うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

貸出動向への過剰な期待

このところ、空振りばかり目立つ日銀の量的緩和政策だが、使い勝手が良いと考える変わり者が、未だにいるようだ。

『今年前半にも追加緩和=消費増税10%凍結を―本田内閣参与』

時事通信 3月15日(火)0時46分配信)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160315-00000000-jij-pol

記事によると、本田参与は、来年4月からの消費税率引き上げの凍結を訴えるとともに、今年前半の追加緩和実施を示唆し、一例として、日銀当座預金の一部金利を現在のマイナス0.1%から同0.2%に引き下げ、国債の買い増しペースを現在の年間80兆円から90兆円に拡大する案を挙げたそうだ。

消費税率引上げの凍結は当然のことであり、あらゆる経済指標の冴えない結果を素直に見れば、凍結を通り越して、減税や消費税自体の凍結・廃止にまで踏み込んで議論すべきだろう。

一方で、マイナス金利を軸とするこれ以上の追加緩和政策が、経済のファンダメンタルズに良い影響を及ぼすことができるか、と問われれば、日銀の国債買取り額増加による国債の実質無効化が進むこと以外に大したメリットはない。

既に様々な論者がしているとおり、黒田バズーカ以前も含めて、日銀の量的緩和政策が、実体経済に刺激と実弾を与えて、それに起因するディマンド・プル型の景気回復や金融機関の貸出額増加につながった証拠は何も残っていない。

ここ数年来、金融機関の貸出残高は、前年対比2~3%程度の伸びを示しているが、貸出金利の平均値は下落傾向にある。(H25/1.258%H27/12/1.110%)

仮に、前向きな資金需要が増えているのなら、いくら量的緩和政策が採られているとはいえ、政策金利自体はほとんど変化しておらず、もっと強気な金利設定になっても良いはずだ。

だが、現実には金利はダダ下り状態にあり、金融機関の収益環境は依然として厳しいままだ。

金融機関としては、新規貸出先の開拓や既存融資先への貸増しを狙い、日々営業をかけているが、好条件での融資が叶わず、いきおい金利ダンピング合戦になっていることが窺える。

つまり、貸出額の増加は、企業や家計の前向きな資金需要(返済能力に問題のない貸出)に支えられたものではなく、バブル期のような金融機関側からの提案型営業により創られた数字だと考えている。

本田参与は、マイナス金利幅を大きくし、金融機関にプレッシャーを掛ければ、自然と貸出が増えて、投資や消費の活発化や景気回復につながる、と思い込んでいるようだが、それが単なる夢想に過ぎないことは、初回のマイナス金利導入後の指標を見れば、直ぐに解かることだ。

貸出増加の隘路になっている金利水準のターニングポイントが、0.1%という金利水準とイコールになっているのなら、0.2%への引下げが劇的な効果を生むかもしれないが、そうではなかろう。

マイナス金利で金融機関に脅しをかけても、却って金融市場の混乱を招くだけで何の効果もない。

貸出動向と実体経済の関係は、季節と動物や昆虫との関係に似ている。

気候が温暖になり、草木が芽吹き始めるから、動物や昆虫が冬眠から目覚めたり卵から孵ったりするのであって、春が待ち遠しいからといって、冬眠中の動物を無理やり叩き起こしても春はやって来ないのと同じことだ。

金融機関が貸出を増やそうとして、企業や家計が欲してもいないカネを無理やり貸し込んだところで、投資や消費が活発化するはずがない。

実態とかけ離れた商品市況や不動産市況の高騰を招き、不良債権の山を築くだけのことだ。

金融政策の一本足打法実体経済に絶大な効果をもたらすと本気で信じ込んでいるバカも多くいるが、小手先の対策に右往左往するから、そのような初歩的な間違いを犯すのだろう。

貸出(融資)は、企業や家計にとっては、“時間や期間の短縮と引き換えに抱え込む債務”でしかない。

その上、利息まで取られるのだから、生半可な気持ちで手を出せる代物ではない。

きちんと返済することを考えれば、確度の高い事業収益や所得の裏打ちが必要になるが、それらを担保するのは、実体経済に存在する事業機会や収益機会の多寡であり、そもそも金融政策で生み出せる類いのものではない。

財政政策を通じて雇用や事業機会を創出し、実体経済に所得や消費に直結する資金を投じてあげぬ限り、投資や消費は低迷を続け、経済の体温が上がることはない。

日銀が3ヶ月ごとに実施している「生活意識に関するアンケート調査― 2015年12月調査 ―」(第64回)の結果を見ると、景況感・暮らし向き・消費意識・物価に対する実感等の各項目で、景気が極めて低いレベルで踊り場に差し掛かっていることが窺えるが、ひとつ気になる結果もあった。

それは、物価下落についての感想で、他の回答が、前回、前々回と比べて大きく変化していないのに対して、この項目だけ大きく変化しているのだ。

(物価下落が)[どちらかと言えば、好ましいことだ]という回答が、前々回16.7% 前回23.8% 今回52.4%と劇的に増えている。

政府や日銀首脳陣は「日本経済のファンダメンタルは引き続き堅調だ」なんて寝惚けたことを言っているが、多くの家計は、収入が思ったように伸びないことに強い焦りや憤りを感じており、物価上昇に対する忌避感が急速に高まっているようだ。

物価上昇目標を掲げる日銀の金融緩和政策を頭ごなしに否定する意見が急増している中で、これ以上、黒田バズーカを撃ち続けても、経済に対する期待を高めることは到底出来まい。

財政政策という効き目の強い実弾を込めない限り、バズーカ砲を撃つ意味合いはない。

“金融ごっこ”にうつつを抜かすのではなく、実需を喚起できる骨太の経済政策を実行に移すべきだ。