うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

重要なのは「修理」ではなく「給油」

『夏のボーナス、前年比2.8%減 非正社員の増加受け』

“今夏のボーナスの1人あたり平均額は、前年より2.8%少ない35万6791円で、2年ぶりに減った。非正社員の割合は2014年に初めて4割に達しており、厚生労働省は減少の理由を「ボーナスの支給水準が低かったり支給されなかったりするパートや嘱託など、非正社員の割合が高まった」と説明している。

 厚労省が9日発表した。減少幅は、リーマン・ショック翌年の09年(9.8%減)以来の大きさとなる。従業員数が多い産業ごとにみると、卸売業・小売業が6.5%減の29万6120円、医療・福祉が4.7%減の25万7278円、製造業が3.3%減の49万4777円で、いずれも落ち込んだ。従業員5人以上のおよそ3万3千事業所を対象に調べた。“(朝日新聞デジタル 11月9日(月)10時49分配信)

このニュースを耳にした時に、筆者には何の違和感もなかった。

2008年度と比較して2015年度の企業の現預金保有額は100兆円近く増えている(大企業だけでなく、意外と中堅・中小企業も現預金を溜め込んでいる)のに、その間の労働分配率はほとんど増えていない。

また、仕事柄、様々な中小企業と接し、彼らの業績や悩みを聞いていると、新聞紙上を賑わすインバウンド効果や人手不足といった言葉も、何処か他人事のように聞こえている。

多くの中小企業は、未だ、不況のどん底にあり、売上低迷や資金繰りの窮乏に喘いでいる。

以前公表された、主に従業員500人以上の上場企業140社への経団連の調査では、今夏のボーナス妥結額は前年比2.81%増なんて調子のよいことを言っていたが、今回の調査結果を見ると、従業員500人以上の企業の一人当たりの平均賞与額は63万4781円で前年比▲2.6%という結果が出ており、経団連の発表がまったくのインチキであったことが判る。

特に落ち込み幅の大きかったのは、製造業3.3%減、卸売業・小売業6.5%減、医療・福祉4.7%減で、一般的に人手不足だと言われているはずの業種が目立つ。

人手が足りないほど儲かっているはずの業種のボーナスが、なぜ、下がるのか、アベノミクスを妄信する連中にぜひ訊いてきたいものだ。

そういった連中は、労働者平均給与の低迷や非正規雇用の増加による雇用条件悪化の実態を目の当たりにしても、“アベノミクスで給与が上がっているぞ、有効求人倍率も改善したはずだ”と、醜い強弁を繰り返すばかりで、そうした声に支えられ、政府も、先月の月例経済報告で、2014年5月以来の「景気は緩やかな回復基調が続いている」という従来からの表現を繰り返したが、それが何の根拠もない空論に過ぎなかったことを、そろそろ認めざるを得ないのではないか。

経営者が口にする「人手不足」という言葉は、業績UPに伴う前向きな意味合いのものではなく、定年退職したベテラン社員の不補充やきついノルマと低賃金に耐え切れず辞めていった中堅社員の穴埋めをしたいが、“安い給与でベテラン並みに働いてくれる都合のよい人材が見つからない”という自分勝手な要求を指すものであり、額面通りに受け取ってはいけない。

経済財政諮問会議に提出された資料には、労働意欲を持つ人材が国内には1000万人以上いるそうだから、経営者サイドが適正な雇用条件を提示すれば、いくらでも人材を確保できるはずだ。

人手不足という言い訳が、あちこちで飛び交っているということは、求職者に対して碌な雇用条件が示されていない証拠であろう。

11月4日の第17回経済財政諮問会議に提出された「アベノミクスの第二ステージに向けて」という資料には、企業利益・設備投資の動向に関して、「大企業の利益は過去最高水準にあるが、それに比べて、設備投資や研究開発費、人件費といったキャッシュアウトの動きは総じて低調であり、現預金等が積み増されている。業種別にみると、自動車、電気機器、商社といった業種において、保有する現預金等の増加幅が大きい。成長志向の法人税改革の早期完了や企業収益が確実に投資等へのキャッシュアウトに結び付く取組が重要」との指摘がある。(下請け企業への適正な支払い、という観点が欠落しているようだが…)

また、家計消費の動向に関しては、「若年層の多くの所得階層において、他の年齢階層よりも消費性向が低くなっている。特に、若年の低所得者については、物価上昇の中で、消費全体を抑制している動きがみられる。この背景として、子育ての備えなど予備的な貯蓄確保の観点から、貯蓄している姿が明らか。低所得者層をはじめとする消費の活性化に向けては、将来を見通せる安定的雇用の確保、継続的な賃金引上げ、正規化、子育て支援社会保障の若年世代への重点配分の4つが重要」と、こちらもある程度まともな分析をしている。

だが、元来、新自由主義者構造改革主義者の巣窟である経済財政諮問会議の連中から、まともな対策が出てくるはずがない。

実際に、彼らの提言を見ても、『成長志向の法人税改革、規制改革による民間企業の投資機会の拡大、女性・若者の正規化支援、多様な働き方の促進、高齢者雇用のさらなる促進、農業の企業経営化、観光産業の生産性向上』といった旧来型サプライサイド系の空理空論が羅列されているだけで、しかも、それらを“財政再建計画の範囲内”でやろうという程度のものに過ぎない。

企業が国内投資を絞り込む理由、若者が消費を躊躇う理由なんて、内需低迷による雇用環境の悪化や収入の減少に決まっており、供給サイドをいくら弄っても解決できる問題ではない。

近年、日本をはじめとする先進国で表面化している経済問題は、ほとんど実体経済の需要不足(=売上や所得の不足)で説明できるものばかりだが、財政再建教や構造改革教に染まり切った狂信者は、その事実を認めたがらず、財政再建やサプライサイドからのアプローチに固執して失敗を繰り返してきた。

ガソリン不足で走行不能な車を前にして、給油を拒絶したままエンジンや足回りの修理に執着するバカそのものである。

デフレ不況に突入して以降、サプライサイド革命の失敗事例には事欠かないのだから、中学生レベルの判断力が備わっていれば、持説の誤りに気付けると思うのだが…

安倍首相は、GDP600兆円の達成を目標に掲げているが、ディマンドサイドを刺激する施策抜きでの達成は絶対に不可能だと言ってよい。

まともな供給力を有する先進国が採るべき経済政策は、『需要力の拡大を基点とした供給力の維持拡大』であり、その逆ではない。