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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

日本経済の病巣は需要不足にあり

6月29日に、中小企業庁から「第140回中小企業景況調査(2015年4-6月期)」が公表された。

調査概況では、「中小企業の業況は、持ち直しの動きを示しているものの、一部業種に足踏みが見られる。“ 全産業の業況判断DIは2期ぶりにマイナス幅がやや拡大した”、“ 産業別に見ると製造業はマイナス幅が拡大し、非製造業もややマイナス幅が拡大した”」とコメントされ、昨年の消費税増税以降に大きく落ち込んだ中小企業の業績が、いまだに回復していないことが窺える。

業況判断DIについて、2015年4-6月期(以下、「当期」)は全産業ベースで▲18.7(前期比▲0.9ポイント)とマイナス幅が拡大している。

製造業全体で▲15.6(同▲1.5ポイント)とマイナス幅が拡大している。

業種別では、パルプ・紙加工品(▲1.1/同+10.2ポイント)や家具・装備品(▲12.3/+5.8ポイント)、繊維工業(▲14.3/同+5.7ポイント)など7業種で改善の動きが確認できるが、機械器具(▲5.5/同▲5.7ポイント)や窯業・土石製品(▲25.4/同▲8.7ポイント)、鉄鋼・非鉄金属(▲14.4/同▲8.3ポイント)、木材・木製品(▲30.3/同▲6.3ポイント)など6業種で悪化している。

これらを見ると、自動車や電機、産業機械など大手輸出型企業の売上UPの恩恵が下請レベルにまでは波及していないこと、公共工事縮減の影響が表れていること、住宅・不動産業界の不振の影響をもろに被っていることが窺える。

一方、非製造業では、全体の業績判断DIが▲19.6(同▲0.3ポイント)と、こちらもマイナス幅がやや拡大している。

業種別では、情報通信・広告業(▲1.5/同+7.2ポイント)、対事業所サービス業(専門技術)(▲6.6/同+1.3ポイント)、対個人サービス業(▲19.3/同+0.6ポイント)などでマイナス幅が縮小したが、対事業所サービス業(運送・倉庫)(▲20.0/同▲6.3ポイント)、宿泊業(▲14.0/同▲5.6ポイント)などでマイナス幅が拡大している。

海外からの観光客の大幅な増加やネット販売の普及による通販事業の拡大が喧伝される割に、関連業種の業況判断が後退しているのが大きな特徴と言える。

このほか、売上額DIは、全産業ベースで▲17.3(同▲2.6ポイント)、うち製造業▲14.0(同▲3.6ポイント)、非製造業▲18.3(同▲1.6ポイント)といずれも悪化し、一方、採算(経常利益)DIは、全産業ベースで▲23.3(同+5.7ポイント)、うち製造業▲21.3(同+3.3ポイント)、非製造業▲23.9(同+6.5ポイント)と改善傾向にあるものの、いずれも▲20を下回る極めて低い水準に止まっている。

また、生産設備過不足DIについては、当期の値が▲2.8(過剰-不足)となり、7期連続で不足気味の傾向を示している。

確かに、設備投資実施企業の割合は、生産設備過不足DIが大きく落ち込んだ2009年頃に11%程度であったのが、当期は16%を超えているものの、依然として、全体の2割にも満たない低水準に止まっている。

しかも、業況DIや売上額DIの冴えない動きを見れば、成長や受注増加を見込んだ前向きの投資というよりも、我慢に我慢を重ねて使い込んできた設備が耐用年数を遥かに過ぎ、止むを得ず更新せざるを得なかったという色彩が強いのではないか。

事実、今回の調査の個別意見にも、「現在、調子が悪い設備があるため購入を検討しているが、今後の業況は不明であることから購入に対して慎重になっている」、「製品の動きが悪化、需要が見えない。設備の老朽化もあるが、投資は不安もあり、現行機械を何とか使っている。生産効率の低下や加工精度等、どうしてカバーしていくか、苦慮している」といった切実な声もあったが、中小企業の実態はこんなものだろう。

世間には“アベノミクスで日本経済は危機を脱した”、“成長に向けて力強く歩みを進めている”などと勘違いしている者が多くいるが、日本の産業の根幹たる中小企業の業況は依然として厳しいままで、延々と続く不調のトンネルから抜け出せないでいる。

今回の調査では、一部に回復している業種があるものの、全業種で業況判断DIがマイナス値を突破できておらず、アベノミクスの信奉者が唱える「景気回復の兆し」とやらが都合のよい作り話であることが判る。

また、彼らは、盛んに人手不足による供給制約を殊更問題視し、政府による景気刺激策(財政政策)を牽制する。

ところが、実際の現場では人手不足なんて大した問題にはなっていないようだ。

それは、今回の調査結果の中にある経営上の問題点を業種別に集計したデータを見れば解かる。

当該データは、製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業の5つの業種ごとに、直面している経営上の問題点を問うたものだが、人手不足という回答割合が上位5つに入ったのは、建設業9.6%(全体の4位)とサービス業9.2%(同4位)のみで、他の業種ではランク外だった。

しかも、今回ランクインした2業種いずれも、人手不足という回答は、前期・前々期ともにせいぜい7~10%くらいの回答割合に過ぎず、順位も不動の4位に停まっている。

一方、「需要不足」が問題だとする回答割合は、製造業24.1%(全体の1位)、建設業29.8%(同1位 ※官需民需不足の合計値)、卸売業32.7%(同1位)、小売業17.7%(同2位)、サービス業18.2%(同2位)という結果で、「人手不足」なんかよりはるかに高い割合になっている。

これに「他社との競争激化」や「購買力の流出」といった類似の回答を付加すれば、需要不足の問題こそが、経営上の重大なボトルネックとなっている事実を嫌でも認識せざるを得なくなる。

筆者も、取引先の中小企業の経営者から、“募集を掛けてもパートさんが集まらない”、“時給が上がり気味で困っている”といった声をよく聞いている。

だが、どのくらいの時給を呈示しているのかと聞くと、ほぼ最低賃金に近い金額でしかなく、交通費も出ず勤務時間も融通の利かないケースが多く、それじゃ、人なんて集まりませんよ、と言いたくなることが多々あるが、当の経営者たちは、今の人たちは我慢が足りない、若い人たちはわがままだ、中国人を雇いたいだのと愚痴ばかりこぼしている。

こうした経営者と地域の人材とのミスマッチが生じるのも、雇用条件が悪すぎる、要するに給料が安すぎるという問題に尽きる。

端的に言えば、マクロ経済全体の需要不足により、雇用主たる企業の売上や収益環境が全く改善されず、中小企業の多くは従業員にまともな給料すら払える状態にない、ということだろう。

中小企業は全企業の99%以上を占める一方、大企業の割合は0.3%ほどに過ぎず、人体でいえば重量ベースで心臓くらいの重さに相当する。

長引くデフレ不況に起因する需要不足により筋肉や臓器(中小企業)が軒並み不調を来している状況下で、一時の円安・株高・外需増により大企業(心臓)だけが強くなったとして、果たして、マクロ経済全体(人体そのもの)が活き活きと生活して行けるものだろうか。

病床に伏した患者の心臓だけが元気になったところで、ベッドから起き上がることも、まともな食事を摂ることもできはしない。

病を引き起こす病巣の診断を誤ると、後の治療や処置が上手く行かないことくらい誰でも理解できることだろう。

それは、マクロ経済の分析や対策においても同じことだ。

需要不足(所得不足)という病巣から目を逸らし続けて、改革ごっこや緩和ごっこに興じる限り、日本経済が真の成長軌道に乗ることはない。

(※)私も隔週でコラムを投稿している「進撃の庶民」のサイトで、明日7月3日金曜日午後10時より、フリー参加型の討論会を開催します。

詳しくはこちらをご覧ください。

http://s.ameblo.jp/shingekinosyomin/entry-12045562795.html