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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

内需に立脚した経済基盤を!!

とあるネットサイトで、『「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由』という記事を眼にした。

記事は、『新・観光立国論』の著者であり、日本在留歴25年になるデービッド・アトキンソン氏によるもので、外国人観光客の誘致に取り組む日本の観光業や「おもてなし戦略」の問題点を浮き彫りにするという内容だった。

日本の観光業に対して、今回の記事や関連記事を含めて、アトキンソン氏が指摘した問題点は、次のようなものだ。

・世界では、文化財は自国の観光客のみならず、他国からの観光客を呼べる大切な“観光資源”という位置付けだ。一方、日本では、あくまで「保存」がメインで、観光客を呼ぶことに重きを置いていない。ガイドや通訳、イベントをどんどん活用してカネを生む仕組みを創るべき。

・レストランの食事でも、客の要望に応じてセットメニューの一部を取り換えるなど柔軟に対応すべき。

ゴールデンウィークは廃止すべき。日本にはゴールデンウィークがあるゆえに閑散期との差異が大きくなり、観光業者が大規模な設備投資に二の足を踏まざるを得ない。

ゴールデンウィークほど「ユーザー目線」が欠如した制度はない。観光客は大渋滞を強いられるし、飛行機やホテルは「特別料金」をとられるなどデメリットは山ほどあるが、供給者側からすると良いことづくしだ。

・日本の祝日は世界で4番目に多いので、有休を取得する必要がない。逆に、欧州の人たちは日本に比べて祝日が少ないので有休の取得率が高い。

・先進国では観光業はGDPの9%を占めているのが普通だが、日本は2%程度。つまり日本にはGDP7%分の“伸びしろ”がある。

確かに、文化財の観光資源としての活用やガイドの育成などは、観光先進国に後れを取っているかもしれない。

特に、国内の観光地にいるガイドの多くは、リタイアした高齢者やボランティア頼みで、まともな所得を得ている方はほとんどいないだろうから、観光業界の付加価値向上を図るとともに、まともな雇用の場を創出するという面からも、プロの観光ガイドを育成する(きちんとした収入を得られる職業にするという前提で)ことはとても重要な課題だろう。

だが、アトキンソン氏の十八番でもある『ゴールデンウィーク廃止論』には、首を傾げざるを得ない。

彼は、観光業界における閑散期と繁忙期の大きな落差を全てGWのせいにしているが、毎年GW期間の国内旅行者数は2,300万程度に過ぎず、一方で、年間の国内旅行者数はおよそ63,000万人にもなるので、GW中の旅行者数なんて、年間に均すと僅か3.6%程度に過ぎない。

日本の観光業界には、GWの他にも、春休み、夏休み、お盆、シルバーウィーク、年末年始等々、たくさんの繁忙期があり、その都度各地で渋滞や混雑が発生しているので、なにもGWだけを特別視する必然性は乏しいだろう。

また、閑散期と繁忙期の落差ゆえに観光業者が大規模な設備投資に二の足を踏んでいるという決めつけにも異論がある。

だいたい、ちょっと想像するだけでも、国内の有名な温泉地(伊豆や箱根、熱海、鬼怒川、伊香保ほか)やテーマパーク(ディズニーランド、ハウステンボスほか)には、300~400室はありそうな大規模ホテルが林立しているだろう。

アトキンソン氏の言うことが真実なら、こうした大規模ホテル等存在していなかったはずだが…

それに、世界の大規模ホテル(客室2,000室以上)ランキングの上位50棟のうち、実に37棟がアメリカのホテルで、世界に冠たる観光大国のフランスやスペイン、中国、イタリアなどのホテルは1棟もランクインしていない。(因みに、日本の品川プリンスホテルが16位にランクインしている)

つまり、設備の大規模化と観光客数はイコールの関係ではないということだ。

むしろ、アトキンソン氏の主張通り、日本の観光業界が、閑散期を恐れて身の丈に合った規模に設備投資を抑えていれば、地方の温泉街がこれほど苦境に陥ることはなかっただろう。

国内の旅館やホテルは、設備にしろ、人員配置にしろ、閑散期に合わせるどころか、繁忙期を基準に目いっぱいの大型化や過剰投資にひた走ったため、バブル崩壊以降のデフレ不況の煽りをまともに受け、稼働率を維持できずに廃業を重ね、ここ数年は外国人観光客の流入という思わぬボーナスのおかげで何とか一息ついているのが実状だ。

また、日本は祝日が多いせいで有休の取得が少ないというのも、単なる妄言だろう。

祝日数は、日本の15日に対して、フランスやドイツは10日間と確かに日本の方が多くなっている。

だが、有給休暇はというと、実際の取得率を加味すると、日本が7日(取得率38%)しかないのに対して、ほぼ100%近く取得しているドイツやフランスは25~30日にもなり、両者を合わせると、ドイツやフランスの方が2~3週間分も多く休みを取得していることになる。

そもそも、日本人の有休取得率が低いのは、祝日が多いせいだというのは、祝日と有休とをトレード・オフの関係に置く「休暇取得日数キャップ論」に囚われた稚拙な議論だと思う。

日本の有休の取得率が低いのは、東芝の“チャレンジ強要事件”に見受けられるとおり、単に、ワーカホリックな日本人の行き過ぎた勤労意識が、有休の取得を抑えているだけだろう。

むしろ、『祝日』という公的な強制性を持たせることで、ようやく大手を振って休みを取れているというのが実状ではないでだろうか。(それでも休めない人がたくさんいる)

いまの日本で、祝日を減らせば有休の取得意識が向上するなんで、とんでもない妄言で、祝日という公的なセーフティーネットを外してしまえば、日本人の休暇日数は、いま以上に減るだけで、観光業界にも大きなマイナスのショックを与えるだろう。

経営者と労働者双方の意識を変えるだけで、有給取得率なんて直ぐにでも上げることはできる。

自身や部下の取得率の高さを人事評価に加味するように義務付ければよいだけだ。

最後に、アトキンソン氏の“先進国では観光業はGDPの9%を占めているが、日本は2%程度。つまり日本にはGDP7%分の“伸びしろ”がある“という意見については、ぜひとも、その伸びしろ分は、日本人の国内旅行者による内需で埋めるべきだと付け加えておきたい。

日本政府観光局が7月22日に発表した2015年1~6月の訪日外国人数(推計値)は、前年同期比46.0%増の913万人にも上り、年間で1,800万人に達する見込みだ。

しかし、この結果は、円安、訪日ビザ(査証)の緩和、消費税の免税対象拡大というドーピングによるところが大きく、今後も漸増を維持できるか否かは極めて不透明だ。

また、訪日外国人の増加に油断して、日本人による国内旅行者の落ち込みを放置し、無視しようとする機運があることにも強い懸念を抱いている。

“気前のよい中国人さえ来てくれれば、ケチな日本人客なんてどうでもいい”という風潮が一般化してしまえば、“なぜ、日本人は旅行をしなくなったのか(=できなくなったのか=所得が増えていない)”という点を掘り下げようとすることもなくなるだろう。

日本は膨大な内需が経済や所得を支える国であり、訪日外国人旅行者のもたらす果実は、あくまでプラスαのおまけだと認識すべきだ。

この基本を忘れてしまうと、いつの間にか、日本経済は、外需の変動に振り回される脆弱な体質に変貌し、ひいては国体を危うくする事態をも招きかねない。