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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

異常なのは、正社員を否定するバカの頭の中

世の中に頭のおかしな連中が絶えることはない。

問題なのは、頭脳や倫理感のレベルに問題のある人物が、どうした訳か、社会的に高い立場に居座り、有害な情報を自由かつ強力に発信できる点にある。

今回も、現状認識が全くできていない自称知識人の赤点コラムを紹介したい。

『「同一労働・同一賃金」は実現できるのか 問題は「正社員」をなくす雇用の自由化だ』

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46188

(2016.2.26(金) 池田 信夫/JB PRESS記事より)

詳しくは、上記のURLをご参照いただきたいが、彼の主張はコラム後段の下記部分に集約されている。

「もう全員の雇用を保証できる時代ではない。雇用維持にこだわっていては企業が消滅し、全員の雇用が失われるのだ。脱熟練化して定型化した職務は途上国にアウトソースされ、コンピュータに置き換えられる。これからのサービス業では、非定型的なスキルが重要だ。

(中略)

スマートフォンなどのITで維持される時代になるだろう。労働者は会社に囲い込まれないで自由に働き、能力の発揮できる職場に移動する時代になる。

 そこでは同一労働とか同一賃金とかいう概念に意味がなくなり、労働者は個人事業者として他人にないスキルで競争する。政府がやるべきなのは賃金規制ではなく、正社員という時代錯誤の雇用形態をなくし、自由な働き方を可能にする雇用規制の改革である』

こうしたコンピュータ万能論者を本気で騙る連中は、昔のロボットアニメの見過ぎではなかろうか。

大型コンピュータに質問すると、ポンッと正解を出してくれたり、あらゆる生産活動を機械やコンピュータが代行してくれたりする世界を空想するのは、いい加減、小学生辺りまでで卒業してもらいたい。

リアルな世界で働いている者なら解かるはずだが、サラリーマン社会を覆う複雑怪奇な労働行為が、すべてコンピュータやスマホに取って代わられることなんて永遠にない。

社内政治や取引先や関係機関との面倒くさい調整に労力の大半を削がれる身としては、こうした面倒事を、ぜひ、コンピュータに代行してもらいたいものだが、ICチップが上司や他部署との根回しをやってくれる日が来ることはあるまい。

池田氏のコラムで聞き捨てならないのは、“もう全員の雇用を保証できる時代ではない。雇用維持にこだわっていては企業が消滅し、全員の雇用が失われる”という「日本経済沈没船論』を振りかざし、経済成長を放棄している点だ。

氏は、コラムの中で、「正社員」という雇用形態は“異常”だと断じたうえで、欧州の雇用形態を引き合いに出し、非正規社員やパートの給与を正社員並みに引き上げると企業が持たないと言い訳している。

日本経済自体が成長を止めて現状維持を続ける、あるいは、衰退トレンドを辿らざるを得ないと諦めてしまうヤル気のない人間にとっては、人件費は単なるコストでしかなく、正社員を排して“社員の総パート化”こそ理想の世界なのだろう。

だが、“自由な働き方を可能にする雇用規制の改革”というくだらぬスローガンの下に、正社員制度を無くし、雇用の流動化を進めてしまうと、恐らく、学問・学歴・研究等に対するインセンティブや労働モラルは限りなく低下し、日本の知的水準は地に堕ちるだろう。

いつクビになるのか判らぬ職場で真面目に働く者はいない。

普通の神経の持ち主なら、長期雇用の保証がなく昇給やポストも不安定な職場に、わざわざ心血を注いで尽くす義理も必要性もない、と考えるのが当然で、労働者は、絶えず次の職場に自分を高く売り込むことに熱中し、情報漏えい、顧客リストや基幹技術情報の持ち逃げ、目先の成績アップのための度を越したパワハラなどの弊害が横行することは目に見えている。

また、安定雇用が確保されないと、住宅や車、教育ローンなどの長期与信を受けることができなくなり、日本経済に大打撃を与えることになるが、池田氏は、こうした問題をきちんと認識したうえで発言しているのだろうか?

ちなみに、独立行政法人労働政策研究・研修機構による「正社員の労働負荷と職場の現状に関する調査」では、転職希望者の希望する雇用形態の問いでは、男性で96.8%、女性で87.7%、合計92.1%が正社員を望むと回答している。

http://www.jil.go.jp/institute/research/2015/documents/0136.pdf#page=103

働く者の大半が正社員の身分を望んでいる社会に向かって、「正社員という雇用形態は異常だ」と叫んでも、そんなバカの意見に耳を傾ける者はいないだろう。

また、氏はコラムの中で、 “ヨーロッパで同一賃金が実現しているのは、職務や勤務地が契約で決まっている職務給になっている場合で、経営者などは職務が特定されていないので、同一賃金にはならない”と詭弁を弄し、経営者の権益だけを特別扱いしているが、これも間違いだらけの卑怯な話だ。

日本の多くのサラリーマンは、職務や勤務地の決め事が極めて曖昧で、本来の業務分掌外の仕事を平気で押し付けられたり、辞令一つで簡単に異動や単身赴任を命じられたりすることは日常茶飯事で、欧州のように呑気な職務給制度など全く当て嵌まらない。

よって、経営者は職務が特定できないから同一賃金にはならない、なんていうのは単なる詭弁の類いでしかない。

労働者に正社員のイスすら与えられない無能な経営者は、そもそも経営に携わる資格がないのだ。

正社員という雇用形態は異常だなどと泣き言をいうのなら、経営者層こそ同一労働同一賃金の範を垂れるべきだ。

リストラばかりやって十億円以上もの報酬を得ているとある自動車会社の経営者とか、無茶な値上げをして売上ダウンを食らった時流を読み切れないとある衣料品メーカーの経営者こそ、そこいらの町工場やふとん屋の社長と同一賃金にすべきだろう。

さらに、新自由主義に染まりきった低レベルのコラムしか書けぬ自称評論家のギャラも、駆け出しのコラムニストと同一賃金にすべきではないか。