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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

誤った議論は事態を1ミリたりとも前進させることはできない

今月4日で、日銀による異次元金融緩和政策の実行から丸2年が経過することを受けて、筆者が(仕方なく)購読している地元紙に、異次元緩和に対する二人の論者の意見が掲載されていた。

一人目の論者は、早大政治経済学術院教授の若田部氏で、金融緩和政策推進の立場から発言し、もう一方は、キャノングローバル戦略研究所(いかにも安っぽい名前なのだが…)特別顧問で元日銀審議委員の須田氏が、金融緩和政策に対して慎重な意見を述べている。

若田部氏はリフレ派の代表的な論者の一人として、当然、異次元緩和政策の効果を最大限に評価し、次のような意見を述べている。

・金融緩和の結果、国民生活にとって重要な就業率が上がり、失業率は下がった

・昨春の消費税増税による悪影響を考慮して、日銀は追加緩和をもっと早く実施すべきだった

・円安の影響は業種により異なるが、全体として実質GDPを押し上げている

中央銀行国債を買うことは財政ファイナンスに当たるが、禁じ手ではなく、有効な政策だと理解すべき

・財政ファイナンスの副作用としてインフレが進み過ぎるのを抑制するためには、日銀法改正により法的根拠のあるインフレ目標を設定し、それに政府と日銀がコミットすればよい

・2015年度中に物価上昇率2%を達成するのは難しいが、2016年度中ごろに2%に近づく可能性は大きい。いずれにしても、日銀はコミットメント達成が遅れることに対する説明責任を果たすべき

・今はまだデフレ脱却の入り口に入ったばかりで、且つ2017年には消費税再増税を控えており、出口戦略の議論は時期尚早だ

これに対して、須田氏は、構造改革派兼財政再建論者の立場から、次のように異次元緩和に否定的な意見を述べている。

・この2年間で円安株高が進んだのは事実だが、この流れは黒田バズーカ以前の2012年秋ごろから始まっており、日銀の異次元緩和の手柄というより、政権交代への期待感など様々な要因の結果だ

・異次元緩和政策1年目は、円安で輸入物価が上がり物価高を達成したが、2年目になっても実体経済へのプラス効果は確認できない

・消費者物価は、消費税増税の影響を除くとほぼ横ばいだ

・物価が伸びないのは、労働生産性の低下による経済成長への期待値が下がる経済環境下で、消費や企業が将来不安から守りの姿勢を強めていることにある

・消費者や企業の不安を打開するには、規制緩和構造改革財政再建計画が必要だ

・将来への不確実性が高いからこそ、金融政策は地道な漸進主義であるべき

・異次元緩和により、日銀の買入れ資産の対GDP比はアメリカの2倍以上に増え出口戦略が見通せない状況にあり、しっかりとした財政健全計画がないと、この先国債の買い手を見つけるのが難しくなる

先ず、この不毛な議論が、現在、日本の経済論壇におけるメインストリームを占めていることにがっかりさせられる。

両者の異次元緩和に対する見方は真逆で、片や、実体経済に具現化した数少ない好指標を全て金融緩和の手柄にしようとし、もう一方は、“構造改革規制緩和・財政健全化の三本柱”が重要で、金融緩和政策みたいに国民を甘やかすような経済政策は控えるべきだと主張している。(両者が同意できるのは、円安株高という事実確認の部分だけだろう)

若田部氏の意見は、伝統的なリフレ派の主張を踏襲するだけで何の新鮮味もない。

財政ファイナンスの有効性を主張する部分のみは評価できるが、それが真の効果を発揮するのに必要な財政政策に関する言及は一切ない。

本来なら、景気を加熱するための主力装置として財政政策を用い、その過程で「加熱」が「過熱」とならぬよう抑制するのが、金融政策の主たる役割であるはずだ。

だが、若田部氏は、財政政策と金融政策の役割をすり替えたまま財政ファイナンスの効果を語り、どう考えても、不十分ながらも第二の矢の影響としか思えない就業率や失業率の改善という結果も自分たちの手柄にすり替えようとしている。

また、若田部氏は、異次元緩和が演出した円安効果により実質GDPが押し上げられたと主張するが、2014年の実質GDPはマイナス成長が確実視されており、何の説得力もない。

彼らリフレ派にとって大切なのは、あくまで“日銀法の改正とインフレ目標の設定という形式”であり、実体経済を活性化させ、国内企業の業績や国民生活を向上させるという“実質”には興味を持てないようだ。

どこぞのプライベートジムと違い、異次元緩和を声高に主張するだけで、「結果にコミットしない」リフレ派の主張が、国民に受け容れられることはあるまい。

金融緩和による過度な円安や過激な投機行動による物価上昇に対する批判が高まり、遠からず出口戦略を模索せざるを得ない時期が訪れるだろう。

もう一方の須田氏の主張は論評に値しない。

典型的な構造改革かぶれの財政再建論者の意見そのもので、口を開けば構造改革規制緩和財政再建しか言えない飲み屋のオッサンレベルでしかない。

このレベルのバカは、経済成長を忘れ、全ての経済政策の目的を財政再建に収斂させようとし、改革すれば世の中が良くなると単純に信じ込みがちだ。

また、須田氏は、異次元緩和が実体経済に好影響を与えていないと述べているが、そもそも実体経済の何たるかを理解できていないのではないか。

実体経済とは、モノやサービスの供給とそれに対する需要が、貨幣という媒体を介して複雑怪奇に交差し合う世界である。

その世界で最も重要なのは、需要と供給の媒介役となる貨幣(所得となるマネー)の量とスピード、媒介という行為に関わる家計や企業の数の多さである。

これらが多ければ多いほど、マクロ経済は膨張し続けることができ、そこに暮らす国民や企業の生活や業績を安定化させることができる。

須田氏をはじめとする構造改革財政再建論者は、この貨幣の流れを鈍化させ、縮小しようというのだから正気の沙汰とは思えない。

経済成長を諦めるのに止まらず、経済そのものの破壊につながる危険な発想である。

物価が伸びないのは労働生産性の低下云々のせいではなく、単に国民や企業の所得や売り上げが伸びず、財布にお金が入っていないからに過ぎない。

自分の財布にお金が満たされ、明日もお金が入ってくると思えば、誰しも気前よくモノやサービスを買おうとするものだ。

それができない要因を、構造改革が足りないとか、規制緩和が不足のせいだ、などとトンチンカンな方向に捻じ曲げて論議するから、事態が一向に改善されないのだ。

今回の両者の議論は、その論点が国民所得の伸びではなく、「物価の動き」に重きを置いていることが、そもそも間違っている。

結果や目的ではなく、そこに至る過程や手段を巡って、どうでもよい小競り合いをしても何の生産性もない。

真に重要なのは、2%という無機質な物価水準の達成ではなく、日銀首脳陣のメンツでもないはずだ。

中味のないヒマな議論に興じるのではなく、経済成長による国民生活の向上という真の目的の達成にコミットするための議論こそすべきだろう。

*4月5日(日)に「進撃の庶民」にコラムが掲載されます。

他の執筆者の方のコラムと併せて、ぜひご覧ください。

http://ameblo.jp/shingekinosyomin/