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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

ジャンク政策

『次は「異次元の財政政策」か 冒険やめて地道な改革を』(日経新聞客員コラムニスト 平田育夫 2/27 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO13383860V20C17A2TCR000/
「デフレ脱却へ敗色濃厚な異次元の金融緩和策に代わるのは「異次元の財政政策」なのだろうか。安倍晋三首相と近い浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)が「目からウロコが落ちた」とはやすのは米国発の経済理論。積極財政でインフレを起こせばデフレ脱却にも財政再建にも役立つという。放漫気味な日本の財政運営を応援するような内容だ。
 だが日銀緩和だけではなく、新たな案も財政破綻を招きかねない劇薬である。冒険的な政策はそろそろやめにして、次世代のため財政改革や成長戦略を地道に実行するときではないか。(後略)」

正直言って、外人経済学者の新説を聴かされるたびに目からウロコを落としている浜田氏が、安倍首相にどれほど影響を与え得るものか大いに疑問だ。

よって、日経がオロオロ心配せずとも、安倍氏はこれからも財政再建の道をひた走るに違いないが、日経は、安倍首相がシムズ論文を鵜呑みにして財政再建の手綱を緩め、大規模な財政政策を打つのではないかと相当警戒しているようだ。

コラムニストの平田氏は、シムズ論採用後の安倍政権の経済政策について、次のようにシミュレートしたうえで、『異次元緩和もシムズ説もインフレをテコに成長と税収増を促し財政再建を狙うという横着さがある。増税などに比べ政治的に容易でも、成否は読めず、失敗したときの代償は大きい。(中略)やはり財政改革と成長促進策を着実に進め、社会保障などが持続する社会に改革したい。成長促進では、完全雇用に近い今、需要追加より生産性向上など供給力強化のほうが大切だ。』と否定している。

【平田氏のシミュレート】
▼第1幕 政府が財政健全化目標や増税の延期を表明。インフレにはならず。
▼第2幕 そこで政治主導の積極財政が続く。日銀の異次元緩和も継続。
▼第3幕 「団塊の世代」全員が75歳以上となる25年が近づいて医療費急増による財政悪化が懸念され、物価が上がり始める。
▼第4幕 貯蓄の外貨への転換による円安などで物価が一段と上昇。だが日銀は金利上昇を嫌い厳しい引き締めをためらう。政治家は緊縮財政に動かない。
▼第5幕 人々の不安心理も重なりインフレが年10%超に加速。海外への資本逃避のほか政府と円の信用失墜、金融システム不安など経済は大混乱に陥る。

平田氏の妄想の逞しさには脱帽するほかない。
特に、第2幕の政治主導の積極財政なんて、いまの安倍政権や自民党の連中には、絶対に無理だ。(民進党や維新のバカどもにも無理だろうが…)

なにせ、憲法改正草案に財政規律条項を盛り込もうとしたり、政府の諮問会議に世情に疎い識者を集めて財政再建論や歳出改革論の後押しをさせたりするような輩に、積極財政など期待する方がどうかしている。

それはさておき、先ず、第3幕の団塊世代後期高齢者化による医療費急増に起因するインフレ発生説とやらに釘を刺しておく。

確かに、2025年の医療給付費は54兆円と推定され、2015年(40兆円前後)より14~15兆円ほど増加する見通しだ。
だが、2015年より10年前の医療給付費は26~27兆円ほどであり、2015年→2025年間の増加額は、2005年→2015年の実績と大差ない。

無論、これに莫大な介護費用が付随するから話は単純ではないが、要は、その間にGDPをきちんと伸長させ、医療給付費の対GDP比率を適切な範囲内に抑えておれば何の問題もない。

平田氏の「医療費増加=急激なインフレ」論が、何を根拠にしているのか謎だが、2025年までの間に日本経済が急激な経済成長を遂げることを前提にしているのなら、そこで発生するインフレはディマンドプル型の望ましいものであるし、対GDP比で一定範囲内に収まっていれば問題は発生しない。

逆に、経済成長を前提としないのなら、急増する医療費負担に耐えかねた国民は他の支出をきつく絞り込むはずであり、インフレよりも深刻なデフレを心配すべきだろう。

次に、第4幕の「貯蓄の外貨への転換による円安などで物価が一段と上昇」なる幻想にもモノ申しておきたい。

平田氏は第5幕の政府や円の信頼失墜という幻想に絡めて、「高インフレ→通貨の信認下落→円売り→外貨買い」というインフレ恐慌発生ルートを想定しているようだ。

しかし、2015年末の個人金融資産残高1,740兆円のうち外貨資産は42兆円と、たったの2.4%でしかなく、長期トレンドで見ても大して増えていない。
しかも、平田氏の云うとおり、円の信用失墜→大幅な円安傾向ともなると、ますます外貨購入にブレーキが掛かり易くなるから、急激な円の外貨転換なんて起こり得ない。

平田氏の数々の妄言は、「財政改革や成長戦略を地道に実行する」、「需要追加より生産性向上など供給力強化のほうが大切だ」という結論に導くための前菜でしかない。

だが、彼の大好きな財政改革は実体経済に投じられる資金量の縮減させるもので、成長戦略とやらは資金の裏付けが伴わぬ政策である。
さらに、需要不足下の供給力強化は、不毛な競合と安値競争を生み出すだけの愚策でしかない。

要するに、平田氏の提案は「不況やデフレを深刻化させる毒薬」ばかりで、まったく話にならない。

財政政策を「冒険呼ばわり」する神経は緊縮脳のドシロウトそのものだ。

彼の説く「地道な改革」こそ、デフォルトリスク300%の超ジャンク債である。