うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

消費者の価格感応度には非対称性がある

ここ最近、様々な経済指標が公表されているが、今年1~3月期の実質GDP改定値が前年同期比+1.9%、大手企業の夏のボーナス支給額が4年連続増加などといった良いニュースがある一方で、4月の機械受注額は前月比-11.0%、5月の街角景気調査では前月比-0.5ポイントと2か月連続悪化、4月の実質消費支出は前年同月比-0.4%と2か月連続マイナスなど冴えないニュースもあり、まさに玉石混交といったところか。

自称エコノミストたちは、こうした状態を指して「景気は踊り場に差し掛かっている」と解説するが、それが上り階段の途中なのか、下り階段の途中なのかを明言しようとしない。

ここ数期のあらゆる経営指標の動きを俯瞰すれば、やや良化した指標が見受けられるものの、全体的に見れば、最大限譲歩したとしても、“景気は下り階段の途中にある踊り場に差し掛かっている”と言うべきだろう。

筆者が業務上で目にする中小企業の決算動向を見ると、機械加工や運輸、食品加工などの業種では(決して高いレベルとまではいかないが)増収増益傾向にあり、印刷や建設などは減収気味といった印象を持っている。

ただ、残念なことに、業界全体の活況により増収決算となっているとは言い切れず、受注のパイ自体は縮小しているものの、競合他社の倒産や廃業により、その分の“こぼれ球”を拾った結果としての好決算というケースが多いのが実状だ。

一方の個人消費は相変わらず低迷している。

4月の勤労者世帯の実収入は、1世帯当たり480,098円と前年同月比 実質+1.0%、名目+0.7%と2か月連続増加、しかも、世帯主収入・配偶者収入ともに増加しているにもかかわらず、消費支出は1世帯当たり298,520円と実質0-.4%、名目-0.7%と2か月連続のマイナスとなっている。

こまかい内訳を見ると、私大や専門学校の入学金・授業料や食費などが高騰した煽りを受けて、洋服代や冠婚葬祭費、自動車整備費、住宅修繕費、通信費などが削られている。

所得が多少増えたとはいえ、家計は、消費増税社会保険料引き上げ、食品などの物価上昇に対してかなりナーバスになっており、支出に対する防御態勢を解こうとしていない。

一般家計は、景気の行く末に対する強烈な猜疑心を抱いているが、これを解きほぐすにはどうすべきだろうか。

現実的な政策として選択肢の一つになるのが、消費税率の引き下げや消費税そのものの廃止だろう。

安倍首相は、税率10%への再引上げを延期し、さも苦渋の決断を迫られたかのように装っているが、引上げ延期をしたからといって、景気回復に絶大な効果があるわけではない。

せいぜい、引上げに伴う絶望的な景気の落ち込みをしばらく猶予できた、という程度に過ぎない。

引上げ延期なんて当然の判断であり、こんなもので手柄顔をされても困る。

では、8%の税率を5%に戻せば、8%への引上げの影響で悪化した経済を元に戻すことができるのかといえば、決してそうはならない。

なぜなら、価格変動幅に対する消費支出の感応度には非対称性があり、一般的に家計の消費行動は、値上げに対しては極めて敏感かつ過剰に反応する一方で、値下げに対しては思ったほど劇的な反応を示さないケースが多いからだ。

住信SBIネット銀行の値上に関する消費者意識調査(2014年1月)によると、値上がりがつらいと感じる商品の1位はガソリン、2位は食品・飲料、3位は電気だそうだが、いずれも実際の値上がり幅だけを見れば、月に数千円程度に収まるはずだが、調査では5人に1人の家計が「これ以上の値上げには耐えられない」と回答しており、値上げに対してかなりナーバスに反応している様子が窺える。

また、取引先のスーパーの経営者に聞いた話だが、普段1パック150円で売っている卵を170円に値上げすると、売上数量が20%くらいは簡単にダウンするのに、逆に130円に値下げしても、客の反応は鈍く、せいぜい数%しか伸びないそうだ。(さすがに、100円で特売をかけると倍以上の数量が捌けるが、商品単体としては赤字であり、客寄せの特売商品と割り切らないとやっていられないとのこと)

よって、消費税率の改定により景気を刺激しようとするならば、8%への据え置き程度で満足するなど以ての外であり、5%への引下げでも不十分で、あらゆる家計が実質所得の増加を確実に実感できるよう、消費税そのものを廃止するのは当然として、将来にわたる所得増加期待を高めるためにも、積極的かつ大規模な財政金融政策により実体経済をかなり強烈に刺激してやる必要がある。

日本人は、不況という冷泉に長らく浸かり過ぎたせいか、我慢や貯蓄にばかり興味を持ち、20年間不況のどん底にあったのだから、20~30年かけてゆっくり回復させればよいなどと呑気に構えているが、トンデモナイことだ。

理不尽な不況に抑圧された期間の逸失利益を一刻も早く取り戻すべく、2~3年のうちにスピーディーに景気回復を実現させるくらいの気概が必要であり、通貨の信認だの、財政規律だの、PB目標だのと手段の清濁に拘泥するのは、まことに愚かな態度だろう。