うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

新自由主義者の依怙贔屓

7月8日付の日経新聞「大機小機」に『成長戦略の中核は規制改革』というコラムが掲載されている。(コラム執筆者は吾妻橋氏)

タイトルを見ただけで、10億光年の彼方から新自由主義者臭が漂ってきそうな気がするが、中身を読んでみると、まさに“日経節の大炸裂”と言うべき内容である。

吾妻橋氏の主張は以下のとおり。

①ほぼ完全雇用なのに所得が増えないのは、経済成長の制約要因が、需要不足ではなく供給制約にあるためだ

②金融政策や財政政策の出番は既に終了しており、供給力拡大を目指す成長戦略が最優先となるべき

③過去の宅配便や携帯電話業界の規制改革が、巨大な新規需要を生み出した功績を忘れてはならない

④600兆円のGDPを目指すアベノミクスの真価は、参院選後の規制改革への取組み如何に掛かっている

いつものことだが、構造改革教や規制緩和教の信者が唱える呪文には、“誰がモノやサービスの買い手になり得るのか”という主語がすっぽりと抜け落ちている。

供給制約が排除された後に生産される膨大な量のモノやサービスを、いったい誰に売りつける気なのかは知らないが、需要力を蔑視し、無視する吾妻橋氏の妄言に反論しておきたい。

まず、①の「経済成長の制約要因=供給制約」という詭弁について、実際に供給制約が起こっているなら、供給<需要という因果関係からインフレ傾向になりやすく、モノ・サービスの単価や労働コスト(=家計所得)が上昇するはずだが、現実はまったくそうなっていない。

筆者が経営相談をしている中小企業の中にも、売上や収益が一向に改善されないのに、いつも人手不足を嘆いている先がいくつもある。

完全雇用なのに所得が増えないのは、正社員を減らして非正規雇用で補うという雇用の質の悪化がもたらす所得抑制効果、企業として売上や収益環境が好転しないことによる労働分配原資の不足によるものであり、元を辿れば、その原因は需要不足に他ならない。

筆者も様々な企業の経営者と会う機会があるが、引き合いはあるのに供給制約のせいで商売が上手く行かないなんて贅沢なことを言える先はごく一部だけで、大半は売上不振や発注元からの買い叩きに遭って苦労している。

次に②の成長戦略最優先との言説については、正確な実績評価を無視した単なる依怙贔屓だろう。

1997年の橋本行革、あるいは、2001年の小泉バカ政権による構造改革(=改悪)騒ぎ以来、少なくとも15~19年もの間、日本経済は改革や規制緩和の波に晒され、「成長戦略(改革+規制緩和)と財政再建」をメインとする有害な社会実験が断行されてきたわけだが、その間の実績と言えば、名目GDPは、1997年から2015年にかけて523兆円から499兆円まで減少(マイナス4.6%)し、世帯当たりの平均所得額(全世帯)も、ピーク時の1994年の664万円から2013年には528万円へと20.5%も減少するなど惨憺たる結果に終わっている。

経済成長も叶わず、所得も増やせないような経済政策を成功と呼べるわけがない。

実績や成果を残せず、失敗だらけに終わった成長戦略とやらを賛美する理由などどこにも見い出せない。

金融政策はともかく、財政政策の出番は終了どころか、まだスタートラインにすら立てていないではないか。

財政政策を嫌うあまり、出まかせを言うのは止めてもらいたい。

続いて③の規制緩和を賛美するつくり話について述べておきたい。

宅配業界や携帯業界が規制緩和措置によって大きく成長したという都合のよい狂言を耳にすることは多いが、両業界が急成長できたのは、規制緩和のおかげというよりも、大手2~3社による市場寡占状態が維持されたことによる要因の方が遥かに大きく、規制緩和よりも、護送船団方式による参入阻止策が奏功した好事例と呼ぶ方が適切だろう。

両業界とて、早くにマクロ経済の需要不足が解消されGDP成長の恩恵に浴していたなら、より多数の企業が市場に参入でき、いま以上に多様なサービスが供給されていたはずだし、適切な価格競争(硬直化した大手携帯電話各社の料金体系を見ればよい)が起きて利用者の利益にもつながっていたはずだ。

また、業界全体の売上や収益力も増して、特に宅配業界で大きな問題になっている劣悪な雇用環境(長時間労働+低賃金)も大幅に改善されていただろう。

最後に④のアベノミクスの真価云々について、いまだにGDPの目標が600兆円程度に止まっていることこそが、橋本行革以降連綿と続く“緊縮と改革&緩和が融合したハイブリッド型経済政策”が明らかに失政であったことの何よりの証だと言ってよい。

他の先進諸国並みの経済成長率を達成していれば、今頃我が国の目指すべきGDP目標値は、軽く1,000兆円を超えていたはずだ。

なのに、現実の目標値はそれより40%も低いうえに、そうした低レベルの目標値すら達成が疑問視されている。

これでは、何時までも赤字を垂れ流し続けて倒産寸前のゾンビ企業と同じであり、困窮を招いた要因を早急に排除し、新たな対策を打つべきである。

ここ20年近くの経済政策の実績を確認すれば、緊縮や改革・緩和路線を主軸とする橋本・小泉路線の誤った経済観こそが、日本経済の困窮を招いた主犯であり、真っ先に二軍行きを命ずべき対象であることくらい小学生でも解かるだろう。

しかし、吾妻橋氏は、何の実績も残せずチームに迷惑ばかり掛けている四番バッターを、この先も重用すべきだと主張している。

KPIとかPDCAみたいな定量的な実績主義のお好きな新自由主義者らしからぬ吾妻橋氏の依怙贔屓ぶりには、正直に言って失笑を禁じ得ない。

さて、今週末に投票日を迎える参院選は、残念ながら与党側の大勝が予測されている。

いくら失政を重ねても、選挙でしっぺ返しを喰らわぬ限り、与党の連中が反省することもないから、彼らは、この先も無謀な改革路線をひた走ろうとするだろう。

一方、野党の体たらくぶりをいくら批判しても、大した能力のない野党の連中の心に響くとも思えない。

何と言っても選挙結果を左右するのは国民一人一人の意思であり、日経やはじめとする新聞やテレビをボケーっと眺めるだけで、マスコミが垂れ流す論調を無批判に受け入れ流されるだけの不勉強かつ不真面目な国民に対して大いなる猛省を促したい。