなるそうだ。
男性で約4年、女性で約3年平均寿命が延びるのならば、当然、その間の年金支給総額も増えるし、ちょっとした風邪や歯の治療に係わる医療費も当然増えるだろう。

健康寿命の伸長に伴い、平均寿命が男性で80歳→84歳へ、女性で87歳→90歳へ伸びる訳だが、年金支給開始から平均寿命までの支給期間も、男性で15年→19年、女性で22年→25年に延長される訳であり、年間55兆円ほどの年金支給額が4~5兆円は増えると思われ、予防医療とやらでチマチマ削った年間5,000億円ほどの医療費など軽く吹っ飛んでしまう。

つまり、目先の医療費削減を目的に健康寿命推進の旗を振っても、その効果は極めて限定的で、却って他の費用増大につながるとの指摘もある。

ニッセイ基礎研究所のレポートでも、
『適度な運動とバランスのとれた食事は、運動機能が低下する「ロコモ」を予防し、健康寿命を伸ばす。しかし、それにより「不健康な期間」が短縮されるという医学的根拠はなく、「メタボ検診」同様に医療費や介護費がかかる時期が先送りされるのだ。
また、がん対策の基本は早期発見・早期治療であるが、「がん検診」が普及すれば「過剰診断」などにより確実に総医療費は増大するとしている。(略)国民の健康寿命を伸ばす予防医療は、長寿化による国民医療費の増大をもたらす』と指摘している。(『「健康寿命」伸ばす予防医療-「国民医療費」増加というパラドクスの解消』より)

一個人にとって、病床で晩年を過ごすよりも、健康寿命を全うできる方が良いに決まっている。
だが、それは、医療費をケチりたいだけの守銭奴から強制されるのではなく、健康を望む個々人の努力の延長線上に存在すべきだ。

医療費削減に躍起になる財務省のケチなオバちゃん連中の顔色を窺いながら、禁煙を強いられ、メタボ検査を強要される筋合いなんてない。

国の厚生行政が取り組むべき仕事は、医療費をケチるために国民に健康維持を強制することではなく、国民が不慮の体調不良に直面した際に、安心して治療を受けることができる医療体制の構築と、貧富の差に係わりなく受診できる保険制度の整備であるはずだ。

国民一人ひとりは、それぞれの人生や生活を全うするのに忙しく、また、年金支給年齢が引き上げられ、雇用や所得が不安定化する厳しい環境下で、予防医療とか健康寿命なんて気に掛けている余裕もない。

医療費や社会保障関連費用の増大を理由に、国民負担の嵩上げや再度の増税を迫られた日には、国民のストレスはさらに増すばかりだ。

最新の医療研究によると、ストレスは身体の治癒能力低下、脳の萎縮、染色体の変化をもたらし、生活習慣病や癌、心疾患、脳卒中、腎不全など万病の元となるそうだから、財務省厚労省の連中の意図とは逆に、更なる医療費の増大を招くだけに終わるだろう。

人間の都合で幾らでも創り出せるカネを出し惜しむあまり、国民と医療との間に高い壁や深い溝を造り、国民から医療を遠ざけてはならない。

医療技術の維持向上や医療体制の整備には、医療関係者の弛まぬ努力と、それを支える莫大な資金が必要だが、国を挙げて“医療・保健力”を充実させることにより、病に悩まされない生活や難病の克服等々、国民に直接的な福利となって戻ってくるのだから、カネなんて幾ら使われても惜しくはあるまい。