うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

物価目標の意義をきちんと理解できない者は、金融緩和政策の是非を語るべからず

既に報じられているとおり、10月30日に行われた日銀金融政策決定会合で、年2%の物価上昇目標の達成時期が、「2016年度前半」から「2016年度後半ころ」へ先送りされることが決まった。

当初の目標であった「2015年4月」から起算して約2年間の延長となり、目標達成(たぶん無理だろうが…)まで計画期間の倍近くの日数を要することになる。

リフレ派が絶対の自信を持って宣言した『日銀のコミットメント』とやらも、ずいぶん軽々しいものだと呆れている。

目標先送り決定の要因は、中国ほか新興諸国経済の失速や原油安、国内景気の低迷にあると報じられている。(これだから、外需頼みの経済運営は危険だと思うのだが…)

加えて、リフレ派から、先の消費税増税による消費の低迷により足を引っ張られた、と負け惜しみ気味の言い訳が聞こえてくる。

総務省が発表した9月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で▲0.1%と2ヵ月連続で低迷しているが、当の日銀は、原油安の影響を除くと、同1.2%まで上昇しており、エネルギー価格の下落という特殊要因を考慮すれば、全体的な物価の基調は堅調だと強がっている。

まるで、“テストの総合点が下がったのは、化学が異様に難しかったせいで、自分のせいじゃない、”と浅ましい言い訳をするようなものだ。

だが、この先、原油価格が反転し、消費者物価指数が上昇したとしても、果たして、それは“望ましいインフレ”なのだろうか。

2013年に始まった異次元金融緩和(黒田バズーカ)は、国債の日銀保有率上昇による政府債務の実質無効化と為替水準の変動による行き過ぎた円高の是正に役立ったことは確かだろう。

しかし、その間に適切な財政政策がなされぬまま実体経済の低迷が続いたため、待望であったはずの円安がもたらしたのは、実際には、輸入原材料の上昇による生活必需品の値上がりという“円安災害”だけだった。

望んでいたディマンド・プル型のインフレではなく、迷惑でしかないコスト・プッシュ型のインフレが日配品や生活必需品を直撃したため、全体の消費者物価指数の動きとは別に、国民の脳裏には「悪いインフレ」が到来したという印象が鮮明に残り、きつく締まった財布の紐が、さらに強く締め付けられている

現に、総務省から発表された9月の勤労者世帯実収入は、1世帯当たり415,467円と前年同月比は▲1.5%(実質値▲1.6%)と低迷しており、消費支出も同▲0.9%と再びマイナスに落ち込んだ(いつもどおり、天候不順のせいにされる可能性大)が、国民からすると、収入が増えない中で、日配品や食料品が値上がりしているのだから、支出を減らして対抗しようとするのは当然だろう。

こうした国内の消費の落ち込みを見かねたのか、呑気なマスコミの連中からも、「企業の賃上げが、商品の値上げに追いついていない」、「所得が増えなければ消費が落込み、物価上昇は続かない」と指摘する声が上がり始めている。

本来なら、ここで強力な財政出動を訴えて、実体経済に実需に直結するマネーを注入し、消費の源泉となる所得を国民に行き亘らせるよう迅速に行動すべきなのだが、バカなマスコミや市場関係者から出てくるのは、「旧来型のバラマキに後戻りすべきではない」、「一刻も早い成長戦略の実行が待たれる」といった類の見当違いな意見ばかりで、うんざりさせられる。

破綻したコミットメントの責任すら取ろうとしない黒田総裁を批判するのはよいが、一方で、大真面目な顔をして、消えかかろうとしている焚火に冷や水を浴びせかけるような妄言を吐くから始末に負えない。

金融緩和政策一本槍のリフレ派も大概だが、金融政策はおろか、景気や経済成長の意味や意義をまるで理解できていない連中が、ペンという権力を奮っていることに改めて背筋が寒くなる思いがする。

今回の日銀の決定に対して様々な声が上がっているが、ほとんどが、2%の物価目標達成に関するテクニカルな批判や擁護ばかりで、“物価目標を設定する目的や意味”については、当の日銀首脳陣も含めて、まったく理解していないことに気付かされる。

黒田総裁の言い訳どおり、今後、原油か価格が上昇し、目論みどおり2%の物価目標が達成されても、所得が低迷し続ける中では、「悪いインフレ」の影響による経済的被災者が増えるだけで、それを歓迎できる者は誰一人いないだろう。

真の目的は、「2%の物価目標を達成すること」ではあるまい。

実体経済を活性化させて2%程度の物価上昇を十二分に許容できるよう国民や中小企業のフローとストックを改善させること」こそ、インフレ・ターゲットを掲げる真の目的であることくらい、経世済民を目指すものならば、当然理解できるはずだ。

先ず、国民や中小企業の懐を豊かにして、ディマンド・プル型のマイルドなインフレ状態に自然移行する経済環境を創り上げることこそが、金融政策を始めとする経済政策のあるべき姿である。

使われもしないマネーを銀行口座にブタ積みしたり、内需の破壊につながる成長戦略みたいないかがわしい空理空論を吐いたりするだけでは、国民や中小企業のフローとストックを改善して前向きな消費・投資マインドを引き出すことは絶対に不可能だろう。

せっかく、日銀が勇気を奮って盛大に撃ち放ったバズーカ砲を墜落させないためにも、緊縮政策を求める雑音を排して、きちんと財政政策を打ち、実体経済に資金を投じて下支えしてやらねばなるまい。

経済活動は綺麗ごとでは動かない。

モノやサービスの供給能力が高度に発達した現代では、突き詰めると、使えるお金と実体経済に流通するお金の多寡が経済活動の成否を決めると言ってよい。

その「使えるお金」を産み出す政策は何か、どの政策を採用すれば、使えるお金が実体経済にスピーディーかつ広範囲に行き渡るのか、既に20年以上にも及ぶバカバカしいほど長期化した経済停滞を経て実証済みだろう。