うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

中小企業は、格好つけずに利益を追求すべき

TVの旅番組や雑誌のグルメ特集など、どこを見渡しても地元の新鮮な食材を使った地産地消型商品推しが、やたらと目に付く。

レストランやファストフードでも、使用する食材の原産地を明記する店が増え、外国産よりも国産、国産よりも〇〇県産の方が、より付加価値が高いという風潮が蔓延している。

また、「生産者の顔が見える=安心・安全」という根拠不明の公式が、いつの間にか市民権を得て、スーパーや道の駅の直売所などで、どこの誰かも判らぬ農家の親爺の作り笑顔の写真を目にすることも増えた。

国の政策も、農水省経産省の補助事業において、「地産地消」、「地域資源」、「地域ブランド」、「ふるさと名物」などのキーワードを使い、やたらと地域食材や地元食材推しを進めるが、これらは、そうした地域産品による国内市場の開拓を意図したものではない。

例えば、中小企業庁が公募する「ふるさと名物応援事業補助金(JAPANブランド育成支援事業)」の要領を見ると、その目的として、「複数の中小企業等が連携して、優れた素材や技術等を活かし、その魅力をさらに高め、世界に通用するブランド力の確立を目指す取組みに要する経費の一部を補助することにより、地域中小企業の海外販路の拡大を図る(後略)」と明記されており、海外販路の開拓を狙ったものであることが解かる。

ここ数年の政府の方針は、地域食材の発掘や商品化を振興する一方で、TPPなどの野放図な市場開放政策による国内市場の浸食を放置するという、まったく整合性の取れない政策を進めており、様々な矛盾が噴出している。

地産地消関連の過度な演出は、こうした矛盾を誤魔化すために、“成長著しい海外市場の開拓”という当てにならない夢舞台(かつて北朝鮮を地上の楽園だと妄想したのと同レベルの過ち)を用意したに過ぎないのだが、地産地消に係る幻想は制御が効かぬほど膨張しており、生産者や事業者だけでなく、流通業者やコンサルに至るまで浸透し、もはや「信仰」の域に達したと言ってもよい。

筆者も職業柄、様々な事業者の商品開発や販路開拓などに関する相談に乗る機会も多いが、皆が口を揃えたように、「地域の素材や食材を使った商品開発」とか、「地域ブランドを確立して県外や海外に打って出る」といった類いの与太話に目を輝かせるシーンを何度も見てきた。

それは、事業者や生産者サイドだけでなく、行政やコンサル、流通業者も同じことで、相談に来る事業者に対して、「地域産品を使った食品開発により高付加価値化を図るべし」、「地域資源がもつストーリー性を商品等に与えることが大切だ」、「モノ消費からコト消費へのトレンドに合わせた商品開発をすべし」などと偉そうに高説をぶっている。

だが、こうした「地域素材幻想」は、商品開発する事業者自身の首を絞めることになる。

地域の食材と素材は、得てして、収穫量が少なく、時期も限定されがちで流通ルートも確立されていないことが多いため、

①十分な製造量が確保できない

②製造時期が不安定で作業の平準化が難しい

③仕入コストが高い

④素材特性に癖があり加工の自由度が少ない

⑤“地域・地元”という点以外に何ら訴求点がない(=大して美味しくはない)

などといった問題点を抱えているものだ。

要するに、中小規模の事業者にとって、大したメリットが見当たらないうえに、量の確保やコスト面で非常に使いづらい食材である、ということだ。

1本200円程度の野菜ジュースを作れば売れるのに、素材の特性を活かそうとするあまり、1瓶700円もするようなビネガーを作って自爆するような、市場ニーズを無視した商品開発へと突き進む事例を、筆者も数多く目にしてきた。

食品製造に携わる事業者、とりわけ資本力の乏しい中小規模の事業者は、地域素材幻想に振り撒されることなく、もっとマーケットの現実に目を向けるべきだ。

例えば、“ぐるなび食市場”の全国地域別おみやげランキングを参照すると、北海道から九州に至るまで、各地域の売れ筋土産品ベストテンが公表されている。

北海道なら「白い恋人」、東北は「笹かま」、関東は「東京ばな奈」、中部・北陸は「赤福餅」、九州・沖縄は「カステラ」という具合なのだが、上位にランクインする商品に共通している点は、“地域の素材や食材をほとんど使っていない”ことだろう。

中でも、最も有名なのが、ロングセラーを誇る石屋製菓の「白い恋人」だろう。

白い恋人は、今年で発売40周年を迎え、年間100億円を売り上げる土産市場の雄と言ってよい商品だが、HPを見ても、商品パッケージを見ても、原材料表示を確認しても、どこにも北海道の素材を使ったなどとは書かれていない。

筆者も、先日、札幌に出張した際に、改めて商品を手に取ってみたが、パッケージに利尻山が描かれている以外に、北海道の素材との関わりを示す表記は何もなかった。

これは白い恋人に限った話ではなく、恐らく、笹かまも東京ばな奈も、あるいは、赤福でも同じだろう。

ちなみに、人気駅弁として全国でも名高い北海道の「いかめし」も、原料のイカは道産ではなくニュージーランド産のものを使っていると聞いたことがあるし、福岡名産の辛子明太子も北海道産のたらこを主原料としていることは周知のことだ。

要は、安く手に入る原材料を上手く加工して、いかに高く売れるかが勝負なのだ。

各社とも、全国的なブランド力を誇る商品に育て上げるために、地域の素材に拘らない柔軟な発想を基に、各社とも原料の確保や製法に工夫を凝らし、試行錯誤を重ねた結果が、現在の地位を築いているのだと思う。

これは土産物に限らず、行列のできる店や路地裏の繁盛店、人気のお取り寄せ商品などにも共通するポイントだろう。

素材の良さとか素材の力に頼り切り、地域の食材を使ったくらいで発信力やブランド力がつくと考えるなんて、いかにも甘すぎる。

ましてや、体力に劣る中小事業者が、コスト高で量も少ない素材を使うのは、事の初めからハンディを背負い込むようなものであり本末転倒だろう。

消費者の方も、日ごろは“食の安心・安全”とか“地元の新鮮な食材を”なんて偉そうなことを言っているが、いざ売り場に行くと、メジャーな商品か1円でも安い商品を選ぶものだ。

消費者ほど気まぐれで残酷な者はいない。

ブランドなんて、自らが創り出そうとして創れるものではなく、長年の販売実績に対する栄誉として、消費者から自然発生的に与えられるものだろう。

素材が良いからブランド化されるのではなく、美味しくて長く売れ続けた結果として“ブランド”という地位が与えられることを忘れてはならない。