読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

フィンテック狂騒曲

昨年秋頃からちょくちょく耳にしていたが、「フィンテック」なる言葉が、産業競争力会議の資料でも目にするようになった。

フィンテックとは、「Financial Technologyのこと。ファイナンス (Finance、財政) のFinと、テクノロジー (Technology、技術) のTechを合わせて創り出された造語(はてなキーワードより)」であり、国内では2014年に日経新聞が初めて紹介したとされ、今年2月にNHKのクローズアップ現代で特集(ITが変える“お金の未来”~フィンテック革命の衝撃~)が組まれてから、週刊ダイヤモンド東洋経済などで採り上げられ、関連書籍も多数発売されている。

フィンテックの事例や効用について、解説本やNHKの番組では次のように紹介している。

スマホ指紋認証で簡単に支払い決済が可能となる

クラウドシステムと連携し、家計簿や会社の経理管理が自動化される

③電子カード化により、複数枚のクレジットカードやキャッシュカードを1枚にまとめることが出来る

ビッグデータやAI(人工知能)の活用による投資資金運用や融資・ローン審査などの自動化

そもそも、日経発の輸入用語をダイヤモンドや東洋経済、クロ現みたいな取り巻きが“〇〇革命”と持て囃すという構図を見せられただけで、フィンテックなるものの将来性が危ぶまれようというものだ。

この手の欧米発の金融技術や情報技術を無批判に礼賛する連中は、何か目新しい技術が世に出ると、必ず消費者が反応しプラスの化学反応を起こす、と思い込んでいるから失笑するしかない。

先に紹介したフィンテックの事例を聞いたときの筆者の感想は、「その程度のサービスは既にあるだろう?」というものだ。

①については、クレジットカード、電子マネースマホなどのIC決済システムなど多数の決済システムが存在しており、フィンテックの入り込む余地などない。

クローズアップ現代でも、指紋認証決済で買い物を済ませた利用客が、「さっき買い物したときに小銭をバラバラと落とした。(財布を)出すことなくて良かった」とコメントするシーンがあったが、財布を出すことくらい大した手間ではないし、おサイフケータイでも決済できるだろう。

多くの消費者にとって、決済時の財布の要不要なんて問題ではなく、自分の財布の中身が年々軽くなっていることこそが大きな問題なのではないか。

肝心のお金が無いのに、買い物だけが便利になっても仕方があるまい。

②の家計簿管理や経理処理管理についても、タダで使えるフリーソフトやPOSと連動した自動経理処理ソフトが多数存在しており、大した訴求力はない。

こちらも、管理の出発点たる「所得」や「売上」の確保が先決で、これが十分な水準に達しない限り、毎月増え続ける赤字に溜め息をつくだけになる。

③は、必要ならば複数枚のカードをまとめればよいだけの話で、そもそも、カードを複数所持することによる生活上の支障なんて特段思いつくものはなく、コメントに値するとも思えない。

④は、資金運用というものを一面のみから論じる片手落ちの論考だ。

“AIが個々の属性や資力に沿って最適なポートフォリオを提案できる”と大見得を切っているようだが、この手の世間知らずは、資金を預けてしまえば、黙っていても利殖が叶うと勘違いしている。

資金運用といっても、当たりくじばかりの宝くじを買えるわけではなく、その運用先は必ず実業を担う投資先に行き着き、そういった実業者の事業収益から投資利益を得る仕組みになっている。

よって、実体経済が低迷している限り、投資先が事業活動で十分な利益を上げるのは困難であり、こうした投資環境下で収益を無理強いすれば、他人を出し抜かない限り収益を上げられない単なるババ抜きの世界に陥ってしまう。

AIに資金を預けて、“後は宜しく”と鼻を穿っていると、いつの間にか大赤字をこいて慌てふためくことになるだろう。

また、融資やローンの件も①で指摘したのと同じで、クローズアップ現代では、自転車店を開業するアメリカ人が、フィンテックを使って3,000万円ほどの融資を受けることができたとはしゃぐ様子が紹介されていた。

しかし、その金利たるや5.5~22.8%とかなりの高利で、いわば、信販系の事業性ローンと大差ない水準だ。

この程度の事業性ローンの与信システムなら、既にいくらでも存在している。

我が国でも、銀行系や信販系、リース系の事業者向けローンは数多あり、即日審査で金利も3.0~18%くらいで調達可能であり、個人向けローンも、いまやスマホから気軽に申込できる時代になっている。

このように、わざわざフィンテック云々と大見得を切るまでもなく、便利な決済システムや金融商品を提供するツールがいくらでも揃っており、フィンテック自体に何ら目新しさを感じることはできない。

フィンテックについては、宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士が、東洋経済に寄稿した『フィンテックは、銀行再編を促進させるのか 決済インフラ改革の必要性を問う(H28.2.3)』というコラム(http://toyokeizai.net/articles/-/102863)で、

「現在、日本国内の振り込みは、給与振り込みの口座であったり、預金残高が一定額あったりすれば“無料”であることが多い。しかも、相手の口座に入金されるのも“ほぼ瞬時”である。クレジットカードのおかげで、ネットでの購入も24時間手間なく決済できる。

米国は、小切手社会ということもあるし、日本でいうところの振り込みにも数日かかる。しかも、クレジットカードを持ってない人もいる。(中略)

金融の状況が違うので、海外でフィンテックが発展しているからといって、日本で発展するとは限らない。(後略)」

と指摘し、野放図なフィンテックフィーバーに釘を刺している。

これまでも、Web2.0ユビキタスクラウドファンディング、IoTのように、日経新聞経産省が煽り、一時的なホットワードにはなるものの、その後はパッとしない言葉は掃いて捨てるほどある。

フィンテックも遠からず、「いまとなっては口にするのが恥ずかしいIT・金融用語ベスト10」に間違いなくランクインすることになるだろう。