うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

インフレ予想の先にあるもの

前回のエントリーでもご紹介したが、11月1日に日銀金融政策決定会合の結果が公表され、物価上昇目標(2%程度)の達成時期は「17年度中」から「18年度頃」に先送りされ、黒田総裁の任期中(18年4月まで)の目標達成は不可能となった。

華々しくデビューした黒田バズーカもすっかり鳴りを潜め、いまや金融政策決定会合にサプライズを期待する者もいなくなった。

日銀の金融緩和政策が効き目を失ったのは、マーケットだけでなく、実体経済の経済主体にインフレ予想(インフレ期待)を発生させる戦略が大失敗に終わったことに尽きる。

そして、惨敗の最大の要因は、インフレ予想の先にある実需(=内需)を動かす原資となる所得(フロー)の伸びを著しく欠いた点にある。

家計にしろ、企業にしろ、所得や売上(収益)無くして、積極的な消費・投資行動に出ることはない。

実体経済に使えるカネ(所得・売上)を迅速かつ効果的に注入し得るのは、何といっても財政政策しかないが、安倍政権や日銀首脳陣は、金融政策&構造改革マターの経済政策に固執し、財政政策を疎かにしてきた。

その結果がこの体たらくである。

ここで、インフレ予想発生作戦の失敗について指摘したコラムをご紹介したい。

『日銀は日本人の価値観を理解していない』(BLOGOS 中原圭介 アセットベストパートナーズ株式会社エコノミストhttp://blogos.com/article/175929/

当コラムを記した中原氏は、日銀の金融政策に対して、以下のように批判している。

「私はこれまで3年以上、黒田日銀の金融政策は間違いなく失敗するだろうと様々な媒体で申し上げてきました。その主な理由としては、以下の4点にまとめることができるでしょう。 ①円安により企業収益が増えたとしても、実質賃金が下がるため国内の消費は増えない ②円安が進んだ割には、企業は輸出単価を引き下げないので、Jカーブ効果は期待できない ③中小企業の労働分配率はすでに高水準にあるので、トリクルダウンなどという現象は起きようがない ④世界経済は2005年~2007年当時と比べると、2013年の時点で欧州や新興国を中心に低迷している」

さらに、自著の記述を引用して、日本における「インフレ期待」勃興の難しさを指摘している。

(以下、中原氏の『経済はこう動く〔2016年版〕』からの引用文)

い「私から言わせれば、とりわけ日本人に「インフレ期待」を求めるのは、そもそも大きな間違いであると思われます。米欧社会の価値観では、「インフレになるのであれば、預金していると目減りしてしまう。だから株式を買おう。お金を使ってしまおう」という考え方が、100歩譲ったとして、21世紀型のインフレ経済でまったく成り立つ可能性がないとはいいません。
しかし、それはイソップ童話の「アリとキリギリス」でいうところの、キリギリス的な発想です。平均的な日本人の価値観では、決してそう考えることはありません。日本人は「インフレになるのであれば、今から節約して生活防衛を心掛けよう」と考えるからです。いわば、アリ型の国民なのです。「インフレ期待」どころか、「インフレ失望」が働きやすいお国柄なわけです。(後略)」

中原氏の思考自体は、日本経済縮小論に基づくグローバル化宿命論に依拠し、日本の潜在成長力や経済成長のポテンシャルを否定的に見ているなど、周回遅れの改革主義者っぽい主張なのだが、日本人はインフレに対して、「期待」ではなく「失望」を抱きやすいという見方は、従来からの筆者の主張と大差ない。

高度成長期のように、毎年給料が上がっていた時代なら、インフレに文句を垂れつつも、アレコレと消費に勤しんでいられたかもしれない。
だが、20年以上も続く低所得時代を経て、人心はすっかり冷え込み、家計や企業は消費や投資に対して極めてネガティブだ。

アベノミクスの成功を妄信するバカ者は、「給料なら上がっているじゃないか」、「大卒の初任給も雇用も増えているぞ」と騒いでいるが、月給が500円くらい上がったところで、絶対零度にまで冷え込み家計防衛にしか興味を持たぬ民心を解すにはまったく力不足なのだ。

ブロガーの中には、中原氏の指摘に対して、「インフレ期待の「期待」は、「何かを期待する」ではなく、「何かを予想する」ことで、「期待」とか「失望」することではない」と、重箱の隅をつついて悦に入るレベルの低いバカ者もいる。

だが、この場合、「予想」であれ、「期待」であれ、結果にたいした差異はない。

マクロで見れば、10月の消費者物価指数は、総合指数で前年同月比+0.1%、生鮮食品を除く総合指数で▲0.4%、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数で+0.2%と僅かな動きでしかないが、人々は、野菜や肉類の高騰、ガソリン価格の上昇といった身近な商品価格の動きに惑わされた挙句に、財布の紐を固く縛り続けている。

ここ1年間の家計消費支出が、一貫して対前年同月比マイナスを記録(プラス化したのは1回だけ)している事実が、こうした家計防衛行動を裏付けている。

家計が、インフレを「予想」しようが、「期待」しようが、「消費を増やさない」という結論は変わらない。

安倍信者やリフレ派の連中が勝手に妄想するのは構わないが、インフレ予想が家計や企業の消費・投資行動を煽り、購買や投資を競い合うような構図をまったく描きようがないほど実体経済は冷え込んでいるのだ。

なにせ、インフレを予想しても、先立つもの(消費や投資に使えるお金)を持っていないのだから、買い物しようがないではないか…

実体経済や世の中を知らぬバカ者は、そんなことも解らぬものか?

偉そうに、語句の用法に講釈を垂れる暇があれば、小学校からやり直すべきだ。