うずらのブログ

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無税国家≠高インフレ

『収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2016年)』
http://www.garbagenews.net/archives/2045729.html)によると、家計収入に占める非消費支出(税金・社会保険料など)の割合は上昇傾向にある。

まず、家計の「実収入(世帯主+配偶者の収入)」は、2000年/月額508,984円→2015年/469,200円と7.9%も減少している。
一方、「非消費支出(税金・社会保険料など)」は、同時期に79,646円→88,007円と10.5%も増加している。
その結果、「可処分所得」は、429,338円→381,193円と11.2%も減り、個人消費低迷の大きな要因となっていることが判る。

繰り返される消費税増税社会保険料の引き上げにより、家計の負担は増すばかりで、実収入に占める非消費支出の割合は、2000年/15.6%(社保8.5%+税金7.1%)→2015年/18.8%(社保10.9%+税金7.9%)と漸増傾向にある。

アベノミクスは所期の成果を上げるに至らず、その弊害は、小泉改悪期や民主党政権時以上とも言える。

こうした家計破壊の惨状を見るにつけ、国民からもっと強い憤りや怨嗟の声が上がってしかるべきだが、不況に飼い馴らされてしまった国民から、そうしたハードアクションが起こるのも期待できない。

筆者は、家計の惨状を見るに耐え兼ね、従来から、国債の日銀直受けや政府紙幣を財源とする社会保険料負担の大幅な引下げを提案している。

本稿では、これまでの主張に加えて、諸税の大幅な引き下げ、つまり実質的な無税国家運営の可能性について簡単に論じてみたい。
(※ここで云う「無税国家」とは、「関税以外の諸税の徴収を一定期間止める、或いは、大幅に軽減する」という意味で、税という制度そのものを廃止するものではないことにご留意いただきたい)

おおよそ、ベーシックインカムや無税国家に触れるには、諸方からの強い批判が上がるのを覚悟する必要があるが、敢えて私見を述べてみたい。


さて、無税国家という言葉は、常識的な思考能力を有する方々の間では、「=不可能なもの」、「=あり得ないもの」という意味で用いられている。

リフレ派の連中が大好きな『バーナンキ背理法』(量的緩和によってインフレが起こらないなら、中央銀行は物価上昇を気にせず、いくらでも紙幣を増刷でき政府の歳入を賄える。すると、徴税する必要がなくなり無税国家ができる。しかし、そんな馬鹿なことがあるはずがない。)もその類だろう。

しかし、広い世界には、厳密な意味ではないものの、租税負担のない、あるいは、負担が極めて軽度な(実質的)無税国家が、次のとおり、いくつか存在する。

サウジアラビア
所得税、消費税、住民税なし。公的な病院や学校(大学・大学院も全て)は基本的に無料で、医療費や教育費はかからない。(最近10年間の平均インフレ率:3.8%)

【ドバイ(アラブ首長国連邦)】
ただし、企業が商品を輸入する時に一律5%の税金あり、ホテル内でのレストランでの飲食や宿泊料金には10%の地方自治税がかかる。(同:3.8%)

ブルネイ
医療費や教育費は無料で所得税なし。
ただし、法人税、関税、自動車税相続税印紙税自動車税はある。(同:0.4%)

カタール
医療費無料で所得税や消費税なし。ただし、法人税は10%。(同:3.6%)

多くは原油や天然ガスなどの天然資源に恵まれた国(あるいは、モナコやマカオなどの特殊な国)だが、注目すべきは、意外なほどの物価の安定ぶりだ。

ここ10年間の日本の平均インフレ率は0.2%と、悪い意味でずば抜けているが、天然資源以外に大した産業もない、公務員天国のブルネイですら、それに迫る低インフレを記録しているのは驚愕に値する。

例えば、サウジアラビアの主要貿易品目を見ると、
(輸出)鉱物資源 86.9%、化学品 4.6%、プラスチック製品 4.0%
(輸入)機械・電気機器 26.4%、輸送機器 17.7%、非金属 13.8%
であり、原油などの鉱物資源(付加価値の低い一次産品)を輸出して、電気機器や自動車などの高付加価値品を輸入するという典型的な途上国型の産業構造になっている。

たまたま、鉱物資源という季節変動や競合の比較的少ない産品を輸出品にしているから、大きな顔をしていられるのであって、本来なら、貿易という工程を経て、低付加価値品を高付加価値品に変換する際に、より大きなインフレに見舞われてもおかしくない国である。

だが、大国のサウジだけでなく、ドバイカタール辺りの小国でも、3~4%程度のインフレ率(むしろ、我が国にとって望ましいインフレ率に近い数字)に収まり、ブルネイのインフレ率に至っては、ここ7年間は一貫して1%未満、最近3年は連続してマイナスというありさまだ。

無税国家に対する最大の拒否反応は、耐え難い高インフレの発生だろう。

しかし、サウジやブルネイのように、
・輸出産品は天然資源頼み
・国内産業の高付加価値も遅滞したまま
・オイルダラーと公務員と貧者+外国人労働者しかいないという歪な産業構造
・徴税意欲や能力も脆弱
という大した国力もない“怠け者国家”でさえ、適切かつ巡航速度を保ったインフレ率に収まっている。

つまり、世界的な規模で供給力や流通網、情報授受技術が高度に発展した現代において、「無税国家=高インフレ」という固定観念や決めつけは、もはや通用しないと考える。


今回ご紹介した国々は、バーナンキ背理法に示されたように、ただ紙幣を印刷しているだけの国ではなく、筆者も、我が国があらゆる産業を放棄して、紙幣を印刷していれば良いなどとは思わない。

地下に眠る原油や天然ガスを掘り出す(しかも、採掘技術は外国企業任せ)だけで、電化製品や自動車などといった高付加価値品を苦も無く手に入れる国々が、低インフレ下で優雅な生活を享受できるのなら、高付加価値品の生産力においては世界トップクラスの供給能力を誇る我が国の国民は、それ以上に不自由のない豊かな生活を手に入れて然るべきだろう。

だが、我が国では、外に向けては、野放図な技術や資本の流出により高付加価値品であったはずの輸出品が低価格競争に巻き込まれ、内にあっては、緊縮的な財政運営と規制撤廃による競合激化により内需停滞を招いてきた。

その結果が、先に示した家計における可処分所得の低下と個人消費の低迷なのだ。

日本では、「我慢・自助・根性」頼みの為政者や官僚機構の経済政策無能ぶりも酷いが、それを唯々諾々と受け容れ、貨幣の本質にまったく目を向けようとしない国民の不勉強ぶりも際立っている。

こうした八方塞がりの惨状を打開するためには、無税国家や政府紙幣、日銀の国債直受け、ベーシックインカムなど、これまで“禁じ手”とされてきた固定観念を疑ってみることも必要だろう。

緊縮主義者の言い草ではないが、元々、日本の税収は、国家予算の半分程度しかないのだから、見方を変えれば、既に、無税国家に片足を突っ込んだ状態とも言えるだろう。



しかも、量的緩和政策による史上空前の低金利を何年も続けている。



そんな我が国が抱える悩みは、「インフレ」ではなく、「デフレ」であるという事実・・・



バーナンキ背理法に頷くだけの時代は、もう終わったのかもしれない。