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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

逆貨幣錯覚

地方創生の目玉政策であるはずのプレミアム商品券が、各地で売れ残っているらしい。

筆者の暮らす街でも、先月に販売され売り場はかなり混雑していたため、きれいに売り切れたのかと思いきや、今朝の新聞で、大量の売れ残りが生じたため、今月中に再度販売されると報じられた。

筆者の街の商品券は、プレミアムが25%も付き、市内の主だった大型店や小売店で利用できるため、よもや売切れなどあるまいと踏んでいたが、先月の販売時には45%ほどしか売れなかったそうだ。

一部では、アベノミクス効果で景気回復が叫ばれているにもかかわらず、25%ものプレミアムが付くお買い得感の強い商品券が、なぜこれほど売れ残ってしまったのだろうか。

他所の様子をいろいろと調べてみると、結構売れ残っている地域が多いようで、千葉県鎌ケ谷市(プレミアム率30%)、兵庫県豊岡市(同20%)、香川県坂出市(同20%)、千葉県八千代市(同20%)、大阪市(同15%)、山口県山口市(同10%)、千葉市(同10%)等々、あちこちで売れ残りが生じているらしい。

消費者は、玉子やサラダ油の安売りにはロシア人みたいに長い行列を作るくせに、場合によっては数千円ものプレミアムが付くお得な商品券をなぜ買おうとしないのだろうか。

しかも、財布が膨らむボーナス時期だというのに...

使える店が少ないとか、使用できる期限があるとかいった理由はあるだろうが、大概、どこの地域でも主だった商業施設では使用できるようで、プレミアム率も高いことから、通常なら、売れ残りが生じるなど想定しづらい。

発売後に、即、完売御礼の立札を用意していたはずの商工会議所や商工会も、さぞや慌てていることだろう。

一般的に消費者の購買行動は、極めて単純明快なものだ。

これだけお得感の高い商品券が各地で売れ残るのは、消費者の懐具合に余裕がないためである。

ネオファースト保険の調べ(調査対象:全国の 20 ~50 代のサラリーマン世帯の主婦500名)によると、

・夏のボーナス「増えた」は33.4%、「減った」は14.4%。平均手取額は66.5万円

•今回のボーナスに6割が「満足している」(59.6%)。”理想のボーナス額”の平均は「117.3万円」

•ボーナスの今後の見通しは「増えていくと思う」(31.6%)が「減っていく+なくなると思う」(19.2%)を上回る。

•ボーナスの使い道は「預貯金」が69.4%と群を抜いている(「生活費の補填」28.2%、「ローン支払い」20.4%という回答割合も多い)

という結果が出ており、ボーナス支給額が増え、今後の見通しも楽観的なようだ。

なのに、ボーナスの使い道として預貯金という回答が7割近くに及んでいる。

プレミアム商品券など目もくれず手に入れたボーナスを必死に貯め込もうとする主婦の姿から、消費税増税や日用品・食料品の価格が次々に値上げされる中で、給与収入が思ったほど増えていない現状に対する強い苛立ちが伝わってくるようだ。

売れ付きが芳しくないのは、安倍政権一押しのプレミアム商品券だけではない。

牛丼チェーン大手の吉野家は、今年3~5月期の連結決算を発表したが、営業利益が3億円と前年同期比58.9%減少、最終利益は2億円と同54.2%の大幅な減益となった。

昨年12月に牛丼を値上げ(300円→380円)したため、客数が大幅に減少したことが響いたそうだ。

アベノミクスの恩恵とやらで国民の所得がきちんと増えているなら、僅か80円ばかりの値上げで客足が大きく落ち込むはずがない。

また、異物混入問題や中国の期限切れ加工肉の使用問題で大きく業績を落としていたマクドナルドは、6月の月次レポートを発表したが、それによると、既存店売上は前年同月比23.4%減少、全店売上高は同23.5%減少と17カ月連続の減少となり、一向に回復の兆しがない。

マクドナルド側も、サラダなど新メニューを投下して業績改善を図っているが、客離れは深刻で、客単価も前年同月比14.5%減少と5月実績(▲9.3%)よりダウン幅が拡大し、12カ月連続のマイナスとなった。

こちらも、肝心の客単価の減少に歯止めが掛からず苦戦しており、消費者が財布の紐を緩めるどころか、一層きつく締め上げている様子が窺える。

名目賃金こそわずかに上昇しているものの、物価上昇のペースには到底追いつかず、5月の実質賃金の速報値は前年比0.1%減少となり、25カ月連続でマイナスとなっている。

恐らく、これまでと同様に、確報値段階ではさらにマイナス幅が拡がるだろう。

日本経済の病状を悪化させている原発巣に手を付けず、傷口に膏薬を塗り続けたところで何の効果も期待できない。

プレミアム商品券自体は悪い手ではないが、民需の自発的な盛り上がりを前提とする発想の政策であり、国民所得が十分に増え切っていない現段階では、経済の起爆剤としての効果を発揮しづらいだろう。

しかも、国民の間には、物価高に対する警戒感が名目賃金の増加効果を打ち消す「逆貨幣錯覚」が蔓延しており、せっかく発行された商品券の経済効果も、一回転して終わり(=乗数効果なし)という惨めな結果になりかねない。

20年近くに及んだデフレ不況が日本経済に残した傷跡は想像以上に深刻であり、国民所得を蝕み、その消費行動に今も大きなブレーキを掛け続けている。

政府や与党は、こうした経済認識を十分に理解し、いい加減に、国民や企業の自発的経済活動を前提とする経済政策から発想を転換すべきだ。

経済成長するためには、消費と投資が欠かせないのは誰にでも理解できるだろう。

問題なのは、消費と投資の主役となるべき「資金」が足りないことだ。

適切な経済政策を打とうとするならば、その「資金」をいかにして実体経済に供給するかを考えるだけでよい。

答えは、極めてシンプルだ。