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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

"ポピュリズム批判"という逃げ口上

米国大統領選予備選挙は過半数の州で投開票を終え、報道のとおり、共和党のトランプ氏と民主党クリントン氏が大きくリードしている。

選挙前まで場末のキワモノ扱いであったトランプ氏は、予備選のスタートこそ躓いたものの、その後は連勝を続けて過半数を制しそうな勢いであり、日本のマスコミでも彼の人物像などを詳しく報じるようになった。

トランプ氏は、「ワシントン・インサイダー」と呼ばれるエスタブリッシュメントへの嫌悪感を露わにし、不法移民やイスラム教徒を激しく罵倒する、はたまた、中国や日本を貿易上のライバルとして糾弾するなど、歯に衣着せぬ言動を見せ、それが大きな支持を獲得している。

彼のような“異物”の出現が、アメリカ大統領選挙の在り方に一石を投じることに興味を惹かれるが、

・このまま共和党予備選挙を勝ち抜けるか

民主党候補者との一騎打ちを制することができるか

・大統領就任後に支持者との約束を果たせるのか

については、皆目見当がつかない。

洋の東西を問わず、政治家という生き物は、得てして、“国民が不満を抱きそうな公約は万難を排して断行しようとするが、国民が望む公約はいろいろな理由を並べて避けたがる”ものだから、トランプ氏が、要職に就いた後も、アメリカ国民の利益を守ろうとする行動に出るかどうかは判らない。

多くのマスコミは、トランプ氏の支持拡大の要因として、行き過ぎた新自由主義による所得格差拡大や過度な開放政策に伴う移民増加や資本流出による雇用の崩壊、イスラム過激派が引き起こす無差別テロへの弱腰な対応などを挙げ、これらを激烈に批判するトランプ氏に対して、扇動者、ポピュリストといった厳しい非難を浴びせている。

アメリカ経済は、2009年から2015年にかけて名目GDPで年平均4%以上成長し、その間の失業率も10%から5%台へ改善しており、成長を忘れた我が国から見れば羨ましい限りだが、見た目の数値以上に、個々の雇用環境や所得条件は改善しておらず、国民は強い不満を抱えているのだろう。

マスコミは、トランプ旋風は同氏に対する積極的な支持ではなく、行き場を失った政治への不満や憤りがトランプ氏に集約されたものと分析しているが、だとしたら、こうした不満の受け皿を用意できなかった他の候補者は自らの不明を恥じるべきだ。

トランプ氏の言動を非難する者は、“米国の労働者が不法移民に職を奪われているのだとすれば、彼らを国外退去させよう。不法移民の流入を阻止するためにメキシコとの国境にメキシコ側の負担で壁を建設させよう。イスラム過激派のテロを防止するためには当面イスラム教徒の入国を拒否しよう。テロリストには拷問も必要だしその家族を殺害することも許される”といった彼の言動を指して“幼稚なポピュリズム”だと愚弄する。

ポピュリズムとは、「政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動」(知恵蔵2015)というネガティブな意味で用いられることが多い。

だが、日本人が羨むほどの経済成長を遂げているアメリカの国民ですら、個々に対する所得分配は乏しく、社会格差は拡大(というより、中下位層が一方的に没落)し、雇用や所得の行く末に強い不安や不満を抱いており、既存の政治にNOを突き付けている。

こうした国民の素直な感情を切り捨てるのに最も便利な言葉が、“ポピュリズム”という言葉であり、国民の政治的ニーズを無視するための免罪符として使われてきた。

だが、“ポピュリズム”には、『民衆の利益が政治に反映されるべきという政治的立場を指す』(はてなキーワード)というポジティブな意味合いもあることを忘れてはならない。

そもそも、社会やそれを運営するための政治という仕組みが何のために存在しているのかに思いを馳せれば、国民や民衆の利益を反映しない政治など有り得ない。

国民や団体からの種々雑多な利益同士がぶつかり合い、齟齬や衝突が生じることもあろうが、それを調整するのが政治の果たす役割の一つである。

しかし、新自由主義思考に染まった政治家は、こうした調整行為を忌み嫌い、初動の段階で国民や団体の利益を汲み取ること自体を拒絶している。

新自由主義者の連中は、減税や社会保障の充実などといった大衆のニーズに沿った政策が議論の俎上に上るのを避けるために、先ずは国の財政問題や構造改革などを盾にし、それが突破されると、“ポピュリズム”や“大衆迎合”、“旧来型の政治手法”などといったボヤッとした言葉を持ち出し、マスコミを扇動して、こうした要求を撃退してしまう。

選挙前の世論調査でいつも上位を占める「景気を回復させてほしい」、「社会保障を充実させてほしい」という要望が無視され続けるのは、こうした背景があるからだ。

この手の幼稚なバカ者は、“痛みを伴う政策を敢えて断行するのが真の政治家だ”と公言それ以上して憚らず、何かと言えば、ポピュリズムだ、大衆迎合だと斜に構えて批判ばかりしているが、そもそも国民の利益に直結しない政策なんて何の意味もなく、単なる害悪でしかない。

“政策”というものは、社会や国民の公益や利益を拡大させるためのものだから、国民との利益相反があってはならない。

よしんば、いまの安倍政権のように、一部の企業や外国の利益ばかり追求するような政策などもってのほかだろう。

政治のプロを気取って、トランプ氏の言動をせせら笑う暇があれば、それ以上に国民の利益に適う政策を打ち出し、堂々と政策論争すべきだ。

そうした努力もせずに、ポピュリズムだの、理想論だのと逃げ回るばかりでは卑怯者の誹りを免れまい。