うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

ゴールラインを引いても馬は走らない

一昨日に、日銀から「金利目標付き金融緩和政策」の導入が公表され、賛否両論が沸き起こっている…というより、金融緩和政策の効果が広く疑問視される中で、一部の論者を除き、冷ややかな視線が注がれている、といった方が正確か。

そんな中、経済論壇で唯一の日銀応援団でもあるリフレ派が孤軍奮闘中だ。

『より野心的になった日本銀行のリフレ政策 - 田中秀臣 街角経済学』

(ニューズウィーク日本版 9月21日 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160921-00177398-newsweek-int)

「(前略) 9月21日の日本銀行の金融政策決定会合では、リフレ政策の「補強」が行われた。筆者はこの決定を、今年冒頭のマイナス金利政策導入の数倍好意的に評価したい。

(中略) 日本銀行自身が公式に名づけたように「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」であり、従来の量的・質的緩和政策を「補強」したものである。そしてこの「補強」は現状の日本経済においてインフレ目標の達成と、さらに実体経済のさらなる改善にきわめて有効な手段を日本銀行に与えたことになる。ただしリフレ政策への反感や無理解が深刻なマスコミや識者を中心にしばらくは政策への誤解や、歪んだ批判が続くだろう (後略)」

リフレ派の代表格の一人である田中氏(上武大学ビジネス情報学部教授)は、先日公表された日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を手放しで褒めちぎり、懸命にフォローしている。

田中氏は、

①金融政策を柱とするアベノミクスは、株価・円安効果、企業の業績改善、雇用の大幅改善をもたらした

②日本経済を阻害したのは、金融政策の失敗ではなく、2014年4月の消費増税による悪影響、資源価格の低下、新興国の経済不安定化によるものだ

金利目標化が市場の予想形成に効果を与え、インフレ目標の達成により、失業率の大幅低下、名目・実質賃金の上昇、雇用の質的改善が期待できる

と主張し、「反リフレ陣営の「日本経済は低迷したまま」や「アベノミクスは失敗」などという批判は妄言レベルだ」と強い憤りを隠そうともしない。

叶わぬ夢を追い続けるリフレ派の面々には気の毒だが、異次元金融緩和を柱とする黒田バズーカは、もはや限界に達している。

彼らが信じ込む金融政策の効果とやらも、

・円安は、単にアメリカが2014年後半頃からマネタリーベースを抑制したことによるもの

・企業の業績改善は、国内労働分配率の低迷によるもの

失業率の低下と言っても、中身はパートや非正規雇用が増えただけ(=止むを得ず働かざるを得ない層が増えただけ)で、平均年収は低迷したまま

という有り様で、とても褒められたものではない。

また、すぐに消費税増税に責任転嫁するの問題だ。

以前、日銀は、「消費税率の引き上げ分が現行の課税品目すべてにフル転嫁されると仮定して機械的に試算すると、2014年度の消費者物価の前年比は2.0ポイント押し上げられる」と試算しており、増税による消費低迷の影響があるとしても、増税自体は、むしろ物価引上げに直接的に寄与していると認めているではないか。

さらに、黒田総裁自身も、消費税増税には積極的に賛成する発言を繰り返しており、増税が物価目標未達の原因だとしても、それは自分が撒いた種なのだから、自らを恨むべきだろう。

筆者は、日銀の積極的な国債買入により、政府債務が実質的に消滅しつつある点こそが、異次元緩和政策の成した最大かつ唯一の功績だと考えている。

だが、これを認めて喧伝することは、大規模な財政政策の幕開けにつながる懸念があるためか、緊縮財政派はおろか、当のリフレ派も口を噤んだまま触れたがらないから、金融政策の効果が国民に正確に伝わっていない。

そもそも、日銀が掲げた「2%の物価安定目標」というコミットメントの真意が、ほとんどの国民に理解されていない点に大きな問題がある。

本来なら、

①政府による積極的な財政政策とそれをサポートする量的金融緩和政策の発動

②「消費や投資の直接的な原資となるお金」の実体経済への大規模な投入と低金利誘導による投融資環境の改善

③ビジネスチャンス拡大を狙う企業の投資活発化と収益向上による労働分配率の改善

④家計所得向上の実現と将来的な所得拡大期待の蔓延による消費の活発化

⑤ディマンドプル型インフレの発生による物価目標達成

という経路を国民に示し、堂々と政策論議すべきであったのに、日銀やリフレ派の連中は、それらをすべてすっ飛ばしてしまった。

いまだに、デフレという言葉の意味すら理解できぬ企業経営者や家計が多い中で、いきなり2%のインフレ目標を掲げられても、その意図を汲み取ることなど不可能だし、特に、永年の不況でフロー・ストックともに散々に痛めつけられてきた家計に至っては、日銀の妄想する「フォワードルッキングな期待形成」なんて抱けるはずがなかろう。

万が一、市井の人々が、“物価の上がり方は中央銀行の目標である2%に向かっていくだろう”と予想したとしても、現状の所得と将来の所得の伸びに大きな不安を抱える家計の取り得る行動は、「駆け込み消費」ではなく「更なる支出切り詰めと貯蓄奨励」でしかない。

家計には消費の実弾が枯渇しており、もはや、「フォワードルッキングな期待」に釣られて消費を増やせるような元気は残っていない。

この程度のことは、身の回りを見渡せば直ぐに解かるはずだが、「学問」という歪んだフィルターを通してしか、世の中の事象を理解できないようなバカ者にとっては、案外難しいことなのかもしれない。