うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

成長戦略という麻薬

今年1月28日に閣議決定された「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(経済財政諮問会議提出資料)」には、「今後の経済財政運営に当たっては、これまでのアベノミクスの成果の上に、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を双方共に更に前進させる」と明記されている。

既に、過去のエントリーで何度か触れたが、ひたすら「経済成長・デフレ脱却・所得の向上」に邁進すべきこの時期に、“財政健全化”という文言を経済方針に盛り込むこと自体がご法度だろう。

上記のペーパーでは、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」の二兎を追う総花的な方針を謳っている。

しかし、前半部分を担保するのは、小学生が書いた標語のような例の新三本の矢(「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」)と一億層活躍社会、TPP対策、生産性革命、ローカル・アベノミクスという数値の裏付けが一切ない空想ばかりで、はなはだ心許ない。(というより、200%不成功に終わるだろう)

一方、後半部分の財政健全化の方は、“「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に沿って、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016~2018年度(平成28~30年度))を「集中改革期間」と位置づけ、2018年度(平成30年度)の国・地方の基礎的財政収支赤字の対GDP比▲1%程度を目安として、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進する”と、時期や数値にがっちりと縛りを加えている。

これを見れば、安倍政権や与党の経済方針が、成長や分配よりも、財政健全化や財政再建(=緊縮財政)により大きなウェートを置いていることが解かる。

前半の「デフレ脱却・経済再生」という文言は、あくまで、国民向けのポーズでしかなく、後半の「財政健全化」こそ目標の本丸なのだ。

財政健全化は国民が反対しづらいスローガンだが、無駄の削減や緊縮財政を以って経済運営に当たると、実体経済への悪影響が避けられず、必ず中小企業や国民から不平不満が噴出する。

そうした不満を抑えたり、目を反らしたり役目を果たすのが、生産性革命とか成長戦略といったボヤッとした殺し文句であり、“景気を何とかしてほしいけど、国の借金が増えるのも困る”と考える勉強不足の国民には結構効き目があるものだ。

先日も、新聞の読者投書欄を眺めていると、日銀のマイナス金利政策を批判する傍らで、“日本経済に財政金融政策の麻薬漬けは不要、地域に新しい産業と雇用を生む具体的な産業戦略と政策が必要”だという70代後半の老人からの投書があった。

だいたい、新聞の投書欄は、反原発とか行政の無駄の削減を訴えるものばかりで、この手の駄文を目にするのは珍しくもないが、長期不況を経てもなお、庶民の一般的な発想のレベルはこの程度かと思うと、大きな溜め息をつきたくなる。

世論調査のたびに、多くの国民から、“景気を良くしてほしい”、“雇用を何とかしてほしい”という声が上がるが、いったい、国民は「景気や雇用」の意味をどこまで理解しているのだろうか?

かの投書老人のように、財政金融政策を麻薬と蔑み、これ以上国の借金は増やせない、日本を救うには(中身はよく解からないけど…)“成長戦略”しかない、と妄信するバカ者はあちこちにいる、というより、国民の大半が同じ症状を患っているのが現実だ。

この手の改革真理教の信徒たちは、民尊官卑の発想に凝り固まっており、民間のポテンシャルがフルに発揮されれば不況なんてすぐに克服できると高を括っている。

しかも、不況の原因は、旧態依然とした商慣習やグローバル化の波に乗り遅れたせい、あるいは、行政の無駄遣いや少子高齢化のせいだ、と的外れな論理展開を平気で行うから呆れるよりほかない。

経済活動の起点が、家計の労働力を活用した企業の生産活動やサービスの提供活動だとすれば、それを上手く循環させるには、需要の存在が欠かせないことくらい直ぐに解かるはずだ。

買い手が存在しなければ、生産物はすべて不良在庫化し、経済活動は一歩目で躓いてしまう。

財政金融政策を遠ざけ、成長戦略という張子の虎に頼ろうとする愚か者には、「いったい、何を需要の財源とするつもりか?」と問い質したい。

企業が生産したモノやサービスを購入する際の対価は“通貨”以外に有り得ず、「戦略や政策」を受け取って満足する企業なんて存在しない。

実際に経済を動かすには絶対に通貨が必要であり、それを創造し、実体経済に広く流通させる役割を果たせるのは、財政金融政策をおいて他にない。

戦略なんか立てたところで、裏付けとなる予算措置がなければ、所詮は絵に描いたモチに終わってしまうし、そもそも、商売経験のない官僚が作った戦略なんて上手く行くはずがなかろう。

成長戦略こそ景気回復の切り札だと自信を持って言えるなら、それが通貨増発を促し、実体経済の活発化をもたらすまでのプロセスを具体的に説明すべきだ。

景気回復を願いながら財政金融政策を麻薬呼ばわりするのは、まさに不届き至極な行為であり、絶食を続けて健康体を手に入れようとするようなものだ。

多くの国民は、「国債は国の借金だ」、「巨額の国債を抱える日本経済は破綻する」、「日本はもう成長できない」という紛い物のデタラメを信じて、真っ先に着手すべき財政金融政策を禁じ手と断じる初歩的なミスから、いつまでも抜け出せないでいる。

このように、自ら成長の意思を放棄する怠惰な思考に安住する国民は、身体に良い食べ物や薬を拒絶して、怪しげなラベルが貼られた毒に手を出そうとしている。

“麻薬漬け”になっているのは、こうした正常な判断能力を失ったバカ者の方だろう。