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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

働き方改革という服を着た労働コストの削減

先日、東京都のパフォーマンス知事が、都庁職員に対して午後8時までの完全退庁を指示したことが大きな反響を呼んだ。

退庁時間が6時じゃなくて、なぜ8時なのか?という突っ込みは別として、しょーもない議会対策や財政当局との折衝のために長時間労働が蔓延しがちな地方公務員の働き方に一石を投じることになればよいと思う。

小池氏は、元々、新自由主義的思考の強い人物であり、労働者目線に立つかのような今回の提案も、その賞味期限は極めて短いものになるだろう。

よって、労働者サイドも今回の提案を逆手に取り、定時退庁を常態化させ、「残業=悪癖」という空気を早急に醸成しておくことだ。

さて、こうした動きがマスコミ受けするのを嗅ぎ取ったのか、自民党も働き方改革への取組みを加速させるような動き見せているが、相変わらず規制緩和&改革臭が強く、内容が伴っていない。

9月15日の日経新聞朝刊に、働き方改革に関する自民党茂木政調会長のインタビュー記事が掲載されていた。

インタビューの中で茂木氏は、働き方改革の論点として、

同一労働同一賃金

長時間労働の是正

配偶者控除の見直し

④雇用のミスマッチ解消

外国人労働者受け入れ

を挙げている。

働き方改革とは、我が国の供給力を支えるエンジンである労働者のポテンシャルを最大限に発揮させ得るものでなければならず、その主軸は、

・被雇用者の所得引上げ

非正規雇用&海外への資本移動に対する規制強化

長時間労働の禁止&有給の完全取得のための労働規制強化

であるべきというのが筆者の考えであり、自民党や茂木氏の思考は、完全にあらぬ方向を向いているようにしか見えない。

茂木氏が挙げた5つの論点のうち、②の長時間労働の是正以外は、有害もしくは効果の乏しい愚策でしかない。

①の同一労働同一賃金は、非正規雇用の処遇改善を表看板にしているが、その実態は、非正規雇用者の待遇改善財源を捻出するための正規雇用者の処遇切り下げと働き方の多様化を旗印とする雇用規制の更なる緩和に過ぎず、正規雇用者のメリットは一分もないものと覚悟しておいたほうが良い。

そもそも、全労働者の4割もの非正規雇用を産み出し、格差社会を常態化させた責任は、小泉バカ政権以降の自民党にあるのだから、彼らの処遇改善を謳うのなら、まともな正職に就けなかったロスジェネ世代に対する公務員への優先雇用を掲げるなどといった本気度を示すべきだ。

③の配偶者控除の見直しについて、巷では、女性の働く意欲が103万円の壁にぶつかり抑制されると言われているが、そんなことはない。

年38万円の基礎控除による節税効果は3.8万円ほどに過ぎず、この程度なら、103万円に固執せず、パート時間を増やして収入を挙げた方がメリットは大きいだろう。

先の消費税率8%への引上げにより、年収500~600万円の家計における負担増加額は年額8.8万円にも上ったそうだから、こちらの方がよほど労働意欲を削がれるのではないか。

103万円で働く気が失せるのなら、その限度額を200~300万円と引き上げてやればよいだけの話だ。

④の雇用のミスマッチ解消に絡めて、給付型奨学金の創設を検討しているようで、その点は大いに賛成するし、ついでに国公立大学の授業料引下げ(現状の半額程度)にも取り組むべきだ。

しかし、雇用のミスマッチ論は、得てして、職業訓練や人材育成を絡めて論じられるケースが目立ち、いかがわしい人材派遣業者の利権を優先させた施策につながりやすいから要注意だ。

実社会において、特殊な資格を要する職業を除き、職業訓練程度でミスマッチの溝が埋まるケースなんてほとんどない。

雇用者と被雇用者とのミスマッチ(=溝)は、大概、給与を含めた労働条件の改善でしか埋められず、訓練とか教育のようなきれいごとで誤魔化せるものではない。

⑤の外国人労働者受け入れは、いまさら指摘するまでもなく、国の在り方を揺るがしかねない大問題であり、政府が恣意的に指名した民間委員の連中が諮問会議の場で軽々しく論じるべきではない。

茂木氏は、日経のインタビューに、「単に専門職に限らず、具体的にどう受け入れていくか検討を進めたい」、「移民とは違った分野での受入れのあり方を検討する」と答えており、外国人労働者は高度専門人材に限るという政府の方針を、いとも簡単に反故にしようとしている。

地方の中小企業、とりわけ、労働条件の厳しい水産加工場や製材業者、小売の現場などではパート人材の確保に苦労しているところもあり、外国人労働者の活用を口にする者もいる。

だが、実際に中小企業の経営者に聞いてみると、経営上の最優先課題は、やはり、「売上・収益の確保」や「製造・仕入コストの抑制」であり、「人手の確保」という課題の優先順位は劣後する。

人手不足は、数ある課題の一つであることは事実だが、中小企業の経営を直接的に左右するかと問われれば、“そこまで差し迫った問題とまでは言えない”というのが実状なのだ。

製造現場や売り場で働いてくれるパートが集まらないという悩みは、時給の改善や柔軟なシフト対応により相当程度解決可能な問題であり、そうした努力を忌避して、一足飛びに質の悪い外国人労働者受け入れに議論を誘導すべきではない。

茂木氏の提案から滲み出ているように、政府与党の連中が掲げる目標は極めてシンプルだ。

それは、“雇用の流動化と低賃金労働者の活用による労働コストの引下げ”であり、それ以外の何物でもない。