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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

英断

世界中が注目した英国のEU離脱の是非を問う国民投票の結果は、「離脱派」が勝利したと報じられた。

事前の世論調査では、投票一週間前に労働党所属の残留派議員が殺害されるというショッキングな事件が起こり、離脱派を取り巻く熱が一気に冷め、残留派がやや優勢との報道もあったため、この結果には筆者も少なからず驚いている。

と同時に、今回の投票結果が、ここ20~30年余り世界中を席巻した新自由主義的潮流から舵を切る転換点となることに期待したい。

マーストリヒト条約には、EUの目的として、

(a)域内国境のない地域の創設、及び経済通貨統合の設立を通じて経済的・社会的発展を促進すること

(b)共通外交・安全保障政策の実施を通じて国際舞台での主体性を確保すること

(c)欧州市民権の導入を通じ、加盟国国民の権利・利益を守ること

(d)司法・内務協力を発展させること

(e)共同体の蓄積された成果の維持と、これに基づく政策や協力形態を見直すこと

と規定されているが、実現されたものもあれば、まったく逆方向に走っているものもあるだろう。

経済的発展の恩恵を受けたのは、ルクセンブルクのような国の態を装う金融ブローカーや欧州内のグローバル企業と出稼ぎ労働の働き口を得た旧東欧諸国やアラブ・アフリカ系移民の連中だけで、数億人にも及ぶEU諸国の国民は、社会や雇用の不安定化、所得の停滞に悩まされている。

最近の欧州の若者が、比較的安定した社会構造や治安を誇る日本に憧れるのも、そんな歪んだ欧州の社会背景を受けてのことだろう。

特に、「(c)欧州市民権の導入を通じ、加盟国国民の権利・利益を守ること」の規定は、頻発するテロや移民による重犯罪リスクの最前線に晒される一般国民にとって、絵空事に等しいだろう。

今回の投票結果は、その差こそ、ほんの数%でしかないが、当初から離脱派は、目に見えぬ大きなハンディを背負い込んでいたはずだ。

欧州における「政・官・財・報」の鉄のカルテットは、現状変更に極めて否定的で残留派を強く支持してきた。

こうした連中は、口を開けば“改革、改革…”としか言わないくせに、自分に都合が悪くなると、途端に守旧派に転じるから始末が悪い。

特に英国のみならず世界中の報道機関は、離脱派を指して、“排外的思想の持主、守旧派、懐古主義者、自由貿易否定派”だのと、下劣かつ強烈なレッテルを貼り続け、「寛容な多文化共生主義VS不寛容な時代遅れの民族主義」という図式を創り上げて、反離脱派キャンペーンを展開してきた。

世界中のマスコミから、“善VS悪”という不利な構図に拘束されたうえに、投票目前で残留派の女性議員(しかも子育て中の若い議員)が過激な離脱派の運動員によって殺害されるという痛ましい事件(事件の真相ははっきりしていないが…)が起こり、離脱派は相当なアゲインストに晒されていたことだろう。

そうした極めて不利な情勢下での離脱派の勝利は、大変大きな意義を持っており、現実の数%という投票差も、実質的には65%:35%くらいの差で勝利したような感覚なのではないか。

いまや、先進国の政治家や官僚、経営者、識者、マスコミの多くは、新自由主義的思想にどっぷり洗脳されており、「改革・規制撤廃・緊縮的財政運営・国境の撤廃・移民受入・多文化共生主義」のような時代遅れの左翼ワードに強いシンパシーを感じている。

彼らは、総じて、こうした思想がもたらす経済停滞や中低所得者層の没落、民族対立、社会不安、治安の悪化にほとんど無関心で、“改革こそ善、関税無き自由貿易こそ絶対不可侵の真理”だと妄想して止まない。

そうした歪んだ理想主義が自国の企業の体力を奪い、自国民の所得や雇用に悪影響を及ぼしても、「自己責任・努力不足・グローバル化は不可避の潮流」という紋切り回答3点セットで批判を遮断してしまう。

そして、最大の被害者であるはずの国民や中小企業も、政府やマスコミから、改革や自由貿易という一見清廉そうな建前を押し付けられると、巨大な権力を持つ相手に怯むばかりで、長いものには巻かれろと改革信者へ変心し、その結果、世界中に新自由主義者が増殖してきたのだ。

今回の離脱派の勝利は、こうした圧倒的に不利な歴史や状況を覆した結果であり、二十一世紀の経済政策や社会政策を支配して横暴を極め、暴虐の限りを尽くしてきた新自由主義的思想を排除する転換点や起点になることを願って止まない。

なによりも、欧州で社会実験済みの「移民推進」という危険な政策に、この段になっても執着する東洋のバカな国の首脳には、今回の大英断を下した英国民の強い意思をよく噛みしめてもらいたい。