読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

「強い経済=非正規化、共稼ぎ、移民促進、地方イジメ」という妄言

10月16日に第16回経済財政諮問会議が開催され、提出された資料が内閣府のHPで公開されている。

この会議や産業競争力会議には、常識や良識が疑われる“有識者”から、様々な提言(というより妄言)が盛り込まれた資料が提出されているが、今回は、伊藤 元重、 榊原 定征、高橋 進、新浪 剛史からなる有識者議員から提出された「アベノミクスの第二ステージに向けて」という資料(ペーパー)を採り上げてみたい。

新自由主義の先頭をひた走る4人の民間議員からの提出資料と聞いただけで、おおよその中身が知れようというものだが、案の定、のっけから、「 「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」を新三本の矢とするアベノミクス第二ステージにおいて、経済財政諮問会議は、引き続き、経済と財政、社会保障の相互依存関係を踏まえた基本戦略の司令塔として、改革を大胆に推進すべき」と改革万能砲をぶっ放している。

さらに、
・デフレに後戻りさせないためには民需主導の好循環を確立することが重要 ・日本経済の供給サイドを強化すれば、潜在的な消費や投資が喚起され、需要面も含めた経済構造が強化される
・官民双方が資源配分や所得分配を大胆に見直し人々の活躍を妨げている障壁をなくしていく
などといった趣旨の発言が続く。

要するに、(これまで失敗ばかりを重ねてきた)“構造改革+サプライサイド強化+規制緩和”が日本経済を救う唯一の方法だと言いたいのだろう。

以下、彼らの作ったペーパーのうち、主に、『1.強い経済の実現に向けて』の部分に記された課題とその解決に向けた提言の概要の一部を示し、個別に批評を加えたい。

(課題1)
全体として賃金・所得環境が改善している中で、依然デフレマインドが払拭されておらず、消費の改善テンポが遅い。

(提言1)
・多様な働き方の実現を通じて、家計収入を押し上げるとともに、規制改革や公的サービスの産業化を通じて、健康長寿や介護・子育てに関連する財・サービス等の潜在需要を顕在化し、消費拡大につなげるべき。


まず、「多様な働き方」というのが曲者で、非正規雇用や地域限定社員、夫婦の共稼ぎなどを想定していることは疑いようがなく、家計収入を押し上げるどころか、雇用の不安定化だけでなく、過度な女性の社会進出による労働市場の供給過剰をもたらすだけだろう。

「規制改革や公的サービスの産業化」による健康長寿や介護・子育ての潜在需要掘り起しについては、介護サービス従事者の外国人受入や保育分野の規制緩和等を指しているのだろうが、そんなものは、介護従事者や保育士の待遇の大幅な改善を図り、保育所増設に公的資金を注ぎ込めばたちまち解決可能な問題で、外国移民の受け入れ促進みたいに、論点を脇道に逸らすべきではない。


(課題2)
過去最高水準の企業収益にもかかわらず、設備投資の動きが鈍い。

(提言2)
・成長志向の法人税改革を早期に完了すべき。
・中小企業の競争力強化と価格転嫁の円滑化の観点から、親企業と下請企業間で相互にWIN・WIN関係を実現していく必要がある。
・活用されていない内部留保を、従業員の賃金や人的投資、将来利益の源泉となる投資、取引先を含めた経営力強化に振り向けて好循環拡大を図るべき。

彼らが提言の中で言いたいのは、法人税改革と銘打った法人税減税のみであり、残りの2つ(下請け企業への適切な利益配分、内部留保の分配)は、わざわざ、公的色彩の強い会議に持ち出すような真似をせずとも、民間企業、それも日本を代表する大企業の経営者たる自分たちが決断し速やかに実行すれば済むだけの問題に過ぎない。

決裁権限は自分たちが握っているのだから、つべこべ言わずに、下請けいじめを止め、労働分配率を引き上げてやればよいだけだ。


(課題3)
労働市場がタイトとなる中、「働きたい」若しくは「もっと働きたい」と希望する者が1千万人近く存在している。

(提言3)
・就労の希望が実現しない背景には、特に、女性・若者・高齢者の労働参加を阻む制度・慣行が存在している。
・働き方改革(女性等の就労継続・復職支援、正社員化への支援強化、子育てや介護のための不本意な離職の解消に向けた官民による取組、長時間労働の是正、配偶者控除・手当の見直し等)が必要だ。
・外国人材の積極的活用が必要だ。

正社員化の促進や長時間労働の是正を謳うのはよいが、それこそ、先ずは隗より始めよの例えのとおり、経営者たる自らが範を垂れ実行に移せばよいだけだ。

この程度の話は、経営者が本気になって意識変革をし、長時間労働の温床になっている社内事務手続き(根回し作業)の簡素化や労働法務の厳正化に取組めば、たちまち解決できる問題だろう。

悪意の不作為を移民解禁の話に摩り替えるなどもっての外で、そもそも、働く意欲のある日本人が1千万人近くいるのなら、外国人労働者を入れる必要などないはずだ。

また、“女性・若者・高齢者の労働参加を阻む制度・慣行”があるとしたら、それは、彼らが妄想しているような規制によるものではなく、「低賃金・長時間労働・異常なノルマ」という質の悪い慣行のせいだろう。

(課題4)
意欲ある地方を支援する。

(提言4)
・消費を押し上げている訪日外客によるインバウンド需要や地方の特産品輸出をさらに拡大できるよう、関連するインフラ整備を含め意欲ある地方を支援する。
・公的サービスの産業化、民間資金の導入。交通インフラ、上下水道等の分野にコンセッション等の多様な手法を通じて民間資金を導入すべき。

インバウンドをネタにインフラ整備をチラつかせたかと思えば、すかさずPFIで果実をかっさらい、公共事業に巣食おうとする寄生虫どもに分け与えようとするから要注意だ。

意欲の有無を餌に地方を恫喝したり、政府が地方を“支援してやる”といった上から目線の発想こそ周回遅れだろう。

そもそも、鼻をほじくっていても向こうから勝手にお金が集まってくる中央と違い、意欲を持っていない地方なんて存在しない。
全国各地から納税や消費というツールを介して中央に集められた資金を地方に適切に配分するのは、政府に課せられた当然の義務であり、政府が自分のカネを貧乏人に恵み与えるかのように勘違いすべきではない。

自らの権限をひけらかすかのように、“意欲の有無”みたいな屁理屈を持ち出して差別化しようとするのは、まことに卑しい行為だ。

自分の無能さを棚に上げて、他人を批判したり見下したりするしか能がないサプライサイダーの連中は、安い労働力を利用して作ったものを海外に売ることしか考えていない。
いわば、植民地経営的感覚の抜けない時代遅れの黒船主義者だと言ってよいだろう。

偉そうに他人に文句を言う前に、先ずは、自分たちの『意欲』を見せてみろと言っておきたい。