うずらのブログ

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大前流似非グローバル主義の先に悪性デフレが待っている

『トランプ流保護主義の先に悪性インフレが待っている』
(2016.12.1 大前研一 マネーポストWEB)http://www.moneypost.jp/100287

大前氏は、経済コンサルタント、または、経済評論家として国内随一の知名度を誇るが、同時に、時流を読み誤る天才でもある。

上記コラムの概要をかいつまんで説明すると次のようになる。

・トランプ大統領の誕生で世界はますます反グローバリズムの潮流が強まる、という指摘もあるが、グローバリズムを否定した先に待っているのは悪性インフレだ。

・もしトランプ氏が中国製品などに高い関税をかけ、いろいろなものをアメリカ国内で作るようにしたら、アメリカの物価はとどまるところを知らずに上がり続け、コストプッシュインフレになって生活費が跳ね上がる。

・アメリカ人が、低所得層でもそれなりに豊かな生活を送ることができているのは、グローバル化のお陰である。様々な商品が世界の最適地でより安く生産され、それを輸入することで物価が抑えられている。

・消費者が買う消費財だけでなく家畜の飼料や原材料などもグローバル化によって安くなり、その恩恵を世界中の人々が享受している。

・トランプ大統領が迷走する間、日本は反グローバリズムの波に流されずに従来通り、ひたすら競争力を磨き続ければよい。

要するに、
グローバル化は消費者の利益
②日本は世界最後のグローバリズムの砦となるべし
と言いたいようだ。

大前氏の眼差しは、未来ではなく、日本が敗北を続けた過去に向けられたままだ。

先ず、ここ20年の間に世界中を席巻した野放図なグローバル化や規制の撤廃は、先進諸国の消費者に利益ではなく“多大な不利益”をもたらしている。

我が国においては、GDPにしろ、勤労者の平均所得にしろ、いまだに20年前の水準すら超えられないでいるし、大前氏の、「家畜の飼料や原材料もグローバル化により安くなった」というセリフも大嘘だ。

ここ数年というもの、国内の畜産業界の最大の悩みは輸入飼料価格の高騰であり、輸入トウモロコシ価格に大きく影響される配合飼料の価格は、多少の振幅こそあれ、底値だったH7/31,643円/㌧→H25/63,059円/㌧へ右肩上がりの傾向を示している。

さらに、昨年12月にはJA全農により、「平成29年1~3月期の配合飼料供給価格については、飼料情勢・外国為替情勢等を踏まえ、平成28年10~12月期に対し、全国全畜種総平均トンあたり約1,950円値上げする」との決定がなされ、価格上昇に歯止めが掛からない。

むろん、海上輸送コストや為替レートの影響もあるが、大前氏が妄想するように「グローバル化=コスト安」とは真逆の動きをしている。

また、少々データが古いが、『米世帯の年収推移をグラフ化してみる』http://www.garbagenews.net/archives/1971980.htmlに掲載された階層別の実質年収を見ると、1980-90年代以降に実質年収を大きく伸ばしているのは、「上位5%層」と「最高年収層」だけで、特に、「最低年収層」、「低年収層」、「中年収層」は、いずれも微増か横ばいに止まっている。

つまり、大前氏の「低所得層でもそれなりに豊かな生活を送ることができているのは、グローバル化のお陰である」というセリフも大嘘で、低所得層は豊かな生活など送れていないし、グローバル化の恩恵も受けていないのだ。

海外への製造拠点移転や労働コストの安い途上国との競合がもたらしたのは、雇用と所得の流失、つまり、「安物買いの銭失い」でしかなかった。

グローバル呆けの激しいのは、なにも大前氏だけに限ったことではなく、「百均でモノが安く買えるのは消費者の利益だ。グローバル化バンサイ‼」と信じて疑わぬバカ者も多い。

だが、安物買いの裏側で、雇用とそこから生まれる所得が途上国へプレゼントされ、その分だけ自国民の雇用と所得が失われていることに気付けない。
目の前に100円に踊らされるあまり、10万円の月収が対価として収奪されていることを想像できぬ痴れ者には、ホトホト呆れるよりほかない。

大前氏は、「日本は世界最後のグローバリズムの砦となり、競争力を磨け‼」とハッパをかけているが、グローバル化に足を突っ込むほど日本の国際競争力が低下してきた事実を知らぬのか?

国際競争力を測る指標には、
国際経営開発研究所(IMD)によるIMDランキング(60か国)
世界経済フォーラム(WEF)によるWEFランキング(138か国)
の2種類があり、WEFランキングはここ10年余り6~10位を行き来し、昨年は8位と前年の6位からダウンし、もう一つのIMDランキングは1991年の1位から、2014年には21位にまで大きく順位を落としている。
(※ちなみに、(幼稚な)グローバリズムとは一線画すスイスが、WEFで1位、IMDで2位にランクされているのが非常に興味深い)

とりわけ、WEFランキングの「マクロ経済の安定度」は昨年104位(いつも100~120位が定位置)と振るわず、いつも全体の足を引っ張っており、日本の競争力の低下の病巣が、グローバル化云々の議論とはまったく関係のないマクロ経済政策の失敗にあることが判る。

日本は、25年以上前から「不適切な経済政策」と「過度なグローバル化」により、世界に先駆けてデフレ不況に突入し、いま、大前氏のような周回遅れの狂信者の詐術にかかり、欧米で勃興しつつある反グローバル化や反緊縮政策の波に乗り遅れようとしている。

このままでは、世界中から「ジャンボジェット機の後輪型経済」と揶揄され、世界的な景気回復運動のメインストリームから取り残されてしまうだろう。