うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

サプライサイド信仰という敗着手

日本経済は明らかに下降トレンドを辿っている。

総務省が3月1日に発表した「家計調査報告(H28/1速報)」によると、勤労者世帯の実収入は434,330円と名実ともに前年同月比1.3%減少となり、二人以上の世帯の消費支出も同じく名実ともに3.1%の減少となった。(両指標ともに5ヵ月連続減少)

また、家計消費状況調査(H28/1確報)によると、「婦人用スーツ(対前年同月比9.1%減少)、「自動車(同17.9%減少)」、「パック旅行費(同24.3%減少)」など高額商品への支出減少が目立ち、「インターネット支出額(同17.1%減少)」と頼みの綱であったネットショッピングさえ大幅減に見舞われる始末だ。(ちなみに、ネットショッピング利用世帯の割合も30%の壁を打破できずに低迷を続けている)

これが日経新聞あたりの手に掛かると、“個人消費は一時的な足踏み状態にあるが、急増するインバウンド需要の波及やTPPを睨んだ海外の成長市場の取り込みが見込まれ、引き続き日本経済のファンダメンタルズは堅調だ”と変換されてしまうのだろう。

だが、ここ1年余りで、消費支出が対前年比でプラスに転じたのは、たったの2回だけ(しかも、比較対象の2014年は消費税増税などの影響もあり、そもそも絶対値が低レベル)で、経済動向に呑気な安倍政権も、さすがに経済の不調を認めざるを得なくなったようだ。

3月24日に開かれた第4回経済財政諮問会議の資料でも弱気な表記が目立つ。

内閣府の資料(個人消費の動向について)には、「低所得者層の消費は2013年半ば以降、総じて弱い動き。高所得者層の消費は消費税率引上げ後も底堅く推移してきたが、2015年夏以降は減少傾向で推移している」とあり、有識者(??)議員の提出資料(600兆円経済の実現に向けて)でも、「デフレマインドの払拭に時間を要する中、子育て世代や高齢者を中心に消費を抑制」と、個人消費の不調を渋々認めてはいるが、肝心の分析と対策は、相変わらず見当違いの方向を向いている。

まず、個人消費低迷の原因について、内閣府資料では、「消費者にとって身近な食料品の価格上昇、2015年後半の株価低下による消費者マインド悪化、天候不順の影響が下押しした」と分析し、有識者議員の資料には、「子育て世代にとっては人口減少高齢化の下での負担感の増大や社会保障の持続可能性といった点での先行き不安、高齢者にとっては資産や可処分所得の先行きに対する不安がその背景」にあると結論付けている。

いまさらくどくど説明するまでもなく、株価や天候は個人消費の動向とほとんど関係ない。

株式の個人購入者割合は、どんなに高めに見積もっても、せいぜい1割程度しかおらず、江戸時代以前と違い、カネさえあれば誰でも天候や気候に左右されず買い物ができるからだ。

また、社会保障制度の不安を消費低迷の言い訳にするのも、いまひとつ説得力に欠ける。

勤労者世代の者なら、将来の年金支給額の縮減に対する不安や不満を少なからず抱えており、それが解消されることを誰しもが願っている。

だが、それは数十年先の遠い将来に対する不安であって、待ったなしの状態で迫りくる毎日の家計支出とは別の話だろう。

食費や水道光熱費、家賃、塾の月謝など、日々支払わねばならぬ費用は、将来の財布からではなく、現在の財布から支出せねばならず、年金がどうのこうのという前に、いまの所得が十分かどうかに掛かっているのだ。

家計が財布の紐をきつく締めて支出を渋っているのは、将来に対する不安があるのは無論のこと、現在の所得水準が極めて不十分で、かつ、近い将来の見通し暗いがゆえだろう。

次に、こうした個人消費低迷の打開策について、有識者議員の資料では、「イノベーションや規制改革を通じて、国民が求める新たな財・サービスを生み出すことが重要」とし、健康増進・予防サービス分野、子育て・介護サービス、まちづくり、インバウンドを含む国内外旅行、TPP市場・シルバー市場などが有望市場だと提言している。

さらに、「国民資産の有効活用を通じ、新たな需要を喚起すべき」として、コンパクトシティ、エネルギーの地産地消、中古住宅の市場形成を通じた資産価値向上、空き家の利活用促進、自己財産の寄付等による褒賞等の検討などを挙げているが、いずれも地味で頼りない脇役的な方策ばかりだ。

“国民が求める新たな財・サービスを生み出す”なんて格好の良いことを言っているが、当の国民は、なにも目新しい“新たな財・サービス”がないと嘆いているわけではない。

バカなサプライサイダーは、「市場が成熟し、より高度な商品やサービスを求める消費者ニーズとマッチしていない」なんて、いつもいい加減なことを言うが、世の中には、優れた商品やサービスがいくらでも転がっている。

仮に、サプライサイダーの言うとおり、新たな商品やサービスしか市場に受け容れられないとしたら、現状で市場に出回っている膨大な量の既存の消費やサービスは、すべて不良在庫と化してしまうはずではないか?

家計消費が落ち込んでいるのは、人々が既存の商品やサービスに飽き飽きしているせいではない。

自身の所得や貯蓄があまりにも少な過ぎるせいで、新たな商品やサービスどころではなく、そこら中に転がっている“既存の財・サービス”すら手に入れることが叶わず、そういった厳しい現実に大きな不満を抱いているのだ。

個人消費低迷の原因は、所得不足や雇用の不安定化に起因する需要不足にある」という真実を認めずに、「財布の紐が緩まないのは、国民の潜在ニーズに合う商品やサービスがないからだ」と誤魔化して蜃気楼を追い続けていると、消費はどこまでも落ちて行くことになるだろう。

政府や有識者議員の連中は、家計が十分なフローとストックを保有している状態を前提として、サプライサイド強化の視点から経済を語っているようだが、そういった極めて甘い現状認識こそが、そもそもの間違いを引き起こしていることに、いいかげん気付くべきだ。

サプライサイド信仰に囚われ、濁った眼差しで議論を重ねても、適切なゴールに辿り着けるはずがない。