うずらのブログ

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カネよりも大切なもの

先週、熊本・大分地方を襲った大地震により、40名以上の方がお亡くなりになったほか、1,000名以上の方が負傷され、家屋等の有形資産や公共構造物等の損壊も多数に及んでいる。

お亡くなりになられた方やそのご遺族、被災された方々には、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

また、被災された皆様の生活が一日も早く再建されるよう、お祈りいたしますとともに、微力ながら、できる限りの支援をさせていただきます。

さて、筆者も14日の帰宅後に、最初の地震発生のニュースを聞いたが、“震源が熊本・最大震度が7”と聞いたときは、一瞬耳を疑い、事実を飲み込むことができなかった。

筆者の親族も、一部九州に在住しているが、小さい時から「九州=地震の少ない地域」という固定観念があり、東日本大震災と同レベルの震度7の大地震が、九州の、それも、これまで地震と縁遠かった熊本で発生した、ということがすぐには理解できなかった。

九州といえば、毎年のように台風や大雨による風水害に見舞われることは多いものの、2005年に起った福岡県西方沖地震(被害規模:死者1名、負傷者約1,200名、住家全壊約140棟)以外の地震のニュースを聞くことはなく、“大地震”という言葉と最も縁遠い地域だと勝手に想像していた。

さらに、14日夜の大地震の後に、気象庁が余震に対する注意喚起の呼びかけをしていたのを聞いた時も、これほど大規模な地震の後なら、これまでの事例からして、多少の余震があってもほどなく収束に向かうだろうと高を括っていたが、16日深夜には、M7.3・震度6という大地震が再度現地を襲い、筆者の呑気且ついい加減な経験則はあっさりと否定されてしまった。

熊本地震 倒壊多数、耐震化遅れ 九州「地震なかった」』(産経新聞 4月18日配信)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160418-00000037-san-soci

「「熊本地震」は最大震度7を記録し、家屋が倒壊して住民が下敷きになるなど多数の犠牲者が出た。熊本県益城(ましき)町では、2階建て住宅の1階部分が潰れた家屋のすぐそばに、壁の一部が剥がれた程度の軽微な被害で済んだ住宅も目につく。国土交通省は平成7年の阪神大震災を教訓に家屋の耐震化を進めているが、いまなお全国約900万戸は今回と同規模の地震で倒壊する恐れがあるという。有識者は「九州地方などは対策が遅れていた」とも指摘する。今回の地震震源が比較的浅く、家屋倒壊の危険があるとされる震度6弱以上の地震が17日午後3時までに7回発生した。熊本県建築課によると、県内約68万戸の耐震化率は25年時点で75%。担当者は「それほど悪い数字ではない」と話すが、27年度末までに達成目標としていた90%には到底及ばない数字だ(後略)」

上記の記事では、耐震化が進まない最大の理由は“多額の費用”だと指摘している。

自治体による費用の一部補助制度もあるが、耐震診断には10~20万円かかり、柱や屋根などの耐震改修には、さらに100~200万円も持ち出しが必要になるため、おいそれとは決心できないようだ。

20年以上も続く不況により、ほとんどの国民は収入減少に見舞われており、いつ来るともしれないリスクに備えて100万円ものカネをポンと出せる状態にはない。

地震の少ない地域なら、まず備えるべきは台風や大雨による風水害による被害に対してであり、今回のような大地震が来ることを想像し、対策をしろと言う方が無理だろう。

人命リスクに関する優先度合だけで言えば、経験のない大地震よりも、自宅の軒先に巣食ったスズメバチに刺されるリスクの方が、実際には遥かに高いからだ。

むしろ、地震の少ない熊本県内の耐震化率が75%にも達していることの方に驚かされる。

この水準がもっと低ければ、今回の大地震による被害はさらに深刻なものになっただろう。

先の記事によると耐震化が未着工の住宅は900万戸とのこと。

1戸当たり100万円の費用がかかるとすると、ざっと9兆円程度の予算があれば自己負担なしでほぼ全戸の耐震化が叶う。

このほか、小中学校や病院施設、防災拠点となる公共施設等の耐震化も順次進めていく必要があるものの、住宅の耐震化と合わせても20兆円程度の予算があれば、十分に対応可能だろう。

むろん、財政事情の苦しい自治体の負担割合を増やすのではなく、全額国の支出で賄うべきだ。

災害発生時における住宅の倒壊は、一個人の財産損失の問題に止まらず、災害救助活動の妨げにもなり公益を阻害する要因にもなり得る。

つまり、全国民が一様に直面するかもしれぬリスクに対応する施策なのだから、災害対策特別国債とでも銘打って日銀に引き受けさせておけばよい。

今回の熊本地震では、宇土市本庁舎や熊本市民病院が倒壊寸前まで破壊され、防災対応拠点としての機能を喪失し、被災対応に大きな混乱が生じている。

こうした事態を回避し、国民の生命や財産をある程度守ることができるのなら、たかが20兆円程度の支出を惜しんではなるまい。

不幸にも被災した方々の生活再建費用の全額国庫負担制度の創設にも、ぜひとも着手すべきだ。

国民の生命や財産と予算やカネを天秤にかけて、どちらが重要なのかを議論するよい機会でもあろう。

政府は、TPPとか税と社会保障の一体改革みたいな有害かつ優先度の極めて低い政策にかまけている暇などない。

東日本大震災の教訓を経て提唱された国土強靭化計画を迅速かつ速やかに実行するとともに、個人住宅や公共建造物等の耐震化を一気に進める必要がある。

我が国では、地震だけでなく、毎年のように国土を襲う大規模風水害等により、貴重な人命や財産が失われているが、国土強靭化のような物理的防災対策の強化が叫ばれることはなく、災害物資の確保や避難場所や経路の確認、防災教育の強化などといったソフト支援の強化に多大なコストが割かれているのが実情だ。

ソフト教育も重要な施策だが、一瞬でビルを倒壊させ、山をも切り崩すような大自然の持つ想像を絶する圧倒的なパワーと対峙するには、ソフト力だけではあまりにも心許ない。

大災害に対する物理的な抑制力や保全力だけでなく、災害後の避難拠点や治療拠点としてのハード設備の整備や強化は欠かせない。

今回、2回目に起った大地震による建物倒壊が人々に与えたショックは計り知れない。

特に、熊本のランドマークたる熊本城が無残にも破壊された姿を見て、また、市庁舎や病院といったもしもの時に頼るべき存在が破壊された様を見て、被災地の人々は戦慄し委縮している。

こうした心的ショックは、避難生活により大きなストレスを与え、生活再建に対する意欲を削ぎ、復興にとって大きな足枷となる。

何より迅速さが求められる復興活動において、こうした余計なハンディキャップを背負い込むのは避けるべきだ。

我々が何気なく使っているコンクリート建造物や公共建築物は、自然災害から国民の生命や財産を守る防壁となり、自然災害に打ちひしがれた人々にとって心落ち着ける宿り木となり得る存在なのだ。

遠からぬ将来に発生が予想される南海トラフ地震東海大地震に備えて、やるべきことは山積している。

「コンクリートか、人か」という下らぬ二元論に興じている暇など一秒もない。