読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

実感なくして成長なし

読者の皆様は、『勘定合って銭足らず』という諺をご存じだろうか。

故事ことわざ辞典によれば、「帳簿上では収支の計算が合って儲かっているはずなのに、手元の現金を数えてみると足りないことから、理論と実際とはなかなか一致しないということ」を指すそうだ。

さて、5月20日に内閣府から、平成27年1~3月期のGDP速報(1次速報)が公表され、実質GDPの伸び率は0.6%(年換算+2.4%)と予想外に高い数値であったためか、株価も大きく伸長した。

筆者も数値を聞いた当初は、まさかと目を疑った。

平成27年3月時点の勤労者世帯の実収入は18カ月連続の実質減、可処分所得は20カ月連続の実質減、消費支出は12カ月連続の実質減と、いずれも惨憺たる状況であったし、個人・法人を問わず、今冬の消費支出や設備投資の状況は、どう見ても昨春の消費税増税前の異様ともいえる駆け込み需要を上回るものだったとは思えなかったからだ。

だが、よくよく記事を読むと、なんのことはない、伸び率の基点はあくまで「前期比」であって、「前年同期比」ではなかった。

日経新聞やリフレ派の連中は、今回の発表を受けて、消費が浮上し景気を押し上げたとか、アベノミクスの大成果だと大喜びしているが、平成27年1~3月期の実質GDPを前年同期比で見ると、▲1.4%と案の定減少している。

しかも、民間最終消費支出▲4.1%、民間住宅投資▲15.3%、民間企業投資▲4.8%と消費や投資に関する指標は、浮上するどころか、より深く沈降してしまった。

また、今回の前期比+0.6%の大半は、「民間在庫品増加(+0.5%)」により嵩増しされており、不良在庫化した鉄鋼やマンションを積み上げてGDP数値を誤魔化す“中国モデル”そのものではないか。

さすがの日経新聞も、“在庫という名のシークレットブーツ”を履いて誤魔化された経済指標を手放しで褒めるのは躊躇われるのか、在庫の増加は攪乱要因であり、今後の2次速報や確報で下方修正される可能性があるとコメントしている。

今後の景気動向に対しては、輸出動向に多少の不安を抱えてはいるものの、4月以降も賃金や雇用の好転、株高、外国人観光客の増加により、緩やかな回復が続くという見方が大半を占めている。

しかし、筆者は、こうした楽観論を否定する。

なぜなら、今年度の政策のメインテーマは、経済成長や地方創生、ましてや国土強靭化などではなく、明らかに「財政健全化」であるからだ。

5月に入り、与党、政府、財務省が揃って財政健全化に向けた計画や基本方針をまとめている。

自民党財政再建に関する特命委員会では、社会保障の効率化を柱とする歳出改革の中間整理が大筋で合意され、政府官邸の経済財政諮問会議では、PB赤字解消のため9.4兆円の歳出削減に取り組む基本方針が固められた。

また、財務省も、社会保障(75歳以上の窓口負担割合を2割へ引き上げなど)に始まり、教育(小中学校教員の4.2万人削減等)、地方財政(地方行政への予算特別措置廃止など)、社会資本整備(有料道路の無償化延期、民間資金導入)に至る聖域なき歳出削減案を取りまとめており、経済成長どころか、政官一体となり強力な財政健全化運動を展開している。

ネジの緩いマスコミは、こうした動きを「経済成長優先の官邸」VS「歳出削減の財務省」という図式で捉え、リフレ派は、素人報道を鵜呑みにして「安倍首相は、消費増税を企む財務省と闘っている」と勘違いしている。まことにオメデタイ連中だ。

政府官邸が経済成長優先派に分類されるのは、財政健全化をめぐる基本方針の中で、9.4兆円の歳出削減に加えて、実質2%の経済成長を前提とした7兆円の税収増加を見込んでいるから、というだけに過ぎない。

しかも、マスコミは、実質2%という控えめ過ぎる数値目標ですら、極めて高めの意欲的な目標だと評している。

「経済成長優先派」VS「歳出削減派」の争いというのはまやかしで、「歳出削減派」VS「重度の歳出削減派」の不毛な馴れ合いというのが適当だろう。

日本経済の潜在成長率は、20年近くも低成長あるいは無成長に甘んじてきたことを鑑みれば、経済縮小論者が喧伝するように0~1%に止まるはずがない。

バブル崩壊以降の不調期を基準にしてものを考えるから、根拠のない縮小均衡論や成長放棄論に陥ってしまうのだ。

日本経済のポテンシャルを考慮すると、2%成長など当然であり、継続的な需要刺激策さえ担保できればそれを見込んで旺盛な設備投資や雇用の促進が進み、消費が大いに刺激され、6~7%近い成長率を実現できるだろう。

政府官邸が示した程度の低レベルの提案が経済成長派に分類されるなら、立派な翅を持つカブトムシを鳥類に分類してもよさそうだ。

与党、政府、財務省の三バカは、それぞれの基本方針の中で、揃って、社会保障費・公共事業費・地方財政の削減に対する強い意気込みを示しており、世論に阿るよりもPB黒字化目標の達成を優先する決意を固めたようだ。

だが、歳出削減の最大のターゲットと目される社会保障費、つまり、医療や介護分野は、農業と並び政府が掲げる重要な成長分野に位置づけられていたはずだ。

にもかかわらず、医療や介護分野に対する支出を削減してしまうと、成長を期待して参入を試みる民間事業者の貴重なビジネスの芽を摘んでしまうことになる。

ことあるごとに成長分野と持て囃しておきながら、農業はTPPに狙い撃ちされ、医療や介護は社会保障費の削減で梯子を外されるようでは、政策の整合性が全く取れていない。

こんな無様な有様では、民間事業者も安心して長期的視野に立った雇用や投資に二の足を踏まざるを得ず、それがGDPに対する強烈な圧迫要因となる。

年度が改まって早々に、政官が一体となり、経済成長の足を引っ張る愚策を強行しようとしている。

幼稚なリフレ派のように、借りるための資金が増えれば投資も増えると妄信する空論派は別として、実体経済に投じられ実需を刺激するはずの資金量が絞り込まれるのが目に見えているのだから、今後の景気動向を楽観視できるはずがない。

この先、いくら実体を伴わない経済指標が公表されたところで、しばらくは、『数値在って実感足らず』の状態がダラダラ続くだろう。