うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

増税再延期に反対するエセ経済人

『消費税増税再延期 自民・小泉進次郎氏「そんなおいしい話に若い人たちはだまされない」

産経新聞 5月31日(火)』( http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160531-00000586-san-pol

自民党小泉進次郎農林部会長は31日、党本部で開かれた党政調全体会議に出席し、消費税率の10%への引き上げを来年4月から2年半延期するという安倍晋三首相の方針について「延期するけれども決まっていた(社会保障)充実策はやるというなら、こんなおいしい話はない。そんなおいしい話に若い人たちはだまされない」と発言した。(中略)

一方で、「今回の決断は社会保障の構造的なあり方(の改革)にもう一度アクセルを踏んでいくスタートにしなければいけない」とも強調。再延期の方針を半ば容認しながらも、社会保障制度の見直しを同時に進めていくべきだとの認識を示した。」

ようやく消費税再増税の延期が公表されたと思ったら、それに反対するバカ者が方々で声を上げ始めた。

だが、増税延期に反対する“通気取りの中学生”は、上記記事で紹介された小泉のバカ息子だけではない。

麻生財務大臣や谷垣幹事長、公明党幹部をはじめとする与党内にもゴロゴロいるし、民進党や維新関係の新自由主義者の中にも増税に未練たらたらの連中が多数おり、日本の政治家のレベルが疑われる。

さらに、予想通りではあるが、クオリティーペーパーを自称する日経新聞も、さっそく増税延期に反する記事を連発し、6月1日付の社説(「成長と財政再建の両立を捨てるな」)とコラム大機小機(「消費増税再延期のリスク」)を使って、消費増税再延期という判断に文句をつけている。

日経は、社説やコラムを通じて“日本経済の最大の課題は成長力強化と財政再建の両立”だとしたうえで、

①消費税は社会保障を支える重要な安定財源であり、増税再延期は財源を不安定化させ将来世代へのつけ回しになる

増税再延期により、巨額の借金を抱える最悪の財政状態に対する懸念が強まり、国債の格付け下落リスクに晒されるとともに、20年度PB黒字化という財政再建目標達成が遠のく

ことなどを懸念し、社会保障費の膨張を抑える歳出改革や潜在成長率を高めるための労働規制改革などが必要だと主張している。

彼らに言わせると、“消費低迷の一因は若者世代を中心とする将来不安にあり、子育て支援等の財源になる消費増税を見送れば、若者世代は期待を裏切られたと感じて消費を更に抑えるだろう”ということだそうだが、消費増税による子育て支援の充実を期待する若者世代など現実にはほとんどおるまい。

だいたい、増税という負担は、若者世代にも間違いなく掛かってくることになるが、子育て支援の具体的な内容は何一つ決まっていないし、そもそも、20歳代後半の未婚率が男性で7割、女性で6割にも達するご時世に、若者世代が子育て支援自体に敏感になることもないだろう。

増税主義者の連中は、社会保障に対する不安を語る際に、“社会保障制度が将来的に立ち行かなくなるという不安”や“消費税などの財源不足による社会保障制度の停滞”という側面からのみアプローチするが、国民が実際に不安なのは、“自身が享受できる社会保障のクオリティーが年々劣化していること”であろう。

国民が気にしているのは、社会保障制度の在り方みたいな大所高所の議論ではなく、あくまで自分に関わりのある範囲での社会保障の質の維持向上の問題でしかない。

つまり、医療にしろ年金にしろ、自分が支払う負担を軽くする一方で、生活するのに十分な水準の年金を受給したいという極めてシンプルな願望しか持っていない。

日経のコラムには、「社会保障制度の充実を目的とした消費増税の先送りは、国民の将来への不安感を増幅し、家計に消費を一段と冷え込ませかねない」と記されているが、モノやサービスを消費するに当たって、市井の人々が社会保障云々を気にすることなんて、実際にはない。

日本銀行が3ヶ月ごとに実施する「生活意識に関するアンケート調査」(第65回・2016年3月)によると、景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が58.9%と最も多く、今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「収入の増減」との回答が67.8%と最も多かった。

要するに、“自分の収入さえ増えれば、景気が良いと感じるし、積極的にお金も使うようになる”という極めて当たり前の結果が裏付けられただけのことで、社会保障制度の動向を気にして消費を逡巡しつつ、増税による安心感から消費に前向きになれるような“非合理的なエセ経済人”なんて存在しないということが判る。

日経の社説やコラムにある“潜在成長率を引き上げる構造改革を断行せよ”云々のいかがわしさについては、過去のエントリーでも指摘したので今回は割愛する。

ひとつ言えるのは、日経流構造改革、例えば、医療や年金などの社会保障費の削減や人材流動化を目的とする労働規制緩和、国内市場の野放図な開放につながるTPPのような“構造改悪”は、間違いなく家計消費心理の悪化と国内産業基盤の不安定化を招き、税収の悪化や財政再建の足枷を増やすことにしかつながらないと言えるだろう。

日経は、表面上「成長力と財政再建の両立」を主張するが、彼らのいう「成長力」は、我々が想像する「経済成長や国民所得の向上」と相容れるものではない。

彼らの本音は「構造改革規制緩和財政再建の両立」であり、だからこそ、“成長力=潜在成長力=構造改革規制緩和”という具合に話がどんどんズレていくのだ。

いま目指すべきは、「成長力と財政再建の両立」などではない。

財政再建なんて、ディマンドプル型のインフレが恒常化した後にでもゆっくり取り掛かればよい。

財政再建のような余計なお荷物を抱えると、家計と国家財政との区別もつかず借金恐怖症に駆られた無知な政治家や財界の連中に邪魔されるばかりで、財政金融政策の足手まといにしかならない。

実体経済を加熱させて国民所得向上につなげるには、財政再建とか構造改革のような“毒性の強い政策”を避けて、「経済成長と適切な所得分配のための規制強化との両立」を断行すべきだろう。