うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

感応度の低い政策をいくら打っても意味がない

日銀黒田総裁は、4日に都内で開かれた生命保険協会の新年の会合に出席し、念願の物価目標達成に向けて、「できることは何でもやり、2%の物価目標上昇は必ず実現する」と述べ、今後の金融政策について、「必要と判断すれば、さらに思い切った対応を取る」と強調した。

黒田総裁は、先月24日の経団連の審議員会でも「(目標達成のために)できることは何でもやる」と言い切っているが、新年早々これに続く強気発言をした裏には、前回の黒田バズーカ3が、あまりに不評だったことへの反発や一部で囁かれている“緩和限界説”を払拭する狙いがあると言われている。

1月5日付日経新聞のコラムでも、『物価2%「思い切って対応」 日銀総裁一段と強調』という表題を付して取り上げられているが、コラムによると、総裁の積極的な発言の背景には、“緩和観測が薄らげば、4年間続いた円安・株高の流れにブレーキがかかり、デフレ脱却が難しくなるとの危機感がある。「動く日銀」をアピールすることで、企業に設備投資や賃上げを促したいという本音も透ける”と解説している。

先ず、こういった経済政策を打つに当たり、国民やマーケットの連中の後手に回っては意味がない。

経済環境が悪化したのを見計らった後でノロノロ重い腰を上げても遅いのだ。

対策が“too late too little”であるほど政策効果も薄く、結果として、経済政策そのものが疑問視され、無駄とかバラマキだといったレッテル貼りをされる原因にもなる。

我が国の経済は、GDPは内閣府が筆を嘗めないとプラス成長に達せず、勤労者収入は停滞したまま、家計消費は落ち込んだまま、という状態で、相変わらず不況の底にある。

黒田総裁も、この期に及んで “必要と判断すれば”なんて言っているようでは、現状認識が甘すぎる。

とっくの昔に“必要と判断して、政府とのアコートを結び積極的な財政金融政策に着手”すべきだっただろう。

インフレ・ターゲットの達成に向けて、政府に大規模な財政政策を提言し、日銀が、異次元緩和政策により財源面でフルカバーし続ける姿勢を明確に表明すべきだ。

当面は、機関投資家を介した間接支援の形を取らざるを得ないが、それで足りないなら、堂々と法改正して直接引き受けへの道を開けばよい。

どうせ、遠からず、日銀による直接引き受けが避けて通れない時機が来る。

「日銀は政府の打ち出の小槌ではない」とか「財政規律が崩壊する」といった類いの批判の大合唱が沸き起こるだろうが、そんな戯言は無視しておけばよい。

景気が好循環基調に入れば、マスコミや国民からの文句なんてピタリと止んでしまうものだ。

日銀が3か月ごとに公表している「生活意識に関するアンケート調査」(第63回)~2015年9月調査~の結果を見ても、総体的な景気低迷感は否定しようがない。

≪景況感D.I=「良くなった(良くなる)-「悪くなった(悪くなる)」≫

・現在の景況感15.2(前回比+0.2)

 ※少なくとも、2012年12月調査以降一貫してマイナス

・1年後の景況感17.8(同3.9)

≪暮らし向きD.I.=「ゆとりが出てきた」-「ゆとりがなくなってきた」≫

・現在の暮らし向き▲41.0(前回比+0.7)

・1年後の暮らし向き15.2(同+0.2)

 ※「ゆとりが出てきた」という回答は、「ゆとりがなくなってきた」の1/8未満しかない

≪収入D.I.=「増えた(増える)」―「減った(減る)」≫

・現在の収入26.0(前回比+1.4)

・1年後の収入26.5(同1.5)

 ※「増える」という回答は、「減る」の1/4未満しかない

≪支出D.I.=「増えた(増やす)」―「減った(減らす)」≫

・現在の支出23.5(前回比3.7)

・1年後の支出▲43.3(同▲1.7)

 ※「増やす」という回答は、「減らす」のおよそ1/9ほどしかない

前回調査より少々改善している項目もあるが、100点満点のテストで10点しか取れなかった奴が今回は11点取ったからといって、そんなものは“改善”と呼べないことくらい誰にでも解かるだろう。

とにかく、景況感に関する絶対値や期待値が低すぎるのだ。

ちなみに、同調査で景況判断の根拠について尋ねた(複数回答可)ところ、「自分や家族の収入の状況から」(59.7%)との回答が最も多く、次いで「勤め先や自分の店の経営状況から」(34.4%)、「商店街、繁華街などの混み具合をみて」(22.0%)といった回答が多く、日銀の本気度との関連性を見て取ることはできない。

(以前の調査ではあった「日銀の金融政策を見て」という選択肢は、いつも回答率が“コンマ以下”のため、ついに選択肢から削除された模様)

また、商工中金のレポート(中小企業設備投資動向調査 [2015 年7 月調査])によると、設備投資に関する2015年度修正計画における投資目的の上位は、「設備の代替」 47.5%が最多で、次いで「維持・補修」27.1%、となっており、少なくとも2011年度以降、ずっとこの傾向が続いている。

昨今の設備投資実施企業割合の回復(といっても、97年~05年辺りと比較すると、1割以上低い数値なのだが…)を見て、金融緩和政策の手柄だと勘違いしているバカ者も散見されるが、なんのことはない、単に、我慢して使い続けてきた設備が老朽化の限度を超え、更新・修繕せざるを得なくなっただけのことだ。

筆者も、付き合いのある企業から設備投資に関する話をあまた聞く機会があるが、金融緩和政策のおかげとか、それによるインフレ期待に背中を押されて、なんて話を聞いたことは一度もない。

長期不況の最中にある現在は、ビジネスチャンスを狙って積極的にリスクを取る意欲が低下しており、投資判断をする際に、実質金利を含めて、金利に対する感応度が極めて低い、というより、(投資判断をする資格のある業績を誇る企業が)投資判断そのものをする機会自体が減っているように感じている。

それどころか、経営者に金融緩和政策の話を向けても、「政府の方針で金利を低く抑えてるんだろ?」くらいのもので、その内容や目的を理解できている者は、ほとんどいないと言ってよい。

黒田総裁は、“「動く日銀」をアピールすることで、企業に設備投資や賃上げを促”すつもりのようだが、残念ながら、いくらアピールしても、家計や企業がそれに反応を示すことはないと思う。

また、総裁の言う「思い切った対応」の方向性が見当違いの方向を向いていないことを祈るが、恐らく、ETFやJ-REIT、CPなどの買い入れ枠を増額するくらいが関の山だろう。

彼らのような新自由主義者は、常に、“思い切り”が悪く、方向性も見当違いだから、大した期待はできない。

今年も、経済問題の核心には触れようとせず、それを遠巻きにしたまま、役にも立たない政策を打ち続けることだろう。