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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

行政は、積極的に守備範囲を拡大すべき

先日、知り合いの金融機関担当者から、ソーシャルビジネスやコミュニティービジネスへの融資を促すための「事業評価の手引き」なるものが中小企業庁から配布されたと聞いた。

近年、金融機関に対しては、金融庁ばかりか、経産省や中企庁からも、余計な口出しやリクエストが届くようになったが、なんでも、中企庁が、わざわざ、こうした手引きを制作した目的は、“金融機関がソーシャルビジネスやコミュニティービジネスに取り組む事業者に対して、ビジネスモデル等の事業内容を評価した融資(目利き融資)に取り組むことを促すため”だそうだ。

要するに、ソーシャルビジネス(以下、「SB」)やコミュニティービジネス(以下、「CB」)の事業化が一向に進まないのは、金融機関が融資を渋っているせいだと責任を擦り付けるつもりらしい。

まったく、ビジネスの現場を知らない素人には困ったものだ。

特に、政治家や学者、役人、マスコミといったエスタブリッシュメントを気取る連中ほど、ビジネスの内容そのものには無頓着で、金融機関が企業や団体に融資さえすればビジネスが上手く行くと単純に思い込んでいるから手に負えない。

また、“金融機関の連中は高給(一部の大手銀行を除くと意外と安月給で肩叩きも早いようだが…)を取っておきながら、融資を渋って零細企業を苛めている”と文句をタレるくせに、いざ不良債権が累積すると、“銀行はいい加減な審査をして国民の大切な預金をドブに捨てた”と掌を返すように批判するバカも同罪だろう。

この手の、いい加減な妄言を吐くそこいらの国民には、“審査を厳格化すべきなのか、リスクを承知で緩めるべきなのか、「(金融機関に対する)債権者」として、はっきりと意思表示してみろ”と言っておきたい。

さて、件の「事業評価の手引き」とやらに話を戻すが、手引きの冒頭には、制作の目的が次のように説明されている。

少子高齢化や都市と地方の地域間格差などといった構造変化にともなって生じる社会課題に対し、特定非営利活動法人を中心に、ビジネスの手法を活用して地域の社会課題の解決を試みる先進的な取り組みとして『地域課題解決ビジネス』が注目を集めている

・地域課題解決ビジネスに取り組む事業者の中には、事業拡大だけを目的とするのではなく、小規模ながらも、結婚や出産・育児をきっかけに離職した女性の再就職の場、育児期の女性たちが活躍できる場、あるいは、企業などを退職したシニアの活躍の場として多様な働き方を提供する事業者も多い

・しかし、地域課題解決ビジネスは、利益ではなく地域課題の解決を優先する傾向にあったり、そもそも利益の確保が難しい市場を対象に事業を行っていたりするなど、通常のビジネスとビジネスモデルが異なるため、ビジネスモデルの評価手法や支援ノウハウなどは十分に確立されていない

・このため、金融機関からの事業資金の借入に際して、通常のビジネスと同様に財務諸表などの定量面の評価を重視する貸し手と、地域課題解決ビジネスの社会的意義やビジネスモデルなどの定性面の評価をして欲しい借り手との意識の差が大きいことを起因として、融資が円滑に進まないことが課題になっている

要するに、社会的使命感からSBやCBの立ち上げを図る者が、女性やシニア層を中心に増えているが、事業性に乏しい(売上や収益を上げられない)ものが多く、金融機関に融資を頼んでも形式的な審査しか受けられず謝絶されてしまう、ということだ。

“地域課題解決ビジネスは、利益ではなく地域課題の解決を優先する傾向にあったり、そもそも利益の確保が難しい市場を対象に事業を行って”いるそうだが、「ビジネス」を謳う以上、利益を生まないような類の事業であってはならないだろう。

一般の企業や国民は、結構勘違いしているようだが、融資を受けた後の返済原資は、事業の収益(税引き後利益+減価償却)から捻出されるべきものであり、利益を出せないような事業には、そもそも、融資を受ける資格自体がないことを認識すべきだ。

手引きでは、いくつかのSBやCBの事例が紹介され、貸し手と借り手の意識の差を解消する一助となるよう、金融機関は、売上などの定量データだけではなく、情報収集のために金融機関自ら人脈を広めて、定性面の要素(技術力や販売力等)をプラス要素として積極的に勘案すべき、と強調している。

これは、貸し手から見るとゴリ押しに近い暴論で、貸し手との意識の差を埋めたいのなら、借り手側が確度の高い事業計画と数字の裏付けを以って説明すればよいだけの話だ。

筆者も何度か、SBやCBに取り組む創業者の相談を受けたことがあるが、障害者雇用の場を作りたいとか、地域の高齢者の買い物支援をしたいとかいった具合に、社会的な使命感は強いものの、肝心の売上や収益の見込みについては、全く説明できないものがほぼ100%であった。

申し訳ないが、それらはボランティア活動の領域であり、融資という枠の中で事業として評価する性格のものではない。

障碍者就労支援とか介護事業のように、サービスの対価が、法律により担保されている類いのものならまだしも、地域の高齢者が集うカフェを作りたい、とか、町の良さを伝えるフリーペーパーを発行したい、といった理念先行型の事業では、融資対象として心もとない。

手引きでは、SB・CBの収益源として、事業収入。委託事業収入(自治体等からの事業委託)、会費収入、補助金助成金、寄付収入などを挙げているが、現実には、事業収入や会費収入なんて微々たるものに過ぎない。

結局は、補助金や寄付に頼らざるを得ないのだが、行政の補助金を受給する場合、一部には、年度途中での概算払い制度はあるものの、原則として、先出しした資金を精査したうえで年度の最後に支給されるものだから、年間の運営費を別途調達しておく必要があり、甘い考えで受給できるものではない。

そもそも、SBやCBの事業活動の根本は社会的課題の解決にあり、通常のビジネスとは異なり収益よりも社会的要請に基づいて行う事業なのだから、変に突っ張って事業家を気取るのではなく、公的枠組みの下で補助事業や委託事業としてやればよい。

行政も、こうした実態を判っていながら、民間金融機関にリスクや責任をおっかぶせるのは本末転倒であり、あくまで、国や地域の福祉事業の一端を担う社会的使命の高い事業として、行政が責任を持って運営の面倒を見るべきだろう。

中企庁は、役にも立たない手引きを作り、金融機関に対して、暗に融資を強要するような真似は避けるべきで、SB・CBに携わる事業家が、安心して事業に打ち込めるよう、福祉政策の充実を図りつつ、きちんと財政的支援でバックアップすべきだ。

財務省を筆頭に、緊縮財政派の連中は、年々膨らむ福祉予算に頭を痛めているようだが、それ自体が馬鹿げた発想である。

“予算が膨らむ=社会的ニーズが高い”ということだから、そこに財政支援をすればよいだけのことだ。

福祉事業に対する予算さえきちんと裏付けてやれば、膨大なビジネスチャンスが国内の福祉市場に発生し、それこそ、先を争って民間事業者が投資を活発化させるだろう。

これこそが、彼らの大好きな「民間主導の経済活性化」につながるのではないか。

財源なんて幾らでもあるのだから、削減とか改革みたいな非生産的な行為はしばし忘れて、前に進むことだけを考えればよい。