うずらのブログ

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少子高齢化はインフラ縮小の言い訳に使えない

米国トランプ大統領は、2月28日(日本時間3月1日)に、米議会上下両院合同本会議で施政方針演説に臨み、1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資法案への協力を議会に仰ぎ、「米経済のエンジンを再起動する」と強調した。

彼は、「国家を再建設する時が来た」と述べ、道路や橋、トンネル、空港や鉄道など総額1兆ドル規模のインフラ投資に取り組む姿勢をアピールするとともに、新たなインフラ投資は「数百万の雇用を生み出す」と議会に呼び掛けたそうだ。

この他にも、米軍再建のために540億ドル(約6.1兆円)もの国防費増額 (増額分だけで我が国の年間防衛予算を上回る‼)を訴えている。

いまだにPBバランス堅持に拘り、歳出改革云々とレベルの低い議論をしている我が国の首脳と比べて、その精力的な姿勢は何とも羨ましい限りである。

我が国の社会資本老朽化問題は、一向に解決の糸口が見えない。

国交省のHPにある「社会資本の現状と将来」には、次のようなデータが掲載されている。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/index.html
【建設後50年以上経過する社会資本の割合】
・道路橋(約70万橋) 〈H35/3〉約43%→〈H45/3〉約67%
・トンネル(約1万本) 〈H35/3〉約34%→〈H45/3〉約50%
・河川管理施設(約1万施設) 〈H35/3〉約43%→〈H45/3〉約64%
・下水道管渠(約45万㎞) 〈H35/3〉約9%→〈H45/3〉約24%
・港湾岸壁(約5千施設) 〈H35/3〉約32%→〈H45/3〉約58%

あと6年ちょっと先には、これだけ多くの社会資本(インフラ)が整備後50年を迎えることになり、急速に老朽化が進んでいる様子が解る。

しかも、上記の数値算出に当たり、建設不明なものは分母から除かれていることに注意せねばならない。
その数は、橋梁約30万橋、トンネル約250本、河川管理施設約1千施設、下水道1.5万㎞、港湾約100施設にもなるから、実質的なインフラ老朽化はさらに深刻だ。

政府・議会・官僚の何れも、社会資本老朽化に対する真の危機感は皆無に等しく、経済財政諮問会議の議論では財政再建やPB赤字解消、歳出改革という言葉ばかりが踊り、よりブレイクダウンした社会資本整備等ワーキンググル―プの議論では、公共施設の統廃合の話に終始している。

襲い掛かる老朽化の波に立ち向かおうというのではなく、いかに被害を最小限に抑えるか、見捨てるべき社会資本をどう切り分けるか、という消極策ばかりでウンザリさせられる。

我が国の公共事業関係費は、一般会計と特別会計の総額でH27/6.5兆円(当初予算+補正予算)しかなく、H22/10.6兆円→H23/7.6兆円→H24/9.0兆円→H25/7.6兆円→H26/6.4兆円と減るに任せているが、これほどの惨状にもかかわらず、国民の間には「ムダな公共事業ばかりやっている」という愚論が蔓延している。

社会資本老朽化問題に対して、そのメンテナンス費用を国交省が試算したところ、2013年/約3.6兆円、2023年/4.3~5.1兆円、2033年/4.6~5.5兆円と推計されている。

これは、あくまでメンテナンス費用であり、新設・除去費用や用地費などは含んでいないが、思ったより少額な印象だ。
毎年5~6兆円もあれば最低限の維持・更新ができるのなら、大した金額ではない。

国民の生命や財産を守り、経済活動の基盤を支えるインフラ整備に、年間たったの5~6兆円を費やすことに何の負い目があるのだろうか?

この先暫くは生産年齢人口の大幅な減少が避けられぬとしたら、より加速的に社会資本老朽化対策を打っておく必要がある。

さらに、人口減少時代をカバーできるだけの生産効率や移動効率を実現するためには、インフラの維持・更新だけに止まらず、より積極的に新設工事を進めておくことは、極めて有意性の高い事業だろう。

国交省HPに掲載されている「都市間連絡平均速度の国際比較」によると、『日本59㎞/h、ドイツ90㎞/h、フランス88㎞/h、イギリス72㎞/h、中国73㎞/h』とのデータがあり、我が国の道路網整備が立ち遅れていることが判る。

巷では、アマゾンの配送を担うヤマト運輸の苦境が話題になっているが、例えば、鉄路や河川、丘陵、山岳などで分断されている道路(高規格道路だけでなく一般道も)を新設工事で繋げてミッシングリンクを解消すれば、配送効率は格段に向上するはずだし、都市部の渋滞解消にも役立つはずだ。(今冬のような大規模雪害発生時の迂回路にもなる)

“人口が減るからインフラは要らない”という巷の意見はまったくの見当違いで、“少子高齢化社会を迎えるからこそ、生産効率維持向上のために更なるインフラ整備が不可欠”という発想の転換が求められる。

社会資本整備を放置すれば関連産業は衰退し、人材育成や技術革新もままならなくなってしまう。
日本が建設土木技術を失くしてしまえば、必要なインフラ整備は外国資本や人材の手を借りねばならなくなり、より多大なコストや期間を要するうえに、投じた資金が国外に流出してしまう事態になる。

ちなみに、冒頭に紹介したトランプ大統領の演説後に行われた調査(トランプ氏に「嘘ニュース」呼ばわりされたCNNの視聴者調査)では、軍事費増強や巨額のインフラ投資の意向表明に対して、57%の人が演説を「非常に肯定的」に受け止め、69%が「正しい方向に向かう」と回答したそうだ。

日本人が同じ演説を聞かされたとしても、恐らく、「衰退する宿命の日本でインフラ整備しても借金が溜まるだけだろ」と斜に構えるだけだろう。

提示された『希望』を素直に受け入れ、前向きな反応を示す分だけ、アメリカ人の方がリアリストなのかもしれない。