うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

存在感を失いつつある黒田バズーカ

『「バズーカ3」は不発、追加緩和か迷い相場乱高下(ロイター 12月18日(金)16時41分配信)』

“黒田日銀が再び市場の意表を突いた「バズーカ3」は不発に終わった。上場投資信託ETF)の新たな買い入れ枠設定など量的・質的金融緩和(QQE)の強化策を打ち出したものの、マネタリーベースの目標額は据え置き。市場は追加緩和なのかどうか迷い、日本株やドル/円<JPY=EBS>は乱高下した。日本経済に与える効果も疑問視され、金融政策の手詰まり感がより鮮明になってしまったとの指摘が市場で広がっている”

12月18日に日銀の金融政策決定会合の結果が公表されたそうだが、“バズーカ砲が炸裂した爆音すら聞こえなかった”というのが正直な感想だ。

筆者も、個人的に業務が多忙な時期でもあり、黒田バズーカ第3弾が発射されたことすら気付かなかった。

事前予想では、今回の会合で大きな動きはないという見方が大勢を占めていたせいか、株式市場はサプライズ感に突き動かされ、一時は500円高まで上昇したが、次第に、バズーカ砲の中身は大したことがないと冷静に受け止められ、結局、900円近い乱高下を繰り返した挙句に300円を超える下げ幅で取引を終えた。

今回決定された内容は次のとおり。

・マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

・ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。買入れの平均残存期間は、本年中は7~10年程度、来年からは7~12年程度とする。

ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

・CP等、社債等について、それぞれ約2.2 兆円、約3.2 兆円の残高を維持する。

総じて「バズーカ砲」と称するには、あまりにも小粒な内容で、せいぜい、モデルガンから発射されたBB弾程度がいいところだろう。

シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏も、「わかりやすい金融緩和策によって、国民や市場の期待に働きかけようとしたのが、黒田日銀のやり方であったはずだ。しかし、今回の強化策はあまりにわかりにくい。手詰まり感さえ感じられてしまう」と評している。

日銀のETF(上場投資信託)購入に関わり新たに設定される3,000億円の枠は、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業の株式を対象にするそうだが、いかにも表層的なやり方であり、大した効果は見込めないだろう。

そんな靴の上から足を掻くような遠回しな施策ではなく、政府が3,000億円分(この10倍の金額でもよいが…)予算措置し、設備投資(資金力の弱い中小企業を中心に)や中途人材雇用(特に、就職氷河期に被害を被った人材の雇用)に取り組み、日銀がその分だけ国債を買い増しすればよいだけだ。

もはや、日銀の金融政策は完全に行き詰っている。

というよりも、積極的な財政政策による新規国債の増発に裏打ちされない状態を余儀なくされた時点で、行き詰ることが運命づけられていた、と表現する方が正確かもしれない。

現状の異次元金融緩和政策は、既発債の持ち主を機関投資家から日銀へと移管し、国債を実質的に無効化する効果しかない。

これはこれで、重度の借金恐怖症に陥った不勉強な国民を黙らせるには、大変大きな効果なのだが、日銀が保有する国債額の分だけ政府債務額がレスされるという“常識”が、未だ、世間一般に浸透していない状況では、こうした成果が評価されることもない。

異次元金融緩和政策の手柄であったはずの“円安効果”も、昨今の輸出総額は、せいぜい、一時的な微増程度(1年前と比較すると微減)に止まり、過去のピークには遠く及ばない状況では、効果と呼ぶべきかどうかも怪しいレベルだ。

むしろ、輸入物価の高騰を招くだけの厄介者扱いされてもおかしくない。

過度な円安さえなければ、食料品価格の高騰が抑えられ、昨今の原油安効果も更に増幅されたかもしれない、とも言える。

日銀は、ETFやJ-REITを買って自己満足している場合ではなかろう。こんなものをいくら買っても実体経済は刺激できない。

金融政策は、一部の市場関係者を喜ばすためにやるものではない。

いい加減に金融政策の限界を認め、実体経済を直接刺激するために積極的な財政政策を並行して行うよう、政府に対して救難信号を発すべきだ。

さて、話は変わるが、先日、北海道の札幌市に出張する機会があった。

予想に反して積雪が少なかったこともあり、地元の方との間で、市内の除雪に関する話題になった。

札幌市は、豪雪地帯に属していながら200万人近い人口を有する世界的にも稀な大都市であり、昨年度の雪対策費は180億円にも上ったそうだ。

(うち道路などの除排雪費が128億円、ロードヒーティングなどの雪対策費が52億円)

地元の方の話によると、毎年1mを優に超える積雪に悩まされる市民にとって、何より望んでいるのは「除雪ではなく排雪」だそうだ。

除雪とは、道路に積もった雪を除雪用のローダーなどの車両を使って道路脇に掻き分ける作業を指す。

素人目には、交通網維持のためにはこれこそ大事な作業では、と疑問に思ったが、除雪作業といっても、結局は、道路に積もった雪を搔いて、それを歩道や個人宅の玄関前に積み上げる作業でしかなく、積雪があった翌朝(除雪作業はたいがい深夜から早朝に行われる)に、自宅前に大量に積み上がった土砂のような雪を見て、市民はうんざりさせられるそうだ。

憐れな市民たちは、米俵にして10数個分もの大量の雪を、出勤前の早朝から、自宅の裏庭、近所の公園や空き地などに、スノーダンプ(雪を積んで運ぶソリのような道具)を使い、せっせと運ぶことになるのだが、固く締まった上に除雪作業で削られた雪は、まるでレンガのような重さで、1軒分を除雪するのに1時間以上もかかり、汗だくになるそうだ。

確かに道路はきれいになる(地元の方に言わせると、除雪後の道路は滑りやすく危ないとのこと)が、道路の雪が歩道や個人宅前に移動しただけで、市街地にある雪の総量に変化はない。

つまり、端的に言うと、道路にあった雪を市民に片付けろと言っているようなものだ、という受け止め方なのだそうだ

街区に積もった雪を各所の設置された排雪場に捨てることになる“排雪作業”とは異なり、除雪作業は、間に除雪という行為を挟んでいるとはいえ、その中間作業をカットすると、道路にあった雪を個人がせっせと片付けさせられていることになる。

こうした除雪作業のように、交通網の維持という一定の効果は認めざるを得ないものの、市民にとっては有難迷惑な存在でしかないところは、予算や政策規模の割に国民に益をもたらさない現在の金融緩和政策と共通していると言えよう。

日銀幹部やそれを応援するリフレ派の連中は、これまでの異次元金融緩和政策が経済成長に役立っていると盲信しているようだが、それが実体経済を直接的に刺激し、国民一人一人の所得向上につながっているのかを、冷静に分析し真摯な気持ちで反省すべきだ。

黒田バズーカ砲などと称賛され、市場関係者と内輪でハシャギ合って満足するのではなく、マクロ経済全体を俯瞰し、実体経済を刺激するよう政府と強調すべきだ。

中央銀行が、国債の最大の引き受け手となり、政府・与党が積極財政を行う上での無制限の後ろ盾になり続けること、並びに、政府債務の実質的な削減に協力し続けることを堂々とアピールすれば、市場関係者だけではなく、国民や企業の凝り固まった意識が、根底から覆されるだろう。

(その前に、囂々と非難を浴びるだろうが…)

そうでもしない限り、緊縮政策と財政再建にしか興味がない政府・与党の連中や年がら年中借金恐怖症に駆られている国民が目を覚ますことはあるまい。

筆者は、日頃から、金融政策偏重気味の異次元金融緩和政策には批判的な立場を取っているが、経済成長を目的として、日銀がインフレターゲット政策を採用したこと自体は、画期的な取り組みとして評価すべきだと考えている。

問題なのは、その目標が、実体経済を直接的に刺激する施策から乖離していることだろう。それは、P.クルーグマンが主張するように、インフレターゲットの目標値を2%から4%に引き上げれば済む、というものではない。

国民や企業が、経済成長に強い確信を抱き、そこからもたらされる果実を、より具体的に実感できるよう、所得水準や雇用条件(特に、正規雇用の割合向上)から民間企業の業績水準にまで踏み込んだ目標を設定し、政府に協力を強く求めるべきだろう。

日銀は、国民や企業に対して、木で鼻を括ったような目標を掲げて満足するのではなく、実体経済を直接的に刺激するよう、より積極的に取り組むべきだ。