うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

輸入最強論を騙る珍種

「供給は、それ自体が新たな需要を生み出す」という産業革命以前の妄想については、これまでもたびたび批判を加えてきた。

古くさいセイの法則信者にも呆れるが、最近では、新たな派生種も登場している。
彼らは、『輸入+GDP≡消費+投資+政府+輸出』なるインチキ臭い恒等式を盾に、『「輸入」が増えると「輸出」も増えるし、GDPも増える』という珍説を披露し、周囲から失笑を買っている。

先日、トランプ詣でに馳せ参じた安倍首相の話題に触れ、安倍氏はトランプ氏に対して、
“輸入+GDP≡消費+投資+政府+輸出なのだから、左辺の「輸入」が増えれば、右辺の「輸出」も増えますよ。右辺を伸ばしたいのなら、左辺を無理やり抑えたら、右辺が伸びませんよ”
とアドバイスすべきだったと得意げに語っている。

さすがに経済に疎い安倍氏とはいえ、こんなアホなアドバイスをしたら、間違いなくトランプに、「Prime Minister of Japanは愉快な男だ」鼻先で笑われていただろう。

輸入+GDP≡消費+投資+政府+輸出なる意味不明な恒等式GDP≡消費+投資+政府+輸出-輸入の右辺にある輸入を左辺に移項しただけ)はともかく、左辺にある「輸入」を無条件に万能視するのはいただけない。

先ず、当然のことだが、必ずしも「輸入の増加=輸出の増加」とはならない。
左辺の輸入が30から50へ20増えたからといって、増加分の20が右辺の輸出である必要はない。消費でもいいし、政府支出であってもいいはずだ。

低レベルの“バカ恒等式”を騙る連中は、野放図なフリートレードを礼賛するから、輸出入の増加が全体の厚生に寄与するという論に固執したいのだろう。
だが、上記の恒等式を、輸入UP=輸出UPという論旨の柱にするのは、あまりに稚拙すぎる。

例えば、左辺の輸入が増えたとしても、右辺にある輸出に関係なく、消費や投資が激減すれば、全体としてGDPは低下を余儀なくされるから、輸入が増えても意味はない。

くどくど説明する必要もないと思うが、元のGDP≡消費+投資+政府+輸出-輸入という恒等式の左辺(GDP)は、あくまで右辺(実体経済活動)の結果であり、左辺をいじくれば右辺が増えるという性格のものではない。
実体経済が活性化した結果としてGDPが成長し、分配の原資を賄えるのであって、その因果関係を逆転させることはできない。

左辺と右辺の項目は不可逆的関係であり、右辺の項目を飛び越してダイレクトに左辺をいじくる発想自体が間違っている。

『「輸入」が増えると「輸出」も増えるし、GDPも増える』なるファンタジーを騙る連中は、“輸入した原材料に付加価値をオンして輸出しまくればGDPが増えるはずだろ!‼”と言いたいのだろうが、日本が勝手に加工した大量の輸出品を、いったい、どこの誰が買うのか??と問いたい。

販売戦略を持たずに“いいものを造ればきっと売れるはず”と勘違いして膨大な在庫を積み上げるだけのシロウト経営者の発想そのものだ。

『「輸入」が増えると「輸出」も増えるし、GDPも増える』というのは、「どんな企業でも、仕入れを増やせば売上が増え、利益も増える」と言ってるのと同じことであり、いかに低レベルのバカ論か判ろうというものだ。

現実を見ずに、数式をいじくって詭弁をまき散らす暇があれば、実社会に出て経済活動に勤しむ人間に学ぶべきだろう。

安倍氏は、トランプ氏と面談した際に、「我が国は需要不足によるデフレ不況からの早期脱却を図る。そのために、積極的な財政金融政策を打ち、内需拡大を柱とする所得向上や収益強化に取り組む。これは、貴国のビジネスにとっても大きなチャンスになるはずだ。ただし、我が国の企業との激烈な競争に勝ったらの話だがね。」とでも言うべきだったろう。