うずらのブログ

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染みついた「外国人依存性」

「「中国人客の空席は韓国人で埋める」観光苦境で破れかぶれの“自虐論”も出始めた」(産経新聞 4/11)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170410-00000530-san-bus_all
「米軍による高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する中国の報復で訪韓中国人客が激減する中、韓国では航空会社や観光地があれやこれやと対応に追われている。(中略)
だが、ここにきて、「中国人観光客の空席は韓国人観光客で埋める」という論調が出てきた。韓国紙、東亜日報は「国内旅行の活性化が(THAAD禍の)危機突破の解決策として注目されている」とした上で、「韓国国民がより多く、より頻繁に国内旅行に行けば、中国人観光客の空席を埋めることができる」と指摘する。同紙は産業研究院と韓国文化観光研究院による試算を持ち出している。それによれば、韓国国民が年間一日ずつでもさらに国内旅行に行けば、内需振興効果は最大で4兆ウォン(約3920億円)に迫るという。つまり、中国人観光客の激減による観光収入の損失推定額5兆5000億ウォンをかなり相殺できるわけである。(後略)」

米軍の高高度防衛ミサイル韓国配備に対する中国の報復措置は、自国民の韓国旅行取り扱い中止だけに止まらず、韓国企業に対する意図的な通関の遅延、理由のない契約保留・破棄、不買運動、代金決済の遅延など多岐に亘るほか、国内ホテルの入り口に韓国の国旗を敷いて旅行客に踏ませるという下品で子供じみたレベルだ。

しかし、実際に、韓国国内の免税店の売上が対前年比で20~30%減少、同国の有名な観光地である済州島を訪れた3月の外国人観光客数は前年同月比で▲56.4%、中国人は▲36.6%と大幅減少するなど、すでに大きな影響が出ている。

これを、過度な中国依存体質に縋った愚かな韓国の選択ミスだ、自業自得だと責めるのは容易いが、産経新聞が「中国人客の空席は韓国人で埋める」という選択肢を“自虐論”と切り捨てるのはまったく意味不明だ。

産経新聞の韓国嫌いを否定する気はないが、インバウンド減少の穴を自国民の旅行者増加で補おうという戦略を、あたかも、あり得ないモノであるかのように決めつけるのはおかしいだろう。

モナコやスイスのような小国ならいざ知らず、一定規模以上の国民数を抱え、観光産業への依存度がさほど高くない国なら、観光客の主軸は自国民で支え、インバウンドはプラスアルファに位置付けるのが当然であり、インバウンド無くして観光産業が成り立たなくなるような構造を放置する方がどうかしている。

これは、我が国の観光産業にも言えることで、政府は日本の観光立国化を進め、訪日外国人数を「2020年に4000万人、30年に6000万人」に増やすと意気込んでいるが、『インバウンド増加策の推進=インバウンド依存型の産業構造化』だと勘違いしてはならない。
インバウンド増加は、謂わば、ボーナスだと割り切り、国民による国内旅行者という“所定内給与”を着実に増やすことを主眼とすべきだ。

観光庁の資料によると、平成28年の訪日外国人全体の旅行消費額は3兆7,476億円と前年比で7.8%増加、訪日外国人旅行者数は2,404万人と、同じく21.7%も増加しており、一見好調に見える。

しかし、旅行消費額の上位四ヵ国の占める割合は70.8%(中国39.4%、台湾14.0%、韓国9.5%、香港7.9%)にも達し、非常に偏りが大きいうえに、いずれも、日本に対する直接的、あるいは、間接的にセンシティブな政治的リスクを抱える先であり、今後起こりうる朝鮮半島騒乱などの影響で激減するリスクが高く、とても安心できない。

また、中国による規制強化の影響から、訪日外国人1人当たり旅行支出は15万5,896円と、前年比で11.5%も減っている。
中でも、中国は23万1,504円/▲18.4%と最も減り幅が大きく、他国の支出額も、台湾▲11.1%、韓国▲6.5%、香港▲7.0%、タイ▲15.3%、シンガポール▲12.9%、英国▲13.7%、フランス▲9.7%等々、軒並み減っており、増えているのはロシアやオーストラリアくらいだ。

一方、国民による国内旅行者数はというと、平成27年ベースで、
・国内宿泊旅行延べ人数…3億1,673 万人(対前年比6.5%増)
・国内日帰り旅行延べ人数…2億9,705万人(同0.3%減)
・国内旅行消費額…20.7 兆円(同11.7%増)
と、一見好調に見えるが、いずれも、消費増税に影響で低調だった平成26年の落ち込みの反動でしかなく、それを証拠に、何れの数値も5年前の平成22年実績との比較では、横ばいか微減でしかない。(参照先)http://www.mlit.go.jp/common/001149495.pdf

この間に、国内では、富岡製糸場や平泉、長崎他の産業革命遺産などの世界遺産登録、北陸新幹線開業などといたトピックス、円安傾向による国内旅行への回帰の流れがあったにもかかわらず、国内旅行市場はほとんど成長できていないことになる。

いまはインバウンド増加で一息ついている観光産業だが、いつ何時、政治・軍事問題に端を発するインバウンド縮小というリスクを抱えていることを自覚する必要がある。

こうした政変リスクの大波を平準化するためには、インバウンド以外の国内旅行者という“幹”をしっかり養成し、拡充させる必要がある。

国民の多くは、安月給とバカげた長時間労働に縛られ旅行どころではない、というのが実情だろうから、中長期的な名目・実質所得増強策と真の働き方改革に取り組むことが不可欠だが、目前の即効策として、当面5年間ほどの間、一人当たり年10万円程度の旅行クーポン券の支給、高速道路の無料化、宿泊施設や観光施設の近代化整備助成、鉄道等のWifi整備促進などの需要喚起策と有給休暇取得状況への監視強化(&違反企業への罰則強化)を打ってはどうか。

世界有数の働き蜂たる我が国の国民は、もう少し余暇を満喫すべきだし、国民の観光需要が、給与水準の低い観光産業の所得向上、地方経済の活性化や高速道路の延長、地方鉄道網の利用客増加といった関連産業へ波及することも期待できる。

外国人だけが余暇を楽しむのを指を咥えて羨むだけでなく、世界第3位の経済大国の国民として、せめて、国内旅行を楽しめるくらいの余得があってもよいではないか。