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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

TPP幇間芸者の得意技は「追従・楽観・妄想」の三点セット

ここのところ、鉱工業生産指数や企業物価指数、街角景気調査などの経済指標が悪化し、政府による10月の月例経済報告でも景気の基調判断を下げざるを得なくなった。

この段になってようやく、政府内で年内の補正予算編成の方針がまとまったようだが、そのお題目は“TPP対策、それも農業対策が中心”だというから、呆れるよりほかない。

今回の補正予算がTPP対策になるのなら、それは、大筋合意内容を基にした国家における議論の前に、国内でのコンセンサスを取っておくためのアリバイ作りにするつもりだろう。

それを以って安倍首相は、国会で、「TPPが国内の農業に過度な影響を与えぬよう今年度の補正予算で万全の対策を取っております。さらに、成長するアジアの需要を取り込めるよう我が国の農業の競争力を高め、“内向きの農業から稼ぐ農業”へと変貌させるために今後も万全の対策を図っていく所存であります」とでも演説するつもりではないか。

こうした政府与党の動きを後押しするように、国内でもTPPを擁護する幇間芸者が跋扈している。

今回は、そんな幇間芸者の駄文を紹介し、批判を加えておきたい。

件の芸者さん(リフレ派特攻隊長&コミンテルン万能論者)の論説は次のとおり。

『TPP芸人の予言は全部外れた! 「支那包囲網」に揺らぐ習近平http://ironna.jp/article/2168)』

彼の主張の要旨をまとめると次の3点になる。

①ISD条項を恐れるな

・日本が1989年に中国と締結した投資協定にもISD条項が含まれているが、大した影響はなかった。

②ラチェット条項にビビるな

・TPP大筋合意前なら、いくらでも交渉内容をひっくり返せる。乳製品の輸入枠を巡ってニュージーランドちゃぶ台返しをしたのを見習え。

③「TPPで○○がなくなる」というのはウソ

・TPPをやっても国民皆保険はなくならないし、工業製品に掛けられる関税は即座に2割削減され、日本にもメリットはある。

・取引や貿易のルールが変わっても、事業モデルを変えて対処すればよい。

①のISD条項に関しては、米国との間で自由貿易協定を締結した国において、下記のような事例が既に生じている。

<メキシコの事例>

・甘味料を使った炭酸飲料への課税に対する米国企業の訴訟→メキシコ政府が敗訴(1.9億ドルの賠償)

・ゴミ埋め立て地設立の不許可処分に対する米国企業の訴訟→メキシコ政府が敗訴(1600万ドルの賠償)

<カナダの事例>

・タバコの箱への表示規制に対する米国企業の抗議→カナダ政府は規制を取り下げ

<アルゼンチンの事例>

・いい加減な運営をしていた水道会社への契約打ち切り措置に対して事業を受託している米国企業が訴訟→アルゼンチン政府が敗訴(1.6億ドルの賠償)

ボリビアの事例>

・法外な水道料金の値上げに困惑した市民が水道の使用を止めたことに対して事業を受託している米国企業が抗議&訴訟→米国企業に有利な評決→後日、猛烈なデモに遭い止む無く訴訟取り下げ

のんきな幇間芸者は、日本国民や日本政府が、こうした身勝手な訴訟に晒されるリスクなど殆どあり得なず、“無理筋の要求が通ってしまったら却って自由貿易に支障をきたすだろう”から、そんなものに怯える必要はないと高を括るだけで、それを担保する具体的な根拠を何一つ述べていない。

強欲な米国企業にとって優先すべきは自社の権益であり、自由貿易の維持発展など二の次、三の次でしかない。

だいたい、自由貿易に支障をきたすから云々と行儀よく振る舞えるだけの常識が備わった企業なら、先に紹介したようにゴロツキ紛いの訴訟を起こすはずがなかろう。

次の②のラチェット条項のくだりについては、既にTPPの大筋合意が終了し、ちゃぶ台返しや交渉を漂流させる機会が失われていることを理解していないのではないか。

一旦決まった条項をひっくり返すことができない無謀な条項に苦しめられるのは、これから間違いなく顕在化するリスクである。

芸者さんが褒め称えたようなニュージーランドの我儘ぶりをこの先発揮できる機会はないし、そもそも、日本政府や交渉に関わった与党の連中は、屈辱的な片務条約に唯々諾々と従うばかりで、我が国の国益をゴリ押しして交渉相手国を激怒させるような気概なんてサラサラないのだから、ラチェット条項のような不可逆的な悪手を盛り込むのは、極めて危険な行為だろう。

最後に③のTPPを過度に恐れず前向きに対処しろとの論には、実業に携わったことのない素人の意見だと断じておきたい。

呆れるほど長引く不況のせいで、国内産業の99%以上を占める中小企業や需要面からそれを支える家計のフローとストックは疲弊の極致に達している。

いまだ病床から起き上がることのできない重篤患者といってもよい。

不況以前に鍛え上げた強靭な肉体の力により、辛うじて死線を越えずに済んでいると言えるだろう。

件の幇間芸者は、“ルールが変わったのなら、いち早く事業モデルをそれに適応させればよい。正解は分からないので、様々な挑戦を繰り返し、失敗しながら学べばいいだけだ”なんて安っぽいコンサルみたいなことを言っているが、ほとんどの中小企業では、ヒト・モノ・カネという経営資源に乏しく、商圏や商流を即座に変えられるわけではない。

挑戦を繰り返せるだけのヒトもカネも持っていないし、失敗しながら学べるような資金的な余裕など無いのが解らないのだろうか。

事業の失敗に高い授業料を支払えるのは、一部の大企業だけの話であり、巷の中小企業には通じない。

芸者さんの“日本の負けは決まったわけでもないし、勝ちも決まったわけではない。すべてはここからの努力次第なのだ”という勇ましいセリフに対しては、勝ち負けがフラットな状態からのスタートというのは、国レベルの経済交渉として落第だと教えておきたい。

自国の産業が普通の努力をしておれば、黙っていても勝ち抜きやすいルールをいかに相手に押しつかられるか、が経済交渉の決め手である。

スポーツで欧米諸国がよくやるルール改正を見て勉強しておくべきだ。

外交交渉や経済交渉は、きれいごとを言って自己満足する場ではない。

相手は辟易するくらい自国の国益を押し付け、いかに有利な条件を捥ぎ取れるかが勝負なのだ。

それくらい理解できないレベルの連中は、TPP交渉を賛美し、幇間芸者紛いのおべんちゃらを垂れ流している暇があるなら、もっと勉強しなおして来い、と言っておく。