うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

百姓にも劣る経営能力

先日、国内の大手コンビニチェーン10社で構成される「日本フランチャイズチェーン協会」から、今年1月分の統計調査月報が発表された。

それによると、

・既存店ベースの店舗売上高(税別) 712,422百万円(前年同月比▲0.7%、10ヵ月連続マイナス)

・既存店ベースの来店客数 1,160,578千人(前年同月比▲1.6%、11ヵ月連続マイナス)

と、相変わらず冴えない実績が続いている。

コンビニチェーン自体の店舗数は、51,934店と前年同月比で4.9%も増加しており、スーパーや小売店のマーケットを侵食している。

また、淹れ立てコーヒーなどのカウンター商材(レジ周りにあるホット食材や惣菜など)をヒットさせたかと思えば、一部の大手コンビニではドーナツの商品化にも注力し、缶コーヒー業界やファストフード業界との熾烈な争いを繰り広げているのは周知のとおりだ。

あたかも、国境を越えて侵略する強大なモンゴル帝国軍のごとく他業界を脅かしているコンビニ業界だが、出店ペースを落とせば、たちまち売上ダウンの波に浚われるほど内実は厳しいようだ。

特に、都心部では明らかに供給過剰になっており、道を挟んだ両サイドにセブン・イレブンが林立する光景も珍しくない。

既存店の来店人数が落ちているのも、過剰な出店によるコンビニ間での顧客の奪い合い激化と無関係ではないだろう。

さて、上記の1月の統計調査月報では、客数の動向に関して、「今月は、平均気温が高かったものの、北日本を除き降水量が多かったため、客数に影響を及ぼした」とコメントしている。

つまり、“天候のせい”で客足が伸びなかった(減った)と言いたいわけなのだろうが、天候を言い訳にしているのは、実は今月だけではない。

ここ数カ月のコメントの書き出し部分を抜き出してみると、

(26年12月)強い寒気により全国的に平均気温が低く、降水量・降雪量が多かった…

(26年11月)全国的に平均気温が高かったが、中旬は北日本で局地的な大雪となる等の天候不順…

(26年10月)北日本で平均気温が低かったことに加え、台風第18号、第19号等の影響…

(26年9月)降水量が少なく日照時間が長かったものの、寒気の影響により気温が低く…

などといった具合に、毎月のように、雨が多かっただの、気温が低かっただのとグダグダと言い訳めいたコメントが並んでいる。

まるで、日本は毎月のように天候不順に見舞われているかのように見える。

だが、農水省の統計データを見ると、穀物や豆類、野菜の作況指数は西日本の一部を除き、おおむね平年より良好だったようだ。

ひょっとして、コンビニ店舗の上空だけ異常気象だったのだろうか?

巨大な資本力を背景に、全国各地に網の目のように張り巡らされた店舗網やそれを支える効率的な物流システムを擁しながら、客数や売上の落ち込みを防ぐことができず、愚図愚図と天気を言い訳にするしか能がないとは、呆れるばかりだ。

いつも、天気、天気と、お前たちは百姓かっ!、と言いたくなる。

同じお天道様頼みの経営でも、江戸時代の農民はもっと強かであった。

隠し田を作って年貢逃れをし、それが発覚しそうになると代官に賄賂を贈って丸め込んだり、米以外の商品作物を作ってちゃっかり蓄財に努めたりしたものだ。

世情に疎い藩主から重税を押し付けられると、一揆や強訴、打ちこわしなどの実力行使に出て、幕府からの言い掛かりを恐れる藩主に税の減免要求を強引に呑ませたりもしていた。

農民が武士階級に虐げられていたというのはまったく誤った幻想で、国家の食料供給源たる自負もあったのか、独自に資力を蓄え、藩主や武士階級に様々な要求を突き付けて困らせていたようだ。

翻って、最先端の経営理論の実践者たるコンビニ業界の経営者はどうだろうか。

業界最大手のセブン&アイHDの鈴木会長は、消費税増税に関して次のようなコメントを発している。

「今回の3%の消費増税分や物価高による価格上昇に消費者の抵抗感が相当ある。そして、来年10月に控える税率の引き上げを消費者は意識している。~中略~消費増税の在り方については『上げるなら一度で』と増税前から言っていた~後略~」

消費税増税が消費者の購買意欲を減退させることに言及しながら、8%→10%ではなく1度に10%へ上げるべし、と語っているのだ。

業界トップの経営者がこの程度の認識では、コンビニ業界が苦しむのも当然だろう。

業界の既存店売上は、昨年の増税前の駆け込み需要の一時期を除き、殆どの月で対前年比マイナスを記録しており、実質賃金低下による国民の消費力減退の影響は明らかだ。

これに増税によるダメ押しが加わったのだから、客数や売上が伸びないのも当然だろう。

業界に消費減退という大厄災をもたらす増税政策を唯々諾々と受け容れ、爪に灯を点すような努力で何とか売上維持を図ろうとする愚かな奴隷根性を捨てぬ限り、客数や既存店売上の数値が回復する見込みは薄い。

このまま指を咥えてマーケットが縮小するのを見過ごせば、早晩、他業界から奪えるマーケットすら無くなっていくだろう。

経営者である以上、企業経営にプラスの結果を残さねばならない。

ならば、効果の出ない個々の企業努力のみ拘泥するだけでなく、業界全体がのびのびと活動できる経済環境創りに目を向けるべきではないか。

いくらや野球の技術レベルを上げても、それにカネを払える観客がいなければ興業は成り立たない。どれだけ立派な釣竿を買い込んでも、釣り堀に魚がいなければ何も釣れない。

業界をリードする経営者なら、局地戦で戦術的な勝利を収めるより、大局的な視点であらゆる戦略や政略を駆使し、闘わずして勝利する状況を創り出すことこそが本当の経営戦略なのではないか。

経営の不調を天気のせいにして愚痴をこぼす暇があるのなら、マーケットが活性化するよう消費者たる国民の懐を潤す政策を断行するよう政府に強く求めるべきだろう。

己が勝ちやすい環境を創り、その上で存分に戦う。これこそが勝者の戦い方だ。

その点、コンビニ業界の経営者の戦略立案能力は、江戸時代の百姓にも劣ると言えるだろう。