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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

マイナス金利という墜落必至の最後の矢

本日の日銀金融政策決定会合で、マイナス金利導入という奇策が発表されたことを受けて、東証株価は乱高下し、新発10年物国債の利回りが0.135%を付けて過去最低水準を大幅に更新する動きもあった。

『日銀、マイナス金利導入 当座預金に0.1%手数料、物価目標達成は先送り』

産経新聞 1月29日(金)12時42分配信)

“日銀は29日、金融政策決定会合を開き、追加緩和策として、民間銀行が日銀に預けている一部の資金に0.1%の手数料を課す「マイナス金利」を導入することを決めた。追加緩和策の導入で、原油安や新興国経済の失速を受けて企業が投資に慎重になるのを防ぐ。米国の利上げで新興国からの資金流出が懸念される中、日銀は投資家の不安解消も狙う。”

日銀HPでは、今回のマイナス金利導入について次のような説明がなされている。

・金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。

・具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。

・貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび共通担保資金供給は、ゼロ金利で実施する。

さらに、「本日の決定のポイント」なる資料を付して、マイナス金利導入の意図や懸念に対する回答を掲載している。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129b.pdf

マイナス金利導入といっても、日銀当座預金の残高全てにマイナス金利が適用されるわけではない。

下記のサイトを参照すれば解かるように、基礎残高部分(従来どおり+0.1%)、マクロ加算残高部分(0%)、政策金利残高部分(0.1%マイナス金利適用)という3階層に分けて適用するようだ。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129a.pdf

今回の決定の意図について、日銀は、「こうしたリスク(=原油価格下落や新興国・資源国経済の不透明感による金融市場の不安定化)の顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することとした。日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく。」と説明している。

しかし、マイナス金利が、グローバルマーケットの動揺や需要低下によるデフレ化の特効薬と成り得るという説明としては、あまりに弱く、根拠に乏しい。

日銀は、もっと正直に本音を語るべきだろう。

3階層制を採用するとはいえ、マイナス金利の導入により、明らかに、金融サイドから日銀への国債売却のインセンティブは弱まるはずだ。

いくら金融緩和して資金をブタ積みしても十分には融資が増えない(対前年比3%くらいは増えているのだが…)現状に業を煮やし、金融機関に対してより強い貸出増加圧力をかけたいだけのことだろう。

金融機関が、当座預金に資金を遊ばせておけないような環境を創れば、金貸し屋の連中も、必死に融資先を探さざるを得ないだろう、といった程度のノリだろうと推測する。

先に紹介した「本日の決定のポイント」にも、マイナス金利導入に対する懸念とそれらに対する日銀の回答がつらつらと羅列されているが、マイナス金利が市場の動きに好影響を与えるのでは、といった趣旨の質問が全く載っていない。

要するに、誰もがその効果を疑っているのだ。

三井住友信託銀行の「欧州マイナス金利の伝播と功罪」というレポートでも、マイナス金利の先輩たる欧州では、“ユーロ安や政府債務の利払い負担軽減につながる一方で、異例な水準への低下は、各国財政の信用力を反映されるはずの価格発見機能に歪みが生じている恐れがある”と報告され、実体経済には大した効果をもたらすことはできなかったようだ。

http://www.smtb.jp/others/report/economy/37_3.pdf

どうも、金融政策サイドの効能を過大評価しがちな連中は、物価が上がれば景気が良くなるはず、という思い込みと同様に、融資が伸びさえすれば景気が良くなると勘違いしている。

これらは、原因と結果を混同した初歩的な勘違いなのだが、本人たちは大真面目だから手に負えない。

家計や企業の所得や収入が伸び、長期的な成長予想が確立されることで消費や投資意欲が向上し、需要不足が解消され景気が回復する。

その過程で融資への需要も増えるだろうし、物価上昇を許容できる素地も生まれるのだ。

ところが、リフレ派の連中は、こうした経済循環の発生順序を蔑ろにし、物価目標さえ達成すればよい、融資さえ増えればよいと主客逆転した主張を平気な顔で行い、コストプッシュ型のインフレに苦しむ中小企業や家計を尻目に、景気は力強く回復しているとかアベノミクスの成果は着実に表れているといった詭弁で誤魔化そうとしている。

今回のマイナス金利導入についても、彼らは最大限擁護し、称賛を浴びせることは想像に難くないが、ほぼ間違いなく、大した効果も上げられぬまま終わるだろう。

むしろ、国債買入の阻害要因となり、またぞろ、くだらぬ国債危機論を誘発しかねないと危惧している。

もはや、金融政策のみの一本足打法でマクロ経済の停滞感を打破できる、と夢想して済む段階ではない。

リフレ派は、いま打つべき経済政策が、自らの解決能力を超える範疇にあることを自覚し、強力な財政政策のサポートを要請すべきだろう。

黒田総裁の面目やプライドと日本経済とを天秤にかければ、どちらが重要かくらい、すぐに答えが出るはずだ。