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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

詭弁師は頭の中が空洞化

論語読みの論語知らず』
【注釈】古来、儒教の経典である『論語』をしたり顔で語ることはできても、その教えを実践できていない者の愚かしさから、書物を読んでも表面的に理解するだけで真髄をわかっていない人をあざけっていう言葉。(故事ことわざ辞典より)

日ごろ、「教科書を読め、読め!」とうるさいエセ論者に限って、案外、教科書に載っている言葉の意味を理解しようとせず、都合の悪い事実から目を逸らそうとするものだ。

日本経済衰退化の一因となった「産業空洞化」を否定する愚か者など、そうしたエセ論者の典型だと言える。

内閣府の経済財政白書(2012年度版)でも、「我が国では、製造業の海外生産移転が進展するにつれて製造業の雇用は減少しているものの、生産性を向上させつつ生産水準を維持してきた」ことや、中間材の輸出誘発効果、海外現地市場の獲得を企図した「現地市場獲得型」移転の増加などを理由に、産業空洞化を否定的に論じている。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2012/1222nk/n12_3_1.html

また、場末の論者の中にも、
GDPが一貫して上昇している
・雇用が比較劣位産業から比較優位産業へ移転し、全体として雇用者数は極端に変化していない
ことを論拠に、産業空洞化を完全否定する変わり者がいる。


先ず、「GDPが一貫して上昇している」という論は、統計や事実をまったく無視した妄想だ。

我が国の名目GDPは1998年以降、一進一退を繰り返しており、“一貫して上昇”なんていう事実は何処にもないのだが?
[参考資料]http://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html

エセ論者は、大嘘を吐くことに何の痛痒も感じていないようだが、事実を捻じ曲げた論拠を並べて、正しい結論を出せるはずがない。

ちなみに、我が国と世界各国とのGDP平均伸び率を比べてみると、世界平均値は2000~2010年/+6.83%、2010~2015年/+3.73%となり、日本の実績は、それぞれ、+1.51%、▲4.24%と著しく劣っている。(国際貿易投資研究所 国際比較統計より)

GDPが一貫して上昇している」はずなら、そもそも、マイナス値(▲マーク)が記されること自体があり得ないし、他国と比較した成長率も低すぎる。
GDPは増加するのが当たり前の指標だから、停滞や現状維持は、他国との相対比較ではマイナスと同義語になる。

そもそも、GDPは一国の成長度合いを測る最小かつ最低限のモノサシに過ぎないから、これだけの動向を以って、産業空洞化を否定する材料にするのは、あまりに大雑把でいい加減な議論だろう。


次に、「雇用が比較劣位産業から比較優位産業へ移転し、全体として雇用者数は極端に変化していない」という論の幼稚さも指摘しておく。

ここで云う「比較劣位産業」とは海外移転した製造業(二次産業)や農林水産業(一次産業)を指し、「比較優位産業」とはサービス業(三次産業)を指すものと思われる。

内閣府の経済財政白書も同じニュアンスだが、要は、「製造業の雇用が減っても、その分だけサービス業で吸収できているんだから文句はないだろっ‼」、「産業の空洞化ではなく、産業間の労働者移動に過ぎない」と言いたいのだろう。

こうした論を吐くバカ者には、
①果たして、サービス業が、比較優位と呼べるほどのシロモノなのか?
②なぜ、A(製造業)+B(農林水産業)と、C(サービス業)とを代替の関係に置く必要があるのか?(Aも、Bも、Cもすべての産業で雇用を増やせばよいではないか?、「○○よりマシ」というセコい妥協で満足せず、ベストな結果を求めないのか?)
という観点がすっぽり抜けている。

細かい業種分類ごとの違いはあれども、サービス業は製造業と比べて、おおむね利益率や労働生産性が低い。

内閣府の「産業別生産性の動向等について」という資料でも、卸売・小売業やその他サービス業の売上高利益率は2~3%辺りでしかなく、化学(5%超)、輸送機械(4%)と比べて低位であり、労働生産性上昇率(2000~2005年)も製造業種と比べて著しく低い。

また、経産省の資料でも、一人当たりの産業別付加価値額は、製造業が857万円であるのに対して、卸売・小売業590万円、サービス業466万円と大きな乖離がある。

件のエセ教科書学派は、実際に起こったのは、「産業空洞化」ではなく、「サービス業種(三次産業)への産業構造の高度化」だ、なんて寝ぼけたことを言っている。

だが、利益率を見ても、付加価値額を見ても、三次産業は二次産業と比べて劣位しており、これの何処が「比較優位産業」や「高度化産業」と呼べるのか?

工場が海外へ移転し、代わりに、すき家名ばかり店長や佐川急便の低賃金ドライバーが増えただけのことを、「産業の高度化」と呼ぶバカの気が知れない。

ここ数年の製造業国内立地件数は400~500件で推移し、最悪期より持ち直してはいるものの、バブル期前後には2,000件、バブル崩壊後も700~800件台を維持していたことを考えると、かなり落ち込んでいる。

雇用者数自体は、2002年12月/6,291万人→2016年12月/6,466万人へと増えてはいるが、その間、製造業は1,188万人→1,039万人へ149万人も減り、代わりに医療・福祉業(+338万人)や情報通信業(+53万人)、運輸業(+19万人)といった業種が増えている。
しかし、いずれも、ブラック企業がひしめき、低賃金労働が横行する質の悪い業種ばかりで、産業の高度化どころか『産業の陳腐化』と呼ぶのが相応しいだろう。

つまり、労働者にとって質の良い働き場所(製造業)は海外へ流出し、増えたのは、粗悪な業種ばかりということで、製造業種の空洞化による雇用の劣化が進んだと言うべきだ。

「製造業の雇用者が減っても、サービス業で雇用者が増えているからいいじゃん」と嘯くのは、雇用の質の劣化を考慮せぬいい加減な議論だ。

先進諸国が足並みを揃えて適切な資本移動規制をかけ、製造業の野放図な漏出を防いでおれば、雇用者数はさらに増え、人手逼迫による雇用条件改善が相当進んでいたはずだ。

“日本全体としてGDPは伸びている=産業は確保されている”というのは、雇用の質を顧みないインチキ論で、あまりにも醜悪でレベルも低すぎる。

経済財政白書にある「中間材の輸出誘発効果」や「海外現地市場の獲得を企図した現地市場獲得型」云々についても、エセ教科書学派の詭弁と同様で、海外移転させずに、国内生産を基点とするサプライチェーンを維持・構築していた方が、より大きな経済効果と付加価値をもたらしたはずだ。

グローバル化は世界の潮流だというインチキスローガンを盾に、製造拠点の漏出を奨励した挙句、国内産業の三次産業偏在を招き、「付加価値&生産性の低下→労働者所得の長期低迷→個人消費支出低下→国内マーケット縮小→需要不足→デフレ不況→更なる付加価値&生産性の低下…」という最悪のスパイラルから抜け切れない社会構造にしてしまったのだ。

これは、明確な経済戦略のミスだ。

産業空洞化の有無なんて、端から議論の余地もない。

現実に、製造業種を中心に空洞化しており、残された他の業種も、長期間の景気低迷により事業承継もままならず、倒産や廃業の大量発生が顕在化している。
総務省のデータによると、2014年の国内事業者数は382万者と、1999年比で103万者も減っている。(年平均6.9万者減少)

このままでは、海外移転による空洞化を懸念する以前に、廃業の加速化による内部崩壊や空洞化が目前に迫っており、愚にもつかぬ根拠を基に空洞化否定論を弄ぶバカ者に構っている暇はない。

・国内製造拠点の漏出という大量出血の止血
・国内産業の保護育成
・事業承継の迅速化
とう3本柱の政策を早急に進める必要があるだろう。