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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

包丁を研げば料理の味が旨くなるという妄想

昨年12月24日に開催された経済財政諮問会議に「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(平成27年12月22日閣議了解)」なる資料が提出されている。

同資料は、平成28年度の主要な経済指標の見通しを数値で示したもので、実質GDP成長率1.7%程度、名目GDP成長率3.1%程度、消費者物価(総合)1.2%程度の上昇を見込んでいる。

無論、これらは、例のGDP統計方法の変更(研究開発費の計上)による“嵩上げ”を加味したものだろうが、これまでと違い、「アメリカの金融政策の正常化が進む中、中国を始めとする新興国等の景気の下振れ、金融資本・商品市場の動向、地政学的な不確実性等」を認めており、いわゆる“外需依存”から脱却した表現となっている。

ちなみに、実質経済成長率に対する外需の寄与度は▲0.1%程度と、早くも諦めムードを漂わせている。(その割にTPPの効果試算では、今後の外需効果をかなり過大に見込んでいるようだが…)

では、上記の嵩上げのほかに、何が成長を担保するのかといえば、

(ⅰ)民間最終消費支出

雇用・所得環境の改善により、緩やかに増加する。また、消費税率引上げ前の増加が見込まれる(対前年度比2.0%程度の増)。

(ⅱ)民間住宅投資

雇用・所得環境の改善により、緩やかに増加する。また、消費税率引上げ前の増加が見込まれる(対前年度比3.8%程度の増)。

(ⅲ)民間企業設備投資

企業収益の改善や各種政策の効果等もあり、緩やかに増加する(対前年度比4.5%程度の増)

と、根拠不明の“民需新三本の矢”を主軸に据えるつもりらしい。

しかし、政府が過大な期待をかける民需を取り巻く環境はかなり厳しいものになろう。

個人消費については、昨年末に公表されたとおり、家計消費支出や実収入は明らかに減少トレンドに入っている。

しかも、今年の1~11月の間で、実績値が前年を上回ったのは1世帯当たりの消費支出は5月と8月の2回だけ、勤労者世帯の実収入は4~8月の5回だけで、残りは全てマイナスという有り様だ。

また、新規住宅着工件数は昨年こそ90万戸を少し超える見通しにあり、一昨年を若干上回るペースを維持できたが、これとて比較対象になるのは、消費税増税後の反動減に見舞われた平成26年の数値である点に注意が必要である。

平成28年に着工件数のアクセルをフカすためには、文字通り消費税再引上げの断行に伴う駆け込み需要を発生させる必要があるだろうが、それによる翌年以降の反動減は避けられないし、個人消費の下落傾向が定着しつつある中で、ひょっとすると、個人消費の前倒し減に見舞われる可能性もある。

企業の設備投資については、2015年11月の機械受注統計(季節調整値)が公表され、中国経済をはじめ海外経済の先行き不透明感が強まる中、製造業、非製造業とも幅広い業種でマイナスとなり、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額が、前月比14.4%減の7738億円となり3カ月ぶりに縮小した、と報じられたばかりだ。

外需の先行きが極めて不透明感を増す中で、企業の設備投資は老朽化に起因するものが目立ち、とても、対前年度比4.5%UPするようなプラス材料を見出すことはできない。

(統計方法やデータの数値を弄るなら別だが…)

政府サイドは口では強気な発言を繰り返しているが、いまひとつ民需の盛り上がりに確信が持てないのか、会議の中で林経産大臣から、「各企業による積極的な設備投資と賃上げ、取引先企業に対する価格転嫁について、私を先頭に、経済産業省を挙げて200を超える業界団体に対して投資や賃上げを強くお願いする。これが言いっ放しとならないよう、東証一部上場企業と中小企業3万社に対してフォローアップ調査を実施していく」との発言もあった。

つまり、企業に投資や賃上げを丁重に要請するだけでは収まらず、追跡調査までセットして脅しをかけねばならぬほど追い詰められているわけだが、これなど、民需の自発的な拡大に自信を持てない何よりの証拠だろう。

また、経済財政諮問会議の議事録を見ると、相変わらず「生産性革命と働き方改革」、「賃金・所得の向上を引き出すサプライサイドの強化」、「多様な潜在ニーズを顕在化させること等を通じた消費等の喚起」といったサプライサイド振興にどっぷりハマっている様子が窺える。

彼らは、政府が企業に声掛けし、サプライサイドを強化すれば民需が熱を帯びるものだと信じ込んでいるようだ。

だが、「生産性革命と働き方改革」はコストカットによる下請けいじめの激化と雇用の流動化を、「賃金・所得の向上を引き出すサプライサイドの強化」は高齢者や女性活用による低賃金労働の常態化を、「多様な潜在ニーズを顕在化させること等を通じた消費等の喚起」は公的部門の産業化(=民間への切り売り)を体よく言い換えただけのことに過ぎず、そんなものを断行しても、家計や企業の所得や収益を増やすことにはならないから、民需の活性化につながるはずがない。

経済財政諮問会議なる如何わしい民間会議のメンバーは、経済政策の要点が、とっくの昔に、サプライサイドからディマンドサイドに移っていることに未だに気づいていない、というより、認められないと言った方が適切か。

ようやく、彼らも、外需の脆弱さや先行きの不透明さを認めざるを得なくなったようだが、今度は、賃上げ要請(経団連はベ・アを拒否しているが…)とサプライサイド強化で内需拡大を図るという“珍説”を持ち出して抵抗を試みている。

統計数値を誤魔化したり、でたらめなTPPの経済効果分析を提示して自己満足している場合ではないはずだ。

家計の収入や支出だけでなく、企業の設備投資まで減退のサインが出ていることに強い危機感を抱くべきだ。

いつまでも持説に固執して経済環境の変化に対応できず、的外れな政策ばかり打とうとする様は滑稽でしかない。

だが、このまま新自由主義者どもの改革ごっこを放置すれば、不況の最大要因である「需要不足への対策」が蔑ろにされ続け、経済の悪化に歯止めが掛からなくなる恐れがあろう。

大局を読めず環境の変化に対応する気のない愚か者には、早々に退出願いたい。

ところで、今回の経済財政諮問会議の資料に、金融緩和政策に関する記述はないものかと探したが、議事録には見当たらず、添付資料の末尾に『日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する』と申し訳程度に記されていた。

しかも、いつも同じセリフの定型文が貼り付けられているだけの雑な扱いである。

リフレ派の連中は、安倍政権に懸命に尻尾を振っているが、政権側は、金融緩和政策に大した関心を持っていないようだ。

これ以上、忠義を示しても、見返りや恩賞は期待できないものと心得て、見切りをつけるべき時期だろう。