うずらのブログ

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ポピュリズムより恥ずかしいこと

日経新聞のマーケット総合2面に「大機小機」なるコラムが掲載されていることをご存知の方も多いだろう。

当コラムは月~金の日替わりで別々の執筆者が書いているようだが、いずれも財政再建論者か構造改革主義者ばかりで、日経の社説の縮小版のような記事が目立つ。

先日も「ポピュリストの時代」(執筆者:唯識)なるコラムが掲載され、参院選を控えての安倍首相による消費増税再延期の判断を採り上げて、世に蔓延る様々なポピュリズムを批判するような内容であった。

執筆者の唯識氏は、過度なポピュリズムの例として、

安倍氏が、民意を意識するあまり税と社会保障の一体改革を無視して消費税再引上げの延期を決めたこと(国民の6~7割が再延期に賛成)

②アメリカ大統領選の民主党候補であるクリントン氏が、国内の労働者や中間層に配慮してTPP反対論に転向したこと(氏は元々TPP推進派)

③中国政府が、国内のネット世論に配慮して、南沙諸島尖閣諸島での軍事的プレゼンスを誇示していること

の三点を挙げた挙句に、太平洋戦争時の軍国主義と共通するポピュリズムの蔓延を危惧し、マスコミが大所高所から監視役となり率先して参院選の判断軸を国民に示すべきだ、と息巻いている。

②については、国民の利益を考慮するなら、貧困への競争を招くリスクの高いTPP協定に反対するのが当然だろう。

③については、中国政府は自らの意思で暴慢な示威行動を取っているだけで、大衆への配慮ではなかろう。

今回のエントリーでは、上記①について論じてみたい。

唯識氏が太平洋戦争時のポピュリズムを悪例として挙げた理由は、勝ち目のない戦い(当時の軍事力をより正確に検証しない限り、本当に勝ち目がなかったのか否かは軽々に判断できないが…)に多くの国民を巻き込み膨大な被害を生じさせたことにあると思われる。(実際に、戦時下でポピュリズムを煽り立てたのはマスコミや国民自身であり、その責めから免れることはできないが)

それならば、国民経済を大きく破壊してきた確証のある消費税増税という悪手を敢えて断行しようと呼びかけるのは、まったく勝ち目のない経済戦争に国民を誘い込もうとする行為であり、話が矛盾しているのではないか。

“民衆に迎合せず国民に苦役を課す政策を敢えて断行するのが真の政治家である”という歪んだヒロイズムに囚われ、毒薬を良薬だと勘違いしているだけだろう。

消費税増税に対する反応は、一般国民と企業及び有識者との間で大きく異なる。

内閣府による「将来の公共サービスのあり方に関する世論調査」では、「財政再建を優先すべき」と回答したのは、調査対象となった国民の22.1%に過ぎない。

一方、朝日新聞社が主要100社に対して昨年6月に行った「景気アンケート」では、51社が「財政再建への取り組みが足りない」と指摘し、40社が「社会保障改革への取り組みが足りない」と回答している。

また、経済同友会が会員経営者を対象に昨年9月に行った「景気定点観測アンケート調査」では、消費税再増税を支持する回答が合わせて81.9%にも達した。

さらに、言論NPOが全国6000人の有識者(自称)に対して昨年7月に行った『「財政健全化計画を評価する」有識者アンケート』では、消費税10%からのさらなる引き上げが「必要」との回答が63.1%、財政再建にとって重要なのは「社会保障費の抑制」との回答が40.5%に達している。

つまり、財政再建や消費税増税に関して、国民は消極的、企業経営者や有識者は積極的という構図になっている。

こういう場面で消費税増税を声高に叫ぶのは、戦況をまったく読めていない経済界や有識者の連中に迎合することにならないか?

唯識氏の言説には、“大衆(国民)は無知で怠惰だから、彼らに甘い顔をしていると財政再建構造改革が進まない”という思い上がりや傲慢さが透けて見える。

既に多くの懸命な論者が指摘しているとおり、消費税という税制は、内需個人消費に対するブレーキ効果を働かせる極めて毒性の強い税制であり、特に、デフレ期における導入は、低体温症患者に解熱剤を打つようなもので自殺行為に等しい。

経済活動のイロハすら理解していない素人が、根拠のない理想に固執して、増税や改革の進軍ラッパを吹く様は、まさにポピュリズムの極みだと言ってよい。

いや、ポピュリズムよりも数倍恥ずかしい「強者への阿り」あるいは「権力者への迎合」とでも呼ぶべきだろうか。