うずらのブログ

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正規雇用と非正規雇用の対立を煽る働き方改革は失敗に終わる

安倍内閣が設置した『一億総活躍国民会議』では、新三本の矢の一環として、一見、女性・若者・高齢者・障害者等の活躍促進や働き方改革などが真面目に議論されているように映る。

国民会議の資料には、「長時間労働の是正」、「非正規労働者の待遇改善」、「高齢者雇用の促進」などといった耳障りの良いキーワードが躍っているが、大した対策が提言されているわけではない。

元々、会議の構成メンバーが、功成り名を遂げた新自由主義者財政再建派の連中ばかりだから、実社会の弊害を打破するような提言が出てくると期待する方が間違っている。

そもそも、長時間労働の是正や非正規雇用の待遇改善なんてものは、経営者サイドの都合で生み出された問題であり、それこそ、安倍氏のお友達である経団連の役立たず共に、早急なる是正を命じればよいだけだ。

高齢所雇用については、若者の雇用やポストを奪うだけで、却って労働市場の停滞を招いている。

プライドばかり高くて実践的なスキルに欠ける高齢者には、60歳から年金を支給するようにし、大人しく消費者としての役割を果たしておればよい。

また、長時間労働は、労基法という立派な法律があるのだから、それをきちんと適用すればよいだけの話で、わざわざ、会議を開いて論じる必要などない。

むしろ、会議開催が、長時間労働放置の言い訳に利用されていないか?

いまのところ、この会議は、マスコミ受けが良いためか、厳しい批判も受けておらず、安倍氏氏も調子に乗った発言が目立つ。

平成28年1月26日(火) 衆議院本会議では、「女性や若者などの多様な働き方の選択を広げるためには、非正規雇用で働く方の待遇改善を更に徹底していく必要があり、働き方改革として、ニッポン一億総活躍プランでは同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と答弁し、正規雇用の弱体化を財源とする非正規雇用救済の方針を打ち出した。

この不況下で、「同一労働同一賃金」の意味を“低きを高きに合わせる”と理解する者は、恐らくいないだろう。

“高きを削り、その内のいくばくかを低きに分配する”という具合になることは目に見えている。

いまや、国内労働者の6割にまで減らされた正規雇用労働者をさらに鞭打つような仕打ちだが、非正規雇用の待遇改善の美名の前に、同一労働同一賃金に対して大声で反発する者は意外と少ない。

そして、非正規と正規の融合を隠れ蓑に、両者の対立や分断を煽る記事もある。

『視点:正規・非正規雇用の分断こそ日本の弱点~ビル・エモット(英エコノミスト誌元編集長)~』

[ロイター:2016年 01月 27日]

http://jp.reuters.com/article/view-bill-emmott-job-idJPKCN0V50PE?rpc=122&sp=true

エモット氏のコラムを要約すると、次のようになる。

・日本の経済発展と社会調和にとって最大の障害は、約60%のインサイダー(正規雇用労働者)と約40%のアウトサイダー非正規雇用労働者、多くはパートタイマー)との分断にある。

・労働法制を調整し、インサイダーの雇用保障レベルを下げて、パートタイムに関係なく、働くすべての人が同等の雇用保障とベネフィットを受けられるようにする必要がある。

アウトサイダーの権利を向上させることは、インサイダーの権利を引き下げるのと同じくらい重要だ。

労働市場の分断を解決しなければ、日本は家計需要の慢性的な低迷、生産性上昇の停滞に悩まされ続けるだろう。

・日本経済が完全雇用状態にあり、現実として労働力不足に直面しているにもかかわらず、このアウトサイダーの人的資本の劣化と家計需要の低迷が継続しており、労働制度改革が喫緊の課題だ。

完全雇用と労働力不足の状況下では、改革に伴う社会的な痛みは小さく済む。

ひとことで言って、“現実を知らぬ単なるバカの戯れ言”である。

エモット氏は、家計需要の慢性的な低迷をアウトサイダー非正規雇用労働者)の劣悪な待遇のせいだと言いながら、その解決策として、インサイダー(正規雇用労働者)からの実質的な所得移転を提案している。

だが、マクロ視点で見れば、労働者間の所得移転が起きるだけで、家計所得の総量は変わらないため、プラス効果はまず見込めない。

それどころか、いわれのない待遇低下を強要されたインサイダーは支出を減らさざるを得ず、その労働意欲はますます低下し、当然、労働生産性も落ち込むだろう。

また、アウトサイダーにとっても、インサイダーからの中途半端な額の所得移転程度では、思い切って消費支出を増やせるほどの所得額には到底達することはなく、財布の紐は固いままの状態が続き、全体としての消費総額は間違いなく減ることになる。

エモット氏も、エコノミスト誌の元編集長の肩書を持ちながら、所詮はマクロ視点で経済を俯瞰することができない“蛸壺エコノミスト”の一人に過ぎない。

インサイダーとアウトサイダーを無理やりトレード・オフの関係に置き、両者を対立項として捉えることで、インサイダー(正規雇用労働者)制度を破壊し、その待遇の切り下げを狙う魂胆が丸見えだ。

エモット氏は、日本が完全雇用で慢性的な労働者不足の状態にあるなどと寝惚けたことを言っているが、我が国は、潜在的な者を含めて数百万人もの失業者を抱えており、多くの労働者や若者が職に溢れて苦しんでいる。

巷間囁かれている人手不足なんて、「低賃金でも文句を言わずに長時間働いてくれる都合の良い人が見つからない」というだけの話で、バブル期のような売り手市場とは色合いが全く異なっている。

彼の吐く“改革に伴う社会的な痛みは小さく済む”というセリフは、いかにも軽薄で無責任過ぎる。

日本人は、この手の無責任な煽情に釣られて、20年近くも、改革に伴う激痛に苦しみ続けてきたのだ。

エモット氏は、政府や経営者層の歓心を買おうと尻尾を振るような賤しい行為を厳に慎むべきだろう。

「改革」とか「変革」という言葉を安易に連呼する新自由主義者の甘言に乗ってはならない。

彼らが狙うのは、労働市場の破壊と労働者の待遇の切り下げによる生産コストの抑制でしかない。

非正規雇用労働者の待遇改善は、一般の労働者ではなく、政府や経営者層に課された喫緊の責務であり、政府による適切な経済政策と経営者による雇用環境の改善への取組みによって乗り切るべき類いの問題である。