うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

期待と不安を分けるもの

『インフレ期待低下続けば金利見通し再考=米セントルイス連銀総裁』

“米セントルイス地区連銀のブラード総裁は、米経済は引き続き健全な軌道にあるものの、継続的なインフレ期待の低下により、自身の金利見通しを見直す可能性があるとの認識を示した。(2016年1月15日ロイター記事)”

昨今の中国をはじめとする新興諸国経済の変調を受け、さしもの米国も、利上げに対する自信が揺らいでいるようだ。

さて、我が国の金融当局の動きだが、物価目標2%達成に苦労していることを認めつつも、経済環境の変化を認めようとはせずに、相変わらず景気動向や物価そのものには強気な見方をしている。

“日銀は12日、黒田東彦総裁がパリで予定していた講演の準備原稿を公表した。デフレマインドを転換するには中央銀行の断固たる決意が必要と強調している。

日銀が現在進めている大胆な金融緩和である「量的・質的緩和(QQE)」について、「所期の効果を発揮しており、物価の基調は着実に改善している」と強調。「生鮮食品とエネルギーを除いたCPIの上昇率は26カ月連続してプラスとなっており11月に1.2%となった」と指摘。

その上で「2%目標達成に向けた取り組みは依然として途半ば」とし、「人々の間に染み付いたデフレマインドを転換するのは簡単ではないが、誰かが断固たる決意を持って行動しなければならない。問題が物価である以上、その役割を果たすのは中央銀行だ」と言い切った。

日本とユーロ圏の金融政策については、「近い将来に」成功することを確信していると強調。(2016年1月12日ロイター記事)”

黒田総裁は金融緩和政策の成功を確信していると強弁したいようだが、「近い将来」とやらが訪れる可能性は(少なくとも在任中は)限りなくゼロに近いだろう。

量的金融緩和を主軸とするインフレ・ターゲット政策の狙いは、日銀が国債ETFREIT等のリスク商品を市場から購入して金融市場等にマネーを大量に供給することで生じる

金利の長期的な低下予想による時間軸効果

・金融システムの安定化

ポートフォリオ・リバランス効果(金融機関の自発的な投融資活性化)

・為替の円安効果

・金融資産等の価格押し上げ効果

等といった効果により家計や企業に「インフレ期待(実質金利の低下)」を発生させて消費や投資意欲を刺激する、という点にある。

インフレ・ターゲット政策の成否を握るのは、ひとえに、インフレ期待を生じさせることができるか、という点に集約される。

「インフレ期待」の定義を調べると、

インフレーションの傾向がある期間続くと,今後もそれが持続するものと想定して経済主体が行動するようになること。実体経済の正常な活動を阻害する働きがある。(三省堂大辞林より)”という説明がなされている。

これを読んで筆者も意外に感じたのだが、継続的なインフレを想定して経済主体(家計や企業等)が取る行為が、あくまで、「行動する」としか記されていないのだ。

インフレ“期待”というくらいだから、当然、経済主体は前向きに行動するはずと思い込んでいたが、「行動する」という表現を使い、それが前向きなのか、後ろ向きなのか明言を避けている。

さらに、説明文では、「実体経済の正常な活動を阻害する働きがある」とかなり否定的なニュアンスまで用いているが、リフレ派の連中がこれを読んだら激怒するのではないか?

大辞林が、上記の否定的なニュアンスを使ったのは、単純に、物価上昇を悪だと決めつける旧来の発想によるものだろうが、経済政策に興味を持たない大多数の国民の気持ちを代弁したものとも言える。

長期的かつ持続的なインフレ予想は、それが、所得や収益の増加に後押しされたディマンドプル型のものであればよいが、輸入物価等の価格高騰に起因するコストプッシュ型のものであれば、人々はインフレに対して否定的な感情しか抱けず、そこの生じるのは「インフレ期待」ではなく「インフレ不安」だろう。

インフレ予想がもたらすのは、果たして、「期待」か「不安」か、その結果を左右する分水嶺となるのは、経済主体の所得や収益が増えるか否か、つまり、実際に財布の中身が増え、これからも増えるだろうという未来を確信できるか、という点に尽きる。

巷には、金融緩和政策を指して、「お金を刷ってバラまいている」かのように喧伝する輩がおり、当のリフレ派も、緩和政策が実体経済に強い影響を及ぼせるかのように装えるため、殊更それを注意することなく都合よくスルーしているが、そういった表現は全くの誤りである。

金融緩和政策は、世の中(実体経済)にお金をバラまいてなどいない。

単に、金融市場で国債や債券を現金と両替しているだけに過ぎず、そこで両替されたお金が、家計や企業の所得になって実体経済へ直接的に出ていく訳ではない。

だからこそ、金融緩和政策の一本足打法ではダメなのだ。

いまやるべきことは、バラマキを否定することではなく、その逆である。

大規模かつ長期的な財政金融政策により、実体経済に消費や投資に使えるお金をバラまき、小学生でも実感できるくらい明確なインフレ期待を生じさせることだろう。

日頃は、清廉潔白なツラをして「行政をスリム化しろ」、「ムダ遣いやバラマキを止めろ」と騒ぐ国民も、所詮は現金な生き物でしかないから、いざ自分の懐が温まれば、飲んだり食ったり余計な買い物をしたりして無駄遣いを始めるものだ。

そういった単純なカネの流れを極大化し、マクロ経済を押し動かすことなく日本経済の前進はあり得ない。

このまま金融緩和政策一本槍に固執し続ければ、黒田総裁は、今年も、金融政策決定会合のたびにオオカミ少年呼ばわりされる羽目になるだろう。

これ以上恥を晒さぬためにも、早々に金融緩和政策の限界を認め、財政政策への救難信号を発すべきだ。