うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

省益ファーストの怠け癖を糺すべき

国の施策を具現化するためには、法の整備と予算付けが欠かせない。

高級官僚から末端に至るまで国家を動かす官僚たる者の仕事は、省令を含む法律の立案と予算獲得の二点に集約されると言ってよく、それを成し得るために、彼らは、ほぼ休暇なしの年間360日労働くらいの勢いで馬車馬のように机に噛り付いている。

 

官僚たちの勤労ぶりには敬意を表したいが、せっかくの職能スキルを、労働時間量の消化に費やすのではなく、その質の充実に使ってもらいたいものだ。

 

筆者も仕事柄、企業の資金調達や経営支援に係ることが多く、経済産業省中小企業庁の中小企業支援メニューをチェックしているが、はっきり言って、どれも新鮮味に欠けるし、個々の支援内容もショボ過ぎる。

 

経産省の今年度イチ推しの目玉施策は、7月に改正施行された「中小企業等経営強化法」だ。

 

同法は、「中小企業・小規模事業者等が労働の供給制約等を克服し、海外展開等も含め、将来の成長を果たすべく、生産性の向上(経営力向上)を図ること」を目的に制定されたもので、中小企業等が、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等によって自社の生産性向上のための「経営力向上計画」を作成して、経産省をはじめとする担当官庁宛てに提出し、認定を受けた企業に対して支援措置が施されるという内容である。

 

中小企業等経営強化法認定制度の一番のウリは、“申請書がたったの2枚だけ”という手軽さで、何につけ、申請者に対して膨大な資料を要求してきた悪しき慣行を覆すという意味では、一歩前進と言ってよい。

 

問題なのは、認定を受けた後に受けられる支援措置があまりにも貧弱なことだ。

 

支援措置の柱は、

①経営力向上計画に基づき新規で取得する新品の機械装置(160万円以上)を対象とする固定資産税課税標準1/2に軽減(3年間)

②政策金融機関の低利融資や信用保証協会利用時の保証枠の拡大

2本だが、いずれも新鮮味に欠け、アピール力はゼロに近い。

 

①の固定資産税の軽減額なんて、下限の160万円の機械なら、せいぜい年3,000円×3年間の9,000円程度にしかならず、大したメリットはない。

 

②の低利融資や保証枠拡大は、経産省や県の支援制度としてお馴染みの手垢まみれの支援措置であり、実際にはほとんど利用されていない。

 

低利融資と言っても、個別案件に対する審査判断は別物であり、「法認定=融資実行」という訳ではない。(ここを勘違いしている企業のなんと多いことか…)

あくまで、政府系金融機関が融資可否を別途判断し、その関門を潜り抜けた企業が低利で融資を受けられるというだけの話なのだ。

 

しかも、市中銀行の中小企業向けの融資金利1%を切るケースも珍しくはなく、政府系金融機関の低利融資より金利が低いケースなんてザラにある。

ついでに、信用保証協会の保証枠についても低利融資と同じ仕組みであり、企業にとって大した訴求力はない。

 

経産省は、これまでも、産業活力強化法や中小企業経営力強化支援法、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律等々、似たような法律を次々と立ち上げてきたが、それらに付随する支援措置は、ほぼ、租税の減税と低利融資の使い回しばかりで同省のやる気が疑われる。

 

これでは、経産省の官僚が自分の手柄づくりのために年度ごとに類似法を立ち上げているのではないかと指摘されても仕方あるまい。

 

今回採り上げた中小企業等経営強化法の全国の認定件数は、88日時点で105件に止まり、いまひとつパッとしない。

この手の認定制度が立ち上がると、手数料狙いのコンサルにそそのかされ、何でもよいから取り敢えず国の認定を受けたいという名誉狙いの企業も多いから、本気でメリットを享受しようとする企業は半分にも満たないだろう。

 

中小企業等経営強化法みたいに、一見ちっぽけな法律であっても、いざ立法するとなると、高級官僚たちが掛かりっきりで年単位の膨大なコストが必要になる。

それだけのコストをかけても、企業の経営力強化に有用な施策を創れるのならよいが、ご紹介したとおり、企業のためというよりも、官僚自身の実績づくりのためとしか思えぬような筋の悪い政策ばかり創っているのが実態だ。

 

中小企業の経営力の強化を謳うのなら、省内の常識や相場観で一方的に判断するのではなく、企業サイドはどういう支援を求めているのかについて、きちんとニーズを汲み取る努力が欠かせない。

 

予算を握る財務省の連中の顔色を窺って、靴の上から足を掻くような効き目のない施策に逃げるのではなく、認定企業に対して数百万円単位の設備投資助成金を措置するなど、企業の成長力強化へダイレクトに響くやり方を模索すべきだろう。

 

わざわざ高級官僚を総動員して法整備をするのなら、省益や局益に拘泥することなく、国益を担う公僕としての役割を自覚して、企業経営に資する政策づくりを心がけてもらいたい。