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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

卑しい思考から生まれる言説は、整合性の取れないものばかり

2015年1~3月期の実質GDP(2次速報)が前期比+1.0%(年換算+3.9%)と1次速報時より上方修正(設備投資の異様な修正値のおかげ)されたこと、4月の機械受注統計が前月比+3.8%と2ヵ月連続で増加したこと、さらに、昨今の株高と原油安傾向を受けて、“アベノミクスの成果が顕在化した”とか“デフレ脱却への道筋が見えた”と大騒ぎする連中が増えている。

だが、実態なきにわか景気に浮かれているのは、金融緩和さえ唱えておれば万事解決できると信じ込んでいる変わり者(リフレ派)だけではない。
6月10日に行われた第9回経済財政諮問会議の資料にも、誤った現状認識や経済認識の下に、更なる支出削減や改革を断行しようとする戯言が溢れ返っている。

会議に提出された「経済財政運営と改革の基本方針2015(仮称)」骨子案(未定稿)には、第1章の冒頭で、日本の経済財政の現状を鑑みて、「「三本の矢」の一体的な推進等により、我が国経済はマクロ、ミクロ両面でおよそ四半世紀ぶりの良好な状況を達成しつつあり、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」は双方ともに大きく前進」したと堂々と謳われている。

“四半世紀ぶり”とか“大きく前進”という大げさな表現を使うくらいだから、アベノミクスは、さぞや周囲の期待以上の大成功を収めたのだろう。
であれば、デフレ脱却に向けて見事緒戦に勝利を収めたのだから、その勢いを無駄にしないためにも、中長期的な成長の持続に向けて間断なき経済対策を打ち続け、20年近くにも及ぶ長期デフレにより喪失した莫大な国富を取り戻すことに全力を注ぐべき、というのが、どう見ても常識的な見解だと思う。

だが、三度の飯より財政再建や改革ごっこが好きな連中には、こうした常識は通じない。
先の骨子案には、“稼ぐ力”の強化やグローバル市場開拓の促進が謳われ、そのための手段としてTPPの早期妥結や女性や高齢者、外国人の活用という人件費切り下げ策が奨励されている。

また、骨子案の中で政府は、「財政と社会保障制度は現状のままでは立ち行かない。こうした状況の脱却のために、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱として推進し、安倍内閣のこれまでの取組を強化」すると宣言している。

骨子案の「デフレ脱却・経済再生」や「経済再生なくして財政健全化なし」という言葉を捉えて、リフレ派の連中みたいに、安倍政権はデフレ退治に本気になっていると勘違いすると痛い目を見ることになる。

政府の意志が経済成長ではなく、間断なき歳出削減と改革ごっこの強行にあることくらい、骨子案から拾い集めた次のような文言を見れば一目で理解できる。

・政府はもとより広く国民全体が参画する社会改革として、「経済・財政一体改革」を断行
・今後5年間(2016~2020年度)を対象期間とする「経済・財政再生計画(仮称)」を策定
・歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの取組を強化し、聖域なく徹底した見直しを進める
・歳入面では、経済環境を整える中で、消費税率の10%への引上げを平成29 年4月に実

・当初3年間(2016~18 年度)を「集中改革期間」と位置づけ、集中的に取り組む
・改革努力のメルクマールとして、2018 年度のPB赤字の対GDP比▲1%程度などを目安とし、歳出改革、歳入改革等の進捗状況を評価

「経済再生なくして財政健全化なし」なんていう台詞は、リフレ派みたいな“にわか安倍ファン”を安心させ離散させないための「まえがき」に過ぎない。
その台詞の次行以降は、ひたすら支出削減と改革のオンパレードだ。

この骨子案を読めば、安倍政権が「財政再建」を最重要課題とし、中長期的視野に立って支出削減と増税強化、改革断行をゴリ押ししようとしていること、今年度が財政再建と改革断行元年に位置付けられていることくらい、誰の目にも明らかだろう。
多くの国民が経済成長の入り口にも立てていないのに、早くも政府は出口戦略を探り始めている。

特に「歳出改革」の項目には、今後の経済成長の可能性に思いっきり冷や水を浴びせるような言葉が並んでいる。

聖域なき歳出見直しの美名(悪名)の下で、社会保障・社会資本整備・地方行財政改革・文教科学技術・外交・安保防衛などあらゆる支出項目を槍玉に挙げ、中でも、社会保障地方財政は歳出削減の最重要ターゲットに指定されている。
地方創生を喧伝する同じ口で、地方への歳出を徹底的に切り詰めるというのだから、政策の整合性が全く取れていない。

社会保障は診療・介護報酬の見直し、社会資本整備は既存施設やソフト施策の最大限の活用、地方財政は地方間の予算の分捕り合戦の奨励、文教科学技術は少子化を前提とした教員数の削減などが強調され、経済成長を見据えた長期的かつ積極的な投資姿勢は微塵も見受けられない。

また、歳出カットとともに、公的サービスの産業化と銘打った幼稚な民営化促進策を盛り込み、新たな民間サービスの創出を促進するつもりのようだが、こんなものは、公的部門の民間事業者への切り売りでしかなく、政権に群がるお友達企業や子飼いの企業への単なる利益供与との批判を免れまい。(どうせ、パソナとか麻生大臣の直系企業を肥え太らすだけだろう)

総じて、今回の骨子案には、橋本政権と小泉バカ政権に民主党政権を掛け合わせ、悪い部分だけ抽出したような空理空論が並べ立てられている。
これでは、経済成長や経済再生なんて、とうてい無理だろう。
なぜなら、成長や再生の主要な栄養分となる財政支出が絞り込むことしか書かれていないからだ。
十分な食事を摂らずに、身体が元気になるわけがない。

安倍政権に始まったことではないが、政府のスローガンと個々の政策との整合性が取れないまま、基本方針や白書を堂々と世間に公表する悪例が目立つ。
こうした失態(本人たちは全く気にかけていないようだが…)が生じるのは、格好を付けて、自分たちの本音を素直に表現しようとしないからだ。

今回の骨子案も、「経済再生なくして財政健全化なし」とか「経済の好循環の拡大」といった心にも思っていないような文言を冠に掲げるから、文章の内容に矛盾が生じるのだ。
最初から素直に、「改革なくして財政健全化なし」、「財政健全化なくして経済再生なし」、「経済の好循環よりも身の丈に合った生活を」、「外需は善、内需は時代遅れ」と本音を語ればよい。

いまや、財政再建派や構造改革派は、国民の間でも圧倒的多数を占めているのだから、何も遠慮することはない。
大阪の中学生市長に無能呼ばわりされ、喜んで維新の会に投票するような規格外のバカが多数いる世の中なのだから、無理にいい子ぶることもない。

今後の政策にはアメなど一粒もなくムチばかりであること、「地方対地方・若者対外国人」という弱者同士の不毛な競争を眺めて楽しみたいこと等々、日ごろ思っている本音を国民に向かって堂々と語ればよいだろう。
ヤル気もないのに、経済再生とかデフレ脱却といった見栄えの良い言葉で、薄汚い本音を糊塗する必要はない。

最後に、この骨子案を眺めて気付いたことがある。
それは、アベノミクスの第一の矢であり、経済政策のメインストリームであるはずの「金融緩和政策」への言及がほとんど無かった点だ。

骨子案を隅から隅まで凝視して、ようやく最後の方(第4章)に「日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待」という、とってつけたような一言を発見できた。

政府の関心は、完全に、経済成長ではなく歳出削減と改革ごっこに向けられており、金融緩和政策に期待されている役割は、せいぜい、景気に対する政府の配慮を演出するための“刺身のツマ”程度でしかない。

リフレ派は、経済成長という目標を捨てて構造改革派に転向するつもりなら別だが、政府の経済運営方針を冷静に分析し、安倍政権との距離感をいい加減に見直すべきだ。
経済成長よりも財政再建構造改革を平気で優先させるような政権の飼い犬に甘んじるのなら、「リフレ派」という名称を返上すべきだろう。

(※)隔週日曜日に「進撃の庶民」というブログにコラムを掲載しています。(http://ameblo.jp/shingekinosyomin/