うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

最低賃金1500円を拒絶する人たちが勘違いしていること

12月13日に、東京都内で、最低賃金1500円(時給)の実現を求めるデモが行われ、主催者発表で500人が参加したそうだ。

毎日新聞の記事によると、デモに参加した若者は、政府が掲げる最低賃金1000円への引き上げでは生活苦は解消されないとして、、「最低賃金今すぐ上げろ!」「中小企業に税金回せ!」などと訴えながら、約1時間半かけてJR新宿駅周辺などを練り歩いたとのこと。

我が国の最低賃金は、ほとんどの地域で、いまだに700~800円台でしかなく、生活保護以下の待遇だと揶揄されて久しい。

毎年の引き上げ幅も、せいぜい、20円程度で、政府が目標とする1000円という数字に届くまで、あと10年以上は掛かるだろう。

毎日フルで働いても、月20万円にも満たないようでは、まともな生活は望めず、生活保護でも受けた方が、確かにマシだろう。

国内のパートやアルバイト人口は1300万人以上にもなり、共働き家庭も多いだろうが、バイト収入を家計の柱にせざるを得ない層の人口もかなりの数に上るはずだ。

しかも、長引く不況の影は一向に消え去る様子もなく、不安に駆られた若者が、こうした最低賃金引き上げデモを通じて自らの苦境を訴えるのも当然のことだろう。

しかし、世の中には、彼らの心情を平気で踏みにじろうとするバカな論者も存在している。

最低賃金1500円を要求する人たちが勘違いしていること。~アメリカが時給15ドルを実現出来る理由~』(中嶋よしふみ シェアーズカフェオンライン編集長 ファイナンシャルプランナー

http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakajimayoshifumi/20151216-00052487/

成長限界論に侵された中嶋氏の愚論については、上記のコラムをご覧頂ければと思うが、氏の主張は次のとおりだ。

・時給アップのような問題は生活保護介護保険など公的な社会保障でサポートすべき

・今回のデモは労働者から搾取する企業にダメージを与えるべき、最低賃金を上げて企業から金を吐き出させるべき、という意図が見え隠れする

・給料は労働の対価である

・正社員の給料も低い。誰かが暴利を貪っているとか、経営者が搾取しているなんてあり得ない。

・大きな利益を得ている経営者や株主の利益を広く薄く非正規雇用者にばらまいたとしても、上げられる時給はほんの数%に過ぎない

・日本は経済大国で豊かな国、というセルフイメージがすでに勘違い。貧乏な国で所得が低いのは当然の話。所得を上げるには経済成長をすれば良い

・アメリカ並みにゴリゴリの資本主義を実現して最低賃金を1500円に上げるべき

まず、所得を上げるには経済成長が必要だと言いながら、(所得アップを源泉とする)時給アップは公的な社会保障でサポートしろ、という主張は完全に矛盾している。

経済成長で企業の売上や収益が上がり、労働者の所得を上げられるのなら、政府は、それを実現させる経済政策を真っ先に打つべきだろう。

だが、現実には、経済界が政府に要求するのは財政再建とか構造改革ばかりで、労働者、ひいては国民の所得向上につながるような努力を全くしていない。

労働分配率UPに対する企業側の努力や姿勢が確認できない状態で、時給アップをすべて社会保障に丸投げする、というのは、あまりにもだらしなく図々しい主張ではないか。

氏は、企業が労働分配に対する努力を放棄して、社会保障という名の国民負担にフリーライドしたい、と言っているに過ぎない。

しかし、社会保障でカバーするということは、結局、消費税増税等に財源を求めることにつながり、国民総体で考えれば、右のポケットから出して支払った税金を左のポケットに収入として入れ替えるだけのことだろう。

氏は、バイトの賃金を上げるなんて到底無理だと言い切っているが、果たしてそうなのだろうか?

パートやアルバイト従事者の賃金総額を集計するデータを見つけることはできなかったが、国税庁の1年未満勤続者の給与額を基に計算すると、全国1347万人のパート・アルバイト従事者の年間給与総額は9.3兆円ほどと推計される。(一人当たりの年収は69万円ほど)

これが最低賃金1500円に上昇した場合、労働コストが、およそ7~8兆円増加すると見込まれる。

一方、国内企業の売上総額は、H25国税庁のデータで1493兆円、利益計上法人の利益額49兆円、益金処分金額は66兆円にも上り、うち33兆円が内部留保され、15兆円が配当として支払われている。

個々の企業の事情を考慮する必要はあるだろうが、総体の数字で見ると、7~8兆円程度のコストを捻出する余裕は十分にあるだろう。

また、中嶋氏は、“アメリカ並みにゴリゴリの資本主義を実現して最低賃金を1500円に上げるべき”なんて無知を曝け出している。

ちなみに、世界の時給ランキングを確認すると、1位オーストラリア1144円(税引き後の手取りベース、以下同じ)、2位ルクセンブルグ1108円、3位ベルギー1028円、4位アイルランド1015円、5位フランス988円、6位オランダ984円と続き、当のアメリカは11位で751円、日本は662円とG7諸国の下から2番目という寂しい結果となっている。

ランキングを見ると解かるように、上位の国に“ゴリゴリの資本主義”に徹している国なんて見当たらない

本当の競争に身を置いた経験のない田舎者ほど、資本主義とやらに妙な幻想を抱いているものだが、中嶋氏もその類なのだろう。

氏は、日本はもはや豊かな国ではなく、貧乏な国の人の給料が低いのは当たり前だなどと、大きな勘違いをしているようだ。

日本(というより日本国民)が豊かになれないのは、日本の経済構造が内需依存であることを無視して、国にあっては緊縮政策を強要し続け、また、企業にあっては労働分配率を下げ非正規雇用を増やし続けたことにより、内需の源泉となる経済基盤を破壊してきたからに他ならない。

企業が労働の対価として、先進諸国と比べて恥ずかしいほど低い給料しか支払えない(支払わない)のは、単に国民に負担を押し付けて甘えているだけのことだ。

中嶋氏も、曲がりなりにも“所得を上げるには経済成長をすれば良い”と口にしている(筆が滑っただけだろうが…)のだから、斜に構えて企業の太鼓持ちをするような真似をせず、マクロ経済を成長させるための適切な経済政策と分配構造の整備を訴えるべきだろう。